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79話 いざ、盗賊重役会議

「ではこれより、緊急盗賊会議を始めます」


 参加者は三人。僕、団長、おっさん。


「ミルピィあなた……ちょっと見てない間にいろいろやってくれたみたいね?」


 やばい、団長が御冠だ。

 軽く盗賊ってくるとは伝えていたけど、性奴隷拾ってきて使ったのはついさっきおっさんから伝わったことだ。


「やむを……やむを得ないことだったんです……」

「まあ、あなたがそういうことするとは予想外だったから、理由が無いとは思わないけど」


 僕は性奴隷達に付けられている<淫魔の隷属首輪>について説明した。


「うわあ……よくそんなマジックアイテムがあったわね」

「効果が結構厄介なんだよねぇ。だからあれはしょうがない延命措置だったわけ」


 僕もね? その手の話題は得意じゃないから心を無にして取り組んだわけなんだよ。

 あの子はちょっと規格外な感じだったけど……。もうあの子が淫魔なんじゃないの?


「とにかく、彼女達の首輪が取れるように僕が手を尽くしてみるから」

「分かったわ。そういうことならミルピィに一任ね」

「ラジャー」

「それじゃあ、次の議題だな」

「ん? まだ何かあるの?」

「そりゃあるだろうよ旦那? あの奴隷商と護衛の処遇なんだが」

「あー……」


 そういえばあったね、面倒な問題が。

 できれば思い出したくなかったよ。


「どうしようか?」

「仲間にしようとは言わないのね?」

「え、なんで?」

「だってミルピィ、事あるごとに団員を増やすじゃない」

「全部、理由あってのことだよ。あの人たちを仲間にする理由が無いし、それに何より寝首を掻かれるかもだしね」

「ごもっともな話だな。それじゃあ解放しても構わないのか?」

「結果的に高価そうなマジックアイテムを三つも奪ったわけだし、報復も怖いんだよねぇ……」


 かと言っていつまでも拘束を続けていると無駄な食費が掛かる。


「それなら俺の方でなんとかしておこう」

「なんとかって?」

「まあなんだ、俺もそれなりに盗賊やってるしな。裏のやり方ってもんがあんだ。ミルピィの旦那は知らなくてもいいことだな」


 僕、これでも盗賊団の副団長なんだけど。

 でも裏のやり方っていうとなんか怖そうだから聞かなくていいや。


「それじゃ任せた」

「分かった」

「それじゃあ次は私からね。取り敢えず簡易的な温泉を造ってみたんだけど、それについて細かいところを決めたいわ」


 それからは地味な話し合いが続いた。

 温泉周辺の偽装から風呂の入る順番まで。別に今話さなくてもいいんじゃないかってとこまで話し合った。


「取り敢えずこれで……後は問題が出てきたら適宜対応ということでいいかしらね」

「異議なーし」

「俺も問題ない」


 ふう、やっとこの会議も終わりかな。

 はー、今日は疲れた。温泉で疲れを落としてぐっすり寝よっと。


「最後に、俺からもう一つ」

「えぇ、まだあるの?」

「ああ、この際だからと思ってな。ミルピィの旦那についてなんだが」

「僕?」


 まさか、最近のだらけ具合でも見かねられた?

 いやいや、夏バテはしょうがないんですよ。食欲も落ちるし強敵なんですよ。


「最近、旦那の性別を疑っている団員が何人か出ている」

「もともと僕、男とも女とも言ってないけど?」


 でもまあ、今は体と顔を隠して声を変えるくらいしかしていないけど、前は男の姿の幻術を着こんでいた。最初の印象というのは重要で、そのお陰で団員達は僕のことを男として接してくる。


「女なんじゃないかって噂がぽつぽつと耳に入ってきてんだ。確認してみたところ、某匂いフェチが旦那から女性フェロモンを感じると言っていたり、某指フェチが旦那の指は女の子の指だと言っていたりしていた」


 ゾッとする話だ。生理的に。

 え、なに、匂いまで誤魔化さないと駄目なの? 素肌は完全に隠さないと駄目?

 そんな匂いするかなと袖を鼻に近づけてみたけど、特に何も感じない。


「あと、某髪フェチが女性的キューティクルロン毛だとも。実際、旦那の髪ってかなり長いよな」

「まあね」


 後ろ髪を服の中に入れているけど、偶に裾からはみ出している。腰くらいの長さは普通にあるからね。

 でも、髪は別によくない? 男でも髪サラサラな人普通にいるじゃん。


「髪はほら、高級なシャンプー使ってるし」

「俺が言ってたわけじゃないから、言い訳されてもな」

「つまり、もっと男らしくしろってことでしょ?」

「極論だが、そういうことだな。俺からしても、この間寝込んだとき辺りから女っぽさが増したように感じる」

「僕にも遂にその手の色気が宿ってしまったか……」


 魔性の女に一歩前進だね。


「変なところで喜んでないで、しっかりしなさい?」

「ん、そうだね。女かどうか疑って覗きとかされたらやだし、そのうち釘を刺しておくよ」

「……確認なんだが、実際、ミルピィの旦那って女だろ?」

「……」

「……」


 あ、バレてるの? このおっさん、実は鋭い?

 もともと女だと知られると厄介そうだから隠していたわけで、でも完全に男として接されるのもなんか嫌だったから曖昧にしていたんだけど。


 性別バレのメリットデメリットは?

 このおっさん、うちの最年長だからか団員の取りまとめ役なんだよね。全体的な指示や意志決定は団長や僕が行うんだけど、団員同士のちょっとしたいざこざなんかが起こるとおっさんが呼ばれる。僕や団長が呼ばれることもあるから完全に役割分担しているわけじゃないんだけどね。

 つまり、実質うちの団員の中では団長、僕に次いで偉い。それなりに信頼できる人物なのだ。


 言いふらさないなら、別にデメリットとか無いのかも。バレちゃったのなら素直に明かして、むしろ今後の支援に期待したいところだ。

 ……僕の正体を知るのが団長だけじゃなくなるのは、少し残念だけどね。まあ、素顔を見られたわけじゃないしいいか。


「……参考までに、そう思った理由は?」

「いや、団長が旦那を連れてきた日に『意識を失った女の子を保護した』って報告されてたからよ、普通に分かったんだが」

「いっちばん最初じゃん!?」

「ごめんなさいミルピィ……。あのときは、ミルピィがこんな状況になるとは思ってなくて」


 そりゃあ、保護した子がキャラと外見変えて団員になるなんて思うはずないだろうけど。


「でも安心して。ミルピィのことはドウゴにしか詳しく話してなかったの。あのときは私も張り詰めていてね、他の団員と少し距離が開いてたから……」


 急になんかちょっと重い。

 まあまあ、今が良ければ全部良しだよ。


「それにしても、僕のこと知ってたなら言ってくれればよかったのに」

「それは、旦那が団長から聞いていた話とあまりに違ったもんだから戸惑ってな……触れずにおこうかと」

「……じゃあ、まあ、しょうがないね」


 僕、めっちゃ腫れ物扱いだったんじゃん!?

 地味に黒歴史。


 あのね、素の自分知ってる相手に別のキャラ作ってるところ見られるのって恥ずかしいんだよ。

 僕はムシャクシャして、八つ当たり気味に団長の胸へ頭突きを繰り出した。

 団長は息が詰まって軽く呻き、僕は仮面がズレた摩擦でおでこを痛めた。

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