78話 拠点ができるまでのあれこれ
「うわっ、人間を樽詰めにして運ぶとは鬼畜仕様だな」
「丸まった体勢からじゃ殆ど抵抗もできねえだろうしなぁ」
それでいて揺れる馬車で長時間運ばれるんだからあちこち痛くなりそう。
「実はこれ、いろいろ漏らしても外を汚さない効果があったり……」
「「「!?」」」
団員の一人が恐ろしいことに気付いた。
マジか。樽開けると大変なことになっているのか。
「ねえ新入り君たち、いつまでも樽詰めのままではあの奴隷たちも可哀想だと思わない?」
「いやそれ押し付ける流れじゃないですか!?」
「俺、やってもいいですよ」
新入り三人組の一人が引き受けてくれた。
「え、いいの?」
「あの子たち、結構上物ですから。むしろ興奮――」
「やっぱいいや。うん、彼女達も恥ずかしいだろうからね」
団長はアジト造りに忙しいから、僕がやるしかなさそうだ。
樽の蓋は粗雑な作りで、留めてある針金を切ったら取れそう。
奴隷は三人。一人ずつ樽から出していく。
皆死んだ目してるね。人攫いから盗賊の手に渡っちゃったからねぇ、どんまい。
一人目を出してみてびっくり。中身は全裸だった。
そして首輪を着けている。普通の奴隷用にしては奇妙な形状……マジックアイテムだ、これ。
<淫魔の隷属首輪>
これを着けている者は魔力登録をした者に服従する。
この首輪は常時装着者の魔力を吸い上げる。
性力を吸収して魔力に変換する能力を装着者に付与する。
取り外し方法は…………んん?
まあ、後でもう一回調べるとして、取り敢えず全員を樽から出す。
やっぱり全員が隷属首輪付きだった。漏らしていたかどうかは割愛で。近くの町から来たみたいで、そこまで酷いのはいなかったとだけ言っておく。
というか、三人とも魔力吸われすぎて虚脱状態なんだけど。荒く息をしながら裸で悶えていてエロい。
レベル高い子達だし、なんか同年代っぽいのもいるし。僕が何かしたわけじゃないのに、なんだかいけないことをしている気分になってきた。同性だけどちょっと興奮する。
三人の奴隷はぐったりして意識も朦朧だから一旦放置して、団員のところへ戻る。
「はーい、あの奴隷とヤりたい人ー」
「え!? あんな死に体のやつ犯す気かよ!」
「それがどうも、首のマジックアイテムのせいみたいなんだよね。エッチなことしないと死ぬ感じみたい」
「なんだそのエロ魔法具!?」
「そんなロマンある道具があっていいのか!?」
「あったから奴隷とセットで密売されてたんだろうね」
「道理で三人しか奴隷を運んでないと思ったら」
「てか、旦那はいいのか?」
「ん、なにが?」
「いや、旦那がヤらなくていいのか?」
「はあっ!? 僕がそんなことするわけないじゃん!! 変態!!」
「ええ!?」
「もういいや、僕は団長の様子を見てくるから、その間に済ませちゃってね」
=====
洞窟を進んでいくと、休憩中なのか立ち止まっている団長を見つけた。
「団長調子どう?」
「それが……」
あれっ、調子悪いのかな?
「温泉、掘り当てちゃって……」
「え」
立ち尽くしている団長の傍に寄って正面を見てみると……おお、少量だけど湧き出ている。
湯気も出てて、温度は結構高そう。
「水脈を掘れたら良いなあと思って深く掘ってみたんだけど、これは考えて無かったわね」
「良いじゃん温泉。もっと広げて大きな天然温泉にしようよ」
「地下に潜るように掘っていた洞窟なのよ? 温泉臭くなるし湯気が漏れていたら変だし気温上がるしジメジメするし」
「えー……」
でも、折角の温泉を埋めるのは勿体ない。
団長は相当細く深く掘ったみたいだから、温泉がここら辺の地盤を崩すようなことはなさそうだ。
「じゃあさ、温泉だけ別の場所に掘ろうよ。地中深くに温泉があるのは間違いないんだから、少し離れた場所からでも掘り当てられるって」
「それなら……そうね、やってみましょうか」
それから少し離れたところに移動して、【解析】で周囲の地形や温泉を掘り当てるベストな穴の角度なんかを調べて、掘ってもらった。
キュイイイインッ、と、硬い地盤を団長が魔力で掘っていく。
「待っててもいいけど、少し時間掛かるわよ」
「んー、じゃあ団員の様子でも見てくるよ」
ドリル団長に後は任せて、造りかけのアジトに戻る。
みんなもそろそろいい頃でしょう。奴隷達を置いていった場所へ向かう。
「っ――っ――!?」
終わってなかった。
自主規制。
え、うそ? というか僕、なんで様子見に来たんだろ。疲れてるのかな。疲れてるんだよ。
うわぁっ、うわぁ。嫌なもの見ちゃった。あの人数で? いや、深く考えるのはやめよう。
団長のもとへとんぼ返り。
もうね、歩き疲れてるんだけどね、休む自室がないんだよ……。
団長のビフォーアフターが待ち遠しい。
温泉予定地に戻ると、団長はずぶ濡れだった。後ろ姿にはなんだか哀愁が漂っている。
隣ではぼこぼご湧き出るお湯から湯気が立っている。想像はできるけど、一応訊く。
「どうしたの?」
「油断したわ……」
団長はげんなりした様子で、ポタポタ水滴を落としつつ振り返った。
「そろそろかなと穴を覗いてたら、一気に噴き出してね……」
「ええと、どんまい」
「はぁ……まあ、いいわ。これでもう濡れることを気にする必要もないわね」
それからの団長は速かった。
猛スピードで掘り進め、掘り固め、温泉を造り終えた。
あとは換気用の穴を何カ所か開けて、団長の仕事は終わりだ。温泉については。
「ふうっ、ひと段落付いたから着替えてくるわ」
「お疲れ様」
本当ならすぐに温泉に入ってリフレッシュをしたいところだけど、出来立てほやほやな温泉は茶色く濁っていた。しばらく湯を流し続ければ濁りも無くなるだろうけど、すぐにとは行かない。
さってと、さてさて~?
そろそろ流石にいいんじゃないかな?
もう見に行かなくていいんじゃないかと思うけど、女の子達を放置するわけにもいかないからね。
結構時間経ったし、大丈夫でしょう。
団員たちが集まっている場所に向かい、角からこっそり様子を見る。
男で立っている者は居ない。皆、身体を地面に投げ出している。
女の奴隷は三人居たはずだ。二人は男に混じって地面に横たわっている。
一人だけだ。一人だけ、立っている。僕とそう変わらない年の女の子。
汚れた身体に汚れた布切れを当てて、一応大事なところは隠している。でも、当てているだけだから後ろから見ると普通に全裸。
他は皆ぐったりしているのに、なんであの子だけ棒立ちしてるんだろう?
視線に気付かれたか、彼女はゆっくりと振り向いて、僕と目があった。
ニコリと微笑まれた。なんて綺麗に笑うんだろう。あまりにも整っていて、逆にそれが作り笑いだとすぐにわかった。
「覗きなんて、エッチな人ですね」
「い、今来たとこだしっ。様子見に来ただけだもん」
「やっぱり見に来たんじゃないですか。でも残念ですね、皆さん既に果ててしまったようですので」
「終わったかどうか見に来たの! 終わったんだよね、ならそれでよし」
「あなたのお相手もしますか?」
「要らないよ! 僕はほら、あれ、何か着るもの用意してくるから!」
なんなのあの子!? エッチ!!




