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プロローグ
黒い影が一つ、薄暗い洞窟の中に伸びていた。
影は一人の細身のセミロングの薄茶色の髪を持つ男から伸びているようだった。
男はそこから一歩踏み出した。するとそこには男ではなく、大きな角を持った狼が地を踏みしめ、次の瞬間にはそこを飛び出していった。
同じ頃。
一人の金の髪をおさげに垂らした少女が広い部屋の中央、魔法陣の上に立っていた。
「これでよし、と…」
(準備は出来た。あとは行くだけ。)
少女は少しの間静かにその場に立っていたが、やがて両の手を握りしめ、呪文を唱えた。
「空間を越え次元を越えよ。我を彼の地へと誘え、導け!」
光が魔法陣から炸裂し、少女を飲み込んだ。光が止んだ時、彼女の姿は消えていた。