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91話 パリンガシャァン

 寝て、起きたらご飯食べて、また寝る。それで一日が終わった。

 次の日、朝の体調確認。……んー、良くはなってるけど、まだ完治とはいかないなぁ。朝ご飯食べに行こ。


「おお旦那、体調はどうだ?」

「おはよ。いくらか良くなったよ」

「まあゆっくり休め。どの道あと数日は動けなさそうだからな」

「ん?」

「外見てみろよ」


 言われた通り窓を覗いてみる。

 うわ、結構雨降ってる。窓側に寄るとざあざあと雨音が聞こえてきた。


「こんな日には宿でダラダラするに限る」

「あの神官はどうしてるんだろうね。流石にこんな雨の中ストーキングはしていないといいんだけど」

「てか、なんで神官様が義賊を追ってるんだかねえ」

「さあー?」


 言われてみればそうだよね。日本人みたいだしトリプルホルダーだったからそこまで意識がいってなかった。

 なんとなく、厄介ごとに突っ込んできそうなタイプっていうか、畑違いでもあの力なら駆り出されてそう。

 今度会ったらそれとなく訊いておこう。いや、会わないのが一番なんだけどね?


「それはそうと、僕ってさ、昨日一日中寝て過ごしたじゃん? 今日もこれから部屋で休むんだけど、そう毎日寝続けられないわけでね?」

「あー、暇なのは分かるが俺にどうしろと?」

「ベッドの上での暇潰しを所望する。本とか無いの?」

「本って嗜好品の中じゃ高価な部類だからな」

「えー」

「俺だって昨日から暇だったんだから我慢してくれ」

「あーあ、アジトなら団長といちゃいちゃできるんだけどなぁ」

「悪いな、ここにはむさいおっさんしか居ねえや。見た目は可愛いからそれで我慢してくれ」

「どう足掻いてもおっさんはおっさんでしかないよ」


 最近おっさんとばっかり話している気がする。団長成分が足りてないよぅ。

 部屋に戻ったあとは素直にベッドに潜る。

 案外、眠っていられた。



=====



「だいぶ体調良くなったよね。病み上がりだから気を付けないとだけど、何はともあれ清々しい朝だよ」

「それは良かったんだが、天気はちっとも清々しくねえ」


 次の日、体調はだいたい良くなっていた。

 代わりに、天気が悪化していた。ザーザー降りだ。


「この降り方じゃ暫く町を出ない方がいいな」

「そうだね。雨の中歩くのは大変だもん」

「いや、それはどうとでもなるんだが、どうにも竜災っぽいからなぁ」

「竜災?」

「……ほんと旦那って知識が偏ってるよな。竜は周囲の環境を自分色に変えるんだよ」

「へえー、そうなんだ」


 そんなところにファンタジー成分が眠っていたとは。

 それじゃあ近くにドラゴンが居るってこと? やだ怖い。やだやだ、宿に引きこもろ。


 部屋に戻ると昨日以上に風が強いらしく、窓がガッタンガッタンうるさかった。

 この宿大丈夫かな。いきなり窓枠外れたりしないよね……?

 不安になって窓に近付くと、カーテンを開ける前に目の前が光った。


 嫌な予感。一瞬身構えた後に雷が落ちる音が響いた。


「~~~~っ……!?」


 ビビって咄嗟に顔を庇ってしまう。いや、ビビると反射で顔を庇っちゃうんだよね。雷相手に意味無いのに。ビビって無いけど。

 あー、もうっ、来るの分かってたし。思ったよりも音が大きかったけどっ。


 気恥ずかしさとか何やらでむしゃくしゃして、勢いよくカーテンを開ける。


「ぅひっ!?」

「うおっ!?」


 目の前に、ドアップで男の顔が。窓に張り付くように!


 驚いたときに、反射で前に出るか後ろに出るか。僕はだいたい後ろに逃げるんだけど、このときの僕はむしゃくしゃしてたときの気概で攻撃的に前へ出た。

 あと、手も出た。


 ――バッガシャアアァァン。


「うおおおおお!?」

「うわっ!」


 反射的に窓を叩いたら、当たりどころが悪かったのかガラスが薄かったのか割れてしまった。

 僕の攻撃力に耐えられなかったんだからどちらにしろ脆かったのだろう。


「おおおおお、ガラスがぁ……!」

「この変態! 性懲りもなく!」

「ちょったんまたんま! ガラスが服に入ったから!」

「天罰だよ! って、うわ、手ぇ切れてる……」


 窓を叩いた右手からどろどろ血が出てきた。

 ああああ、結構出てきた。ねえこれ大丈夫なの?


