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90話 一方的でも口論なんだよ

「あんたらが義賊? イケメンだって聞いていたけど、流石に変装でもしているのか? それとも手下?」

「僕たちはただのコソ泥だよ。確かに宝石を盗んだことはあるけど、義賊じゃないんだ。見逃してくれ」

「へえ、冷静だな。でも、確かにその宝石の効果じゃただのコソ泥を追いかけた可能性もあるか。よく気付いたな?」

「自分で言ったんでしょ。盗んだ者のもとへ帰るって」


 さて、どうやって逃げるか……。

 口先だけで逃げられたら楽なんだけど。


「うぅん、でも、コソ泥ってんなら取り敢えず捕まえても問題ないな。頭も回るみたいだし、義賊の可能性大」

「おっさん! 逃げるよ!!」

「おう!」


 全力疾走だ!

 後ろへ駆け出し、角を曲がる。

 そしてすぐに立ち止まり幻術で僕たち二人の姿を変える。か弱い少女に。


「この……!」

「きゃあーー!! 神官様が剣を振り回してるわー!!」


 追いかけてきた神官を指差しながら悲鳴を上げる。

 そのあとダッシュで逃げた。



=====



「頭痛い……」

「旦那、大丈夫か?」

「あいつはやばい。トリプルホルダーだ。絶対見つからないようにしないと」

「はあ!? あいつ英雄格なのかよ……妙なもん使って追いかけてきたし、そんなやつに狙われるなんてやばいんじゃないか?」

「だからやばいんだって。まだ僕らを追尾する手段があるかもしれないから、すぐに拠点に戻るのもよくないよね……」

「ていうかトリプルホルダーって本当なのか?」

「この際だから言うけど、僕のスキルは他人のスキルが分かるんだよ。ステータス鑑定の魔法具ってあるじゃん? あれと同じ能力を使えるの」

「おお、それじゃあどんなスキルなのかも分かるのか? それならまだやりようもあるぞ」

「スキル名までは分かったけど、それ以上は時間が足りなかったよ。しかも頭痛してきたし」


 【虚像】や僕の持ってるナイフのマジックアイテム、<回帰の小刀>を【解析】したときも頭痛がしてきた。

 一発で頭痛するのはやばいスキルの証だ。


 【創製】【収納】【剣術】


 ぶっちゃけ後ろ二つは名前だけで大体の能力が分かるからいい。

 問題は【創製】だ。名前からして何かを創る、生み出すんだろうけど、どれほどまでの物が作れるのかの条件がはっきりしないと恐ろしい。

 あの宝石は以前に僕たちが盗んだ物なのだろう。それを『盗んだ者のもとへ帰る宝石』へと作り変えた、または『盗んだ者のもとへ帰る』という効果を与えたか。

 予想の域を出ないけど、かなり自由度のありそうなスキルだ。同じように僕たちを探し出す道具を作れそうな感じがする。

 それに、あの宝石はたぶん盗賊団として盗んだ物だ。盗んだ者という条件も曖昧だよね。売り捌くまで持ってたのは僕だったから、それで僕のところに向かってきたのかな?


 そんな話をおっさんにも伝えた。


「なるほど、かなり厳しいな……」

「僕も今は体調が悪いし、トリプルホルダーなんて万全でも勝てるかどうか。少なくとも、戦いたい相手じゃないよね」


 いろいろ考えたけど、僕の体調が辛くなってきたのもあって予定通り宿で休むことにした。

 ちなみに二人とも少女の姿だ。これで遭遇してすぐに斬り捨てられる確率が少しは下がるだろう。おっさんは凄く嫌そうにしていたけどね。

 中身は盗賊のおっさんで、見掛けだけはか弱い美少女だ。見た目だけでもと思い可愛くしてあげた。鏡を見ながら震える声で「これが……わたし……?」とかやってるの見て腹筋が壊れそうだったよ。


 あとは宿でアジトのものより美味しい昼食をいただいてから休む。

 ベッドで横になって、重力に逆らえないような気怠さを感じる。やっぱ熱上がったかぁ。栄養ドリンクもっと仕事して。

 寝よ寝よ。



=====



 ふと、目が覚める。

 部屋の暗さから、まだ夜中なのだろう。

 なんで目が覚めたのか、二度寝する前に軽く起き上がって体調を確認する。


「うぅ、頭いたぁ……」


 結構熱が出ていたのか、寝汗も気になる。

 そういえば昼過ぎに寝始めたんだっけ……そりゃ一回くらい起きるか。


「お、起きたな」

「――!?」


 侵入者!? もしかして変質者!?

