♯1
死の先のことを知っていたとしても、元の居場所に価値がなくなることはない。
ただ、少しばかり残念に感じるのは自分が若すぎるにもかかわらず、自分の命を犠牲にしたことだろう。
人間としては上出来な死に方かもしれないが、それもただの自己満足だ。
承認要求に翻弄された人間の結末として見れば、あまり褒められたものではない。
残された人を思うか、それとも自分の目指す高みを思うか。
そのどちらかを選ぶだけでも、僕に下される評価は違ったものになるだろう。
目を覚ますと、そこは自分の部屋ではなかった。
本来ならいつも通り学校に登校するための支度をするわけだが。
西洋の屋敷の部屋、とでも言うのだろうか。内装はあまり落ち着かないところが多い。
「お目覚めになられましたか?」
僕は今椅子に座っていて、目の前には白い服を着た少女が立っている。
「ここは一体・・・?」
「貴方は午後8時に死亡を確認され、この部屋にアストラル体を格納されました。」
「そうか」
やはり僕は死んだのだ。17歳の若さは異常だか、それも遠い昔の話のように感じる。
「この部屋は特別な力で構成された結界です。その結界の中に肉体を失った貴方をアストラル体として取り組みました。」
「君は一体何者なんだ?」
「ベリアルと申します。私はある異世界で起こるとされる戦乱を予知し、その世界を救うためにイレギュラーを送ることを考えました。イレギュラーとは、ある世界に別の世界から来た人の意味です。貴方にはそのイレギュラーになってもらい、戦乱の原因となる現象を防ぐために異世界に転移してほしいのです」
「よく話が見えないんだが」
「私は神託を受けたのです」
神託とはつまり神様から何かの予言を授かったのだろうか。
「神は神でも、邪神の方の神ですが」
何故か良からぬ事を聞いた気がする。さすがにどうする事も出来ないので僕はこのまま聞いているしかなかった。