49話 ゴブゴブゴブリン
さっきまでは熱も出てたから、それよりはマシだと思うんだけど……。
あの聖女に触られたら気持ち悪くなった……!
どこが聖女だよ。え、魔力強くね? って思ったけどホント力込めすぎ。
薬も用量を間違えれば毒となる。癒やしの力でもそれは同じってことだね。
はぁ、もう最悪。
錫杖も言ってたけど、要は僕のスキルに悪影響が出たってことだからね。【虚像】の幻術を解除。これで少しは楽になるはずだ。
あとはもう、ベッドで横になっていよう。
あ、でも筋肉痛が消えてる。頭怠いけど、身体はちゃんと良くなってるみたい。熱もたぶんなくなってるし。
うん、寝ているだけならそこまで辛くない。これなら寝れそう。
=====
寝て起きたら体調は完全に良くなっていた。
普通に熱や疲労を治すよりも早く治ったから、一時的に別の具合が悪くなっても聖女の治癒をした方が効率はいいみたい。また頼もうとは思わないけど。
昼食を食べに下の階へ下りたら、今日の探索は中止だと言われた。
体調はもう万全なんだけど……。まあ、休んでいいなら休むけど。
たっぷり一日休んで、次の日。朝から早速迷宮へ潜る。
「ミール、お前のスキルは位置の把握か?」
「え、なんで?」
「一昨日、迷わずに帰れたのはお前の先導でだろう? お前には迷いがなかったからな」
あー、あのときは余裕がなかったからねぇ。頭痛がしない程度に全力で【解析】を使って道を調べていたんだった。
「違う。僕のスキルは【投擲】だよ。素晴らしいコントロールで物を投げることができるスキル」
スキル持ちなのはバレてるし、【投擲】はバレてもどうでもいいスキルだからスケープゴートになってもらう。ごめんね【投擲】。【虚像】や【解析】の方が大切なんだ。君はほら、こう言ってはなんだけど、ありふれているから。
「ふむ……だが、それだけではないだろう?」
こいつ……めちゃくちゃ勘ぐってくる。
えぇ、めんどくさぁ。そんな男は嫌われるよ? 僕の中の好感度も結構低いよ?
そういえば錫杖のスキルって【魔力感知】だったね。いつもギルドに居る冒険者に訊いたら戦闘系のスキルじゃないかと言われたけど、見事にデタラメだった。いや、予想だったから嘘ではないんだけどね。
【魔力感知】かぁ……。僕が【解析】を使ってるときも感知してるのかな? してるから勘ぐってるんだろうねぇ。
情報系(僕が今分類した)のスキルは基本的に厄介だ。【解析】を使う僕がそう思うんだから間違いない。
聖女の【真眼】もこの分類でいいかな。【真眼】ほど手こずっているものはないね。【虚像】が効かないとか酷いと思う。
「それは黙秘ね」
「ふむ、まあいいだろう」
――今はまだ。
そんな言葉が入っていそうな口振りだ。
秘密がある女って言うとカッコいいじゃん? だからほら、勘ぐらないでよ。
そうだ、いつかのやり返し。錫杖の情報を握って脅してやればいいんだ。ふふっ、深淵を覗く者はってやつだよ。
【解析】で錫杖男を調べる。
うわ、結構マジックアイテム持ち歩いてる。
<途上伝記の念写書><魔貼付の錫杖><旋風の呼び鈴><伝熱の短杖>
全部で四つ。この人、念写書常に持ち歩いてんの? あの脅し用の魔法具を? ちょっと引いた。
とりもち錫杖はいいとして、残りの二つ。<旋風の呼び鈴>は強烈な風を起こす鈴で、<伝熱の短杖>は記憶した温度の熱を放射するペンサイズの棒だ。
……呼び鈴、落とし穴に対処できるね。落下速度を軽減できる。
こいつ……! あんなときにも隠し玉温存していた! 僕の苦労を返せ!
でもこれだけじゃ脅せるレベルではないかな。んー、ヤバいものは持ってなさそう。
脅しのネタは手に入らなかった。またの機会に期待。
「着いたな。問題の場所へ」
「落とし穴ですね」
「ああ。だが、ここを通らないと先へ進めん」
調査の結果落とし穴があっただけでした……では無理だよね。
ここはしょうがないから【解析】。また落とし穴に落ちるのは御免だからね。
……一定の重さを超えると反応して動く植物みたい。
何かに触れると反応するオジギソウやハエトリグサの亜種のようなものかな。
「これ、一人ずつ進めば大丈夫みたいだよ」
「え、そうなの?」
「本当か?」
「僕の知識は信用できるよ」
「じゃあ何故引っかかったんだ」
「引っかかって気付いた」
「……まあ、いい。じゃあ行ってこい、シルクハッカ」
「ラジャー!!」
不死身君が最初なあたり信用してないよね。いいけどさ。
その不死身君は、何を思ったのか全力疾走でトラップの上を駆け抜けた。……重さに反応するんだからもう少し慎重に行ってほしかった。大丈夫だったけど。
「ふむ、平気そうだな。なら次は俺が行こう」
「走ったりしないでね」
「あいつと一緒にするな」
その後は錫杖男、聖女、したっぱ君の順で渡り、最後に僕が渡って無事にトラップを突破した。
トラップを渡った順番で奥へと進む。
魔物登場。安定のゴブリンだ。
「ミール、投擲だ」
えぇ、一番後ろの僕がやるの?
まあ、敵を前にして文句を言うことはできないけどさ。
しょうがないのでナイフを放り投げる。いつも通りの手抜き投擲。念動を発動させてゴブリンを背後から突き刺――避けられた。
……あれ?
手元に戻ってきたナイフをキャッチしつつ、ゴブリンからは目を離さない。
なんで避けられたんだろ?
「やはり、先程までの奴等とは違うようだな」
「今までより強いってことすか?」
「そこらのゴブリンは大体弱いが、それは未熟な個体だからだ。成熟したゴブリンは強いぞ」
なるほど……【投擲】!
スキルで強化された全身を使ったスローイング。ゴブリンはそれを避けきれずに喰らい、体を傾けたところで発動した念動により、腹に深く刺さったナイフがその傷口を斬り開いた。
ゴブリン、撃沈。
「まあ、こんなもんだね」
「ミールちゃん凄いです!」
「……お前がまともにナイフ投げたのを初めて見たぞ」
……ちょっとムキになってしまった。僕の【投擲】は百発百中なんだ。それをあっさり躱されたのは、たとえ手抜き投擲でも少しだけ悔しいものがある。
「ミールちゃんは可愛いし強いしで、もう完璧ですよね! どうです? リーベナゼル様のところの教会に興味はありませんか? 護衛でも側付きでもただ居るだけでも何でもいいので歓迎しますよ!」
「あっ、勧誘は結構です」
「丁重に断られた……! いや別に教会とかどうでもいいんですよ。うちに所属する必要はありませんからどうか!」
それでいいの? 聖女なのに。
もちろん断ってそろそろ先に進む。
だんだん強くなっていくゴブリンを倒しながら奥へと進むと、如何にもな門の前にたどり着いた。
どうみてもボス部屋。
「……入るぞ」
休憩を挟んで罠の確認を済ませたら扉を開ける。
その先はある程度の広さを持った空間で、その中心には――ゴブリンが鎮座していた。
……結局ゴブリン。