 いや違う。神官服の男だ。……違わないのかもしれない。


「へ、変態……!」

「ぐ、変態じゃない! どこも触ったりしてないからな!」

「不法侵入の変質で変態な犯罪者!」

「違う。違うんだっ……! 俺は義賊の男を追っていて……その、お前が義賊なんじゃないのか?」


 今の僕は少女の幻術を掛けてある。

 だから胸を張ってしらを切る。


「そんな言い掛かりをして、寝込みを襲うつもりだったんでしょ!?」

「違うんだー!!」


 そう言いながら彼は、窓から飛び出していった。


 勝った。

 今晩はもう来ないだろうし、もうひと眠りしよう。



=====



「なるほど、夜中に侵入してきたのか。大丈夫だったか?」

「適当にしらを切ったら帰ったよ。でもまあ、僕のところに来たってことは外見関係なしに追跡できるアイテムを持ってるよね。確信は持てなくてもまだ疑ってるだろうからそこら辺で見張ってるんじゃない?」

「うわぁ……」

「ちょっと、きょろきょろしないでよ。なるべく自然にね。それと今日は外出禁止だから」

「そうなるよな……ああ、分かった。旦那の体調はどんな感じだ?」

「そこまで良くなってないからもう暫く安静」


 朝食を摂りながら女の子(中身おっさん)と打ち合わせ。

 それを簡単に済ませたあとは部屋に戻ってベッドイン。


 あの神官の注意がこっちに向いている限り、団長たちの方は安全だろう。

 取り敢えず、僕が回復するまでの時間を稼げればそれでいい。それから先のことは元気な僕が考えるでしょう。

 正直ストーカーに付きまとわれるのは勘弁してほしいけど、我慢我慢。ああでも、僕を追跡できるアイテムのタネは明かしておきたいかな。流石の【解析】さんも【収納】の中身までは調べられないですかね……んー、時間掛ければいけるかも?


 寝る前に窓の戸締りを確認して、手持ちのワイヤーで補強してっと。


「――あっ」

「あっ」


 窓の外でこちらを見る変態神官と目が合った。

 敢えて窓を開ける。


「あの、ストーカー神官さん……衛兵呼びますよ?」

「ごめんなさいやめてください」

「わたし、熱あるんです。具合悪いんですよ。気を落ち着かせて休みたいんですよ」

「あ、やっぱり調子悪かったんだ……なんかごめんなさい」

「寝込みの女の子の部屋を覗くとか、普通に最低だと思います」

「ごめんなさい」

「あなたどこの教会の人ですか?」

「リーベナゼル教会の……いや、職場に訴えるのはホント勘弁してください」

「勘弁してとか謝罪する人の態度じゃないですよね」

「あー、そのぉ、すいません」

「ただ謝れば済むとでも思ってるんですか? ストーカーは立派な犯罪ですよ。ここらの衛兵相手では立証するのは難しいかもしれませんが、わたしにもそれなりに伝手がありますので」

「はい、すいません……あの、お詫びといってはなんですが、これを……」

「はぁ、ここにきてお金ですか。なんですか? お金を払えば覗いても許されると思ってるんですか? もしそうならそのお金でそういうお店に行ってください。大体お金で償うにしても相応というものがあります。あなたはわたしをこの金銭程度の価値だと見ているということでいいんですね?」

「そういうわけでは……本当すみません」

「だから謝ればいいという話では……んっ……」


 やったっ。追跡アイテム【解析】成功!


 創製物『後追い鼠ストーキングマウス

 マーキングした対象を追いかける機械人形。

 対象に向けた状態で起動することでマーキングできる。

 マーキングは解除できないため、一人にしか使えない。

 作成者:アラタ・クツヌギ

 追跡対象:ミルピィ


 マジックアイテムに似ているけど、彼がスキルで作ったのだろう。

 マーキングが一回しか使えないとか地味に欠陥品だし。


 まあ、僕の【虚像】は道具だって騙せる。ステータス鑑定の魔法具とかね。どんな物かさえ分かればある程度対処のやりようがある。


「……あなたとの口論で熱が上がってきました。今回はこれで見逃してあげますからもう犯罪しないでくださいね。それでは」


 用事が済んだらさっさと窓を閉める。で、ロック部分にワイヤーをぐるぐる巻く。呆気に取られている神官を尻目にカーテンをピシャンッ。

 それにしてもあの神官、適当に謝ってやり過ごそうとしてたね。あの場面で義賊だなんだと詰め寄っても昨晩と同じ結果になるのは目に見えてるから、気持ちは分かる。だからぐいぐい攻めて責めたわけだけど。

 流石にまた侵入はしないだろうし、カーテンしっかり閉めたから覗かれる心配も……覗き用のアイテム作って無いよね? ……まあ、疑い出したらキリが無いし、見られても幻術の姿だから問題無いか。

 寝よーっと。


 ……ああ、お金は貰っといたよ。それはそれ、これはこれー。お金は大事。

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