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7話 僕じゃない、彼が迷子になったんだ

 噂話を聞き続けたけど、最近出た盗賊というのは僕たちではないみたいだ。

 内容も噂程度だし、2、3人くらいしか話していなかったから、まだそこまで大事にはなっていないと思う。取り敢えずは無視しても良さそうだね。


 最後に掲示板を見て、素材の相場を確認したらギルドを出る。

 安心したところで、気持ちを切り替えていこう。


「よし、次は武器屋に行くよ!」

「何か買うんすか?」

「君の武器を買ってあげる。冒険者になったのに武器無しはあれだしねぇ」

「ホントですか! ありがとうございます!」


 喜んでくれて何よりだ。

 でもね、武器を持つってことは戦う場に出るってことなんだよ。当然前衛さ。

 しかも君、いいスキル持ってるよね。あの傷の治りが早くなるやつ。


 ふふっ、いい前衛を手に入れたよ。


 武器屋は冒険者ギルドのすぐ近くにあった。

 適当に物色して、したっぱ君の体格に合った物の中で頑丈そうなものを選ぶ。

 こんなときにも役に立つ【解析】スキル。調べて、同じ価格帯で一番良いものを選んだ。


「お、小僧、良い目を持ってんな」


 武器屋のおっちゃんに褒めてもらった。

 これは別にスキルのことに気付いたのではなく、目利きのセンスのことだろう。まあ、目利きもスキルのお陰なんだけどね。


 武器を買ったなら、お次は防具だ。

 お隣の防具屋に入る。


「あんたたち二人ともヒョロイねぇ。無理して着るといざという時動けないし、身軽な革系統がいいだろう」

「じゃあ、幾つかおすすめをお願い」

「そうだな、そっちの坊主にはここら辺か。お前さんにはこれかな」


 革の防具を手渡されたけど、この姿は幻術だからなぁ。

 サイズが合っていない。


 どっちにしろ防具を着ると疲れるし、武器を仕込み難くなるから買う予定はなかったけど。


「今日は彼の防具を見に来たから、僕のはいいや」


 僕のは遠慮して、したっぱ君の防具を一緒に見ることにする。

 

 胸当てに、肘、膝と手の甲のプロテクター。

 最低限の急所は守れるようにしてあるようだ。


「うん、いいんじゃない?」


 よく知らないけど。

 したっぱ君も詳しくないから、結局勧められるままに購入した。


「あとは頼まれてた物を買うだけだね。荷物持ち頼んだよ」

「うす。でも、帰りは荷物持ったまま兄貴も背負うのは流石に無理ですよ」

「それくらい分かってるよ。……はぁ、帰りは歩きか」


 おんぶ、楽だったなぁ。


 防具を装備し、帯剣して少しだけ見栄えの良くなったしたっぱ君を連れて歩く。


「パンの補充と調味料の買い足し、適当な野菜、あとは釘と縄……」

「え、なんすか釘と縄って。拷問にでも使うんですか?」

「拷問って、そんなわけないでしょ。急に物騒なこと言わないでよ」

「すいません。でも、それなら何に使うんですか?」


 何にって、したっぱ君の中では釘と縄は拷問のための道具なのか……。


「もちろん普通の用途だよ……。アジトの扉にも釘は使ってたし、縄なんていくらでも使い道はあるでしょ」

「あ、そうですね……。なんか組み合わせと、盗賊ってことで変に考えてしまいました」


 いったい盗賊にどんなイメージを持ってるんだ。

 盗賊なんて大体は職にあぶれたか町に居られなくなった人が食い詰めてなる職業(?)なのに。


 まあ、町に居られなくなるほど悪さをした人がなるというイメージなら、そこまで間違っていないのかもしれないけど。


「とにかく、今日買う物はこんなとこかな。手分けしたほうが早いし、食料は僕が買うから君は残りをお願い。はいお金」

「うす、分かりました」

「じゃあ、ダッシュでよろしく」

「うす!」


 したっぱ君は元気に駆けて行った。

 僕は歩くけどね。


 先に幻術で姿を変えてから、食材を買いに行く。


 パンは安く、量がある物を。野菜はスープに入れる葉物と根野菜。調味料はメモに書いてある物をそのまま選んでっと。

 こんなとこかな?


 しまった。したっぱ君との待ち合わせ場所を決めてなかった。

 ノリで走って行かせたせいで、あっちは今の僕の姿も知らない。


 しょうがないから、釘などの道具が売っていそうな場所を探す。



 ……それから30分経った。

 したっぱ君はまだ見つからない。というかここ何処?


 え? うそ、迷子?


 やばい、土地勘が全く無いせいで戻れなくなった。

 取り敢えず、相手に見つけてもらうためにもミールの姿に戻すとしよう。


「おい、ちょい待てや兄ちゃん」


 路地裏に入ると、後ろから声を掛けられた。

 振り返るとごつい男三人がその図体で細い道を塞いでいる。


「なに?」

「お前、いっぱい買い込んでるようだけど、俺今ちょうど腹が減ってんだよ。分かるだろ?」

「うんうん。小腹が空く時間だし分かるよ。向こうにサンドイッチが美味しいカフェがあったから、よかったら行ってきたら?」

「てめ、分かってねぇじゃねえか! いいから有り金全部よこせ!」

「あ~ん?」


 なんだって? 金ならそうと最初から言えばいいのに。

 相手は三人。まあ、チンピラ程度なら余裕だろう。


 手荷物を道の端に置いて、手をフリーにする。


「あ? 兄ちゃん俺らとやろうってのか?」

「いや、君らとやるのは後ろに居るやつかな」

「あん? 後ろだぁ?」


 彼らの後ろには、2メートルはある巨体の甲冑が居た。もちろん僕の幻術。


 ――ヒヒーン。


「な、なんだあ?」

「甲冑から馬の鳴き声が!」

「『いななく甲冑』だよ。とある騎乗した騎士が、馬と共に命を落としたことにも気づかずに馬と混ざり合ってどこかを徘徊し続けている。聞いたこと無い?」


 ぶるぶると唸る甲冑が馬のように頭を振ると、勢いで兜が落ちる。

 すると、兜の中からは目元だけが人間で、残りは馬の顔という化け物が出てきた。


「うわあああああ!?」

「なんじゃこりゃあああ!」

「ひいいいいいい!?」


 まあ、ビビるよね。だってキモイもん。

 僕はポーチから両端に分銅を繋げたワイヤーを取り出すと、片端にお金の入った小袋を結びつける。


 簡易の鈍器が完成したら、くるくる回して遠心力で威力を上げたそれを一人一人頭に叩き込んでいく。

 僕の動きも幻術で偽装しているから、腰の抜けた相手に当てるのは簡単だった。


「さってとー」


 意識を奪ったところで、彼らの懐をまさぐる。

 あったあった。ちゃんと迷惑料は貰わないとね。


「うわ、しけてるなぁ」


 三人合わせても大した額にならなかった。

 はあ、しょうがないか。


 無駄な時間を食ってないで、早くしたっぱ君と合流しよう。

 荷物持って動き回るのも疲れたし。


 冒険者ミールの姿へと変えたら、荷物をもって路地裏を出た。

 もちろん、入ったときとは別の場所から。

あ、よかったらブクマ登録お願いします。(言うの忘れてた)

感想誤字脱字誤用報告喜んで。

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