「ああ、僕はもう駄目だ……死んだ」

「それくらい大丈夫だろ……ああ分かった。休戦休戦、手当てするから中に入れてくれ」


 そう言うと神官は、僕の返事を聞かずに割れた窓に手を入れて内側から開け始めた。……窓にはワイヤーをぐるぐる巻きにしてあるから手こずってるけど。

 ようやく開けると、窓枠を踏み越えて変態侵入。そしてすぐにがばっと暑苦しい神官服を脱ぎ捨てた。


「へ、変態……。本性現したね……」

「違う! ガラスが濡れて張り付いてたから仕方なくだ!」


 言い訳をしたあと、神官は室内を見回した後、壁際によって備え付けの棚を漁りだした。

 今度は堂々と強盗?


「何、してるの?」

「手当てできるもの探してる。宿の部屋でも救急セットくらいあるだろ……お、これっぽいな」


 神官が棚から取り出したのは小さめの木箱だった。

 中を開けてみると、包帯やガーゼ、傷薬っぽい塗り薬などが入っていた。


「取り敢えずこのガーゼを当てておけ」

「え、でも血が凄い出てきてるんだけど」

「そんなの最初だけだ。すぐに収まるから、そしたら包帯な。……この塗り薬大丈夫か? いや、使わないでおくか。だとすると一回濯いだ方がいいかも」

「そこの瓶に、飲み水入ってる」

「飲み水なら問題無いな」


 寝込んでいるときは手近なところに水分を用意しておく。これ大事。

 出血が落ち着いてきたら傷口を軽く濯いで、絆創膏? を貼って包帯を巻いた。


「うぅ……最近生傷が絶えない……」

「それは災難だったな。ほら、そっちの手当ては終わったんだから俺の方も頼むよ。ガラス片が背中に付いたりしてないか?」

「大丈夫だよ」

「こっち見てから言えよ……」

「しょうがないな。後ろ向いて」


 この神官の肌を凝視するのも嫌だし、【解析】でささっと済まそう。まあ、目視よりも確実だからいいよね。

 流石に背中まで入り込んではいなかったようで、ちゃんと大丈夫だった。


「大丈夫だったよ」

「信じるからな?」

「じゃ、服着て出てって」

「これから服裏返して見るから待っててくれ」

「えー」


 それが終わるまでは服を着れないみたいだから渋々待つ。

 なんか凄い疲れた。ベッドに座って身体を休める。

 はぁ……窓のこと、宿屋になんて言おう。内側から割ったのは割れ方から分かるしなぁ。


「そうだ、窓代。君が払ってよ」

「えぇ……お前が叩いて割ったんじゃん」

「君が脅かすからでしょ。責任取って」

「いやー、だって、義賊ってお前のことだろ? 俺、義賊退治引き受けちゃってさあ……捕まってくれない?」

「ぼ、わたしである証拠ないし。むしろ君がストーカーで捕まりなよ」

「ああ、それ。言質取った」

「は? どこが?」


 義賊である証拠なんて、ボロなんて出してないはず。


「ここはそこまで法整備が進んでないからなぁ。ストーカーってのはあるんだよ。でも犯罪じゃないんだなこれが」

「えっ」

「お前、名前は?」

「アウリー」

「偽名じゃなく、両親から名付けられた名前だ」


 彼は、そう問い詰めながら紐に吊るされた鈴を取り出して垂らした。

 リィーン、と鈴の音が鳴る。

 即座に【解析】を行った。


 創製物『不審を悟る鈴』リアライズベル

 鈴を向けた相手の心拍数の変化に反応する鈴。

 変化が大きいほど鈴の音も大きくなる。

 作成者:アラタ・クツヌギ


 大丈夫、まだバレてない。少なくとも、まだ確信してはいないはずだ。

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