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44話 フードを目深に被って

タイトルとあらすじを変えました。よろしくどうぞ。



「は? 指名依頼?」


 冒険者ギルドの受付に呼び出されて、言われた内容が指名依頼についてだった。


「難易度の高い依頼でねぇ、スキル持ちを集めてやってもらうことにしたんだよ。今、ここのギルドに居るスキル持ちはあんた達含めて数人だからね、できることなら受けてほしいと思ってるよ」

「えー……おばちゃん、僕、他の人とパーティ組むの嫌なんだけど」

「そうは言ってもあんた達を抜くと人数的に不安でねぇ……それと、指名依頼は断るとギルドからの評価にマイナスが入るよ」

「え、初耳なんだけど。そういうのは先に言ってよ」

「ギルドカードの裏に書いてあるよ」


 あ、ホントだ。

 僕は説明書とか読まずにやるからなぁ。小さい活字にまで目を通してなかった。なになに?


「……最悪、冒険者名簿から除名する場合もある……マジで?」

「まぁ、それはよっぽどのケースだねぇ。今回の依頼を断るだけじゃあそこまではいかないよ。たぶん」

「たぶん!?」

「所詮は木っ端の受付だからね、上が決めることまで断言できやしないよ」


 不安だ……。

 どうしよう、受けないと駄目かな?


 指名依頼を断り続けるのはやはりよくないだろう。

 だったら、受けられるものは受けといた方がいいかな?


「しょうがない、受けるよ。君もそれでいい?」

「うす、お任せします」

「あいよ、二人ともだね」


 正直めっちぃ。

 拘束時間はどれくらいなんだろ?


「――話は聞かせてもらいました! 私もそれを受けましょう!!」


 ばさりとマントをはためかせ、被っていた帽子を取りながら近くの席から立ち上がったのは、聖女。

 居たのか……。小癪にも変装していたようだ。


「……あんた、教会の聖女だろう? それはちょっとぉ」

「立場身分関係無しですよ! 私も冒険者登録しますから! 誰でも登録できるんですよね? ほら、これで同じ冒険者、何も問題ありません!」


 聖女はぺらぺらとまくし立てながら、本当に冒険者登録をしてしまった。


「おばちゃん、僕やっぱり……」

「もう既に受注したからね。今断ると違約金が発生するよ」

「うっ……」

「おばさま! 私が同じ依頼を受けても大丈夫ですよね!」

「……あんた、ダブルホルダーだったのかい。聖女としての実績もあるし、実力としては申し分なさそうだね」

「よし!」


 ぶーぶー。

 ちっともよくない。


「ミールちゃん、一緒に頑張りましょうね! 私が居るからには、ミールちゃんに傷跡一つ残させませんよ」

「まあ、勝手に頑張って」


 フードの端を引っ張りつつ、俯いて下を見ながら適当に対応。

 未だに仮面は手に入っていない。あれって、どこに売ってるんだろう。ちょくちょく探してるのに全然見つからない。


「それで、他のメンバーは誰なんですか?」

「ノルロークとシルクハッカが既に受注しているよ。他は都合を見てだねぇ」

「げっ……確か、この間の」

「あの方たちですか」


 同じスキル持ちだからなぁ……。変に共通点があるせいで繋がりが出来つつある。


「したっぱ君したっぱ君」

「なんすか?」

「今回の依頼、僕は適当に流すからその分頑張ってね」

「はあ、分かり、ました……?」


 普段は僕のちょい後ろにいることが多いしたっぱ君だけど、今回は前に出てもらおうと思う。

 依頼というか、主に面倒な人たちの対応を任せたい。



=====



 依頼当日。

 荷物を持って、町の門の前で待ち合わせ。


「なんだか楽しみですねー。私、迷宮って初めてなんですよ」


 ここには既に僕としたっぱ君、聖女が来ている。時間ズラせばよかったと後悔した。

 この人は僕を見ながら僕に話し掛けてくるから、したっぱ君に対応を任せにくい。フードの端を引っ張って顔を隠す。


「聖女様がそんなとこ行って大丈夫なの?」


 何とはなしに相づちとして訊いただけだったけど、訊かれたくないことだったみたいだ。聖女は、ずっと僕の顔を見ようとしていた視線をサッと逸らした。


「も、問題ないですよ……?」


 これ、問題になるやつだ。

 そういえば、この間は変装までしていたね。あれは僕に逃げられないためではなく、自分が逃げるためのものだったのかも。


「おーい! おーい!! おはよーございまーす!!」


 声のした方を向くと、不死身君と錫杖男が歩いてきていた。まだ距離はあるのに、不死身君は声を張り上げて挨拶している。錫杖はしていない。距離があるから、こっちは誰も挨拶を返さない。


「おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」


 近づいてから、ようやく聖女が挨拶した。その後に僕としたっぱ君も挨拶。


「ふむ、全員準備は出来ているな? それなら向かうとしようか」


 五人で全員。他は都合が合わなかったらしい。やっぱ僕も腹痛の予定でも入れればよかった。

 シャンシャンうるさい錫杖のあとに続いて門を出る。


「でも迷宮の未調査エリアかー。何かお宝があるといいね!」

「俺としてはマジックアイテムだな。迷宮と言ったらマジックアイテムだろう」


 今回の依頼は、迷宮の未調査エリアの調査。

 この町から一番近い迷宮で新たなエリアが発見されたらしい。


「ところで皆さん、随分と軽装なんすね」

「「「「ん?」」」」


 僕、いつものダボ服。中に幾つか投擲ナイフを仕込んでいる。最近はマジックアイテムのナイフが便利だから少し持ち歩くナイフの数を減らした。

 聖女、ローブ。お忍びだからか教会の服ではない。まあ、軽装。

 錫杖男、布面積が多い服。錫杖のせいかちょっと神官っぽい。

 不死身君、どう見ても私服。防具類は一切なし。腰の刀が唯一冒険者らしさを出している。


 革装備のしたっぱ君だけが、まともな防具を身につけていた。


「だって、防具って重いし」

「持ってなかったので……」

「盾が居るからな」

「防具って高いのにすぐ駄目にしちゃうから……ノルローク、盾ってもしかしなくても俺のことか?」


 あれ、これ別に遠足じゃないよね?

 危険地帯に行くのにこれだ。僕は重みで動きが鈍くなると却って危ないからという正当性があるけど、他はどうなの?


「そういえばこのパーティ、スキル持ちで実力があるからというだけで決まったメンバーなんですよね。役割や相性は大丈夫なんですか?」

「悪くはないと思うぞ? 盾役と治療役が居るのだし、どうとでもなるだろう」

「は? お前、丸腰の俺のこと盾役だと思ってるの?」

「刀を腰に差しているのだから丸腰ではないだろ」

「そう! 俺の役割はこの愛刀で敵をばっさばっさ斬り倒すことだ! 勝手にタンクに任命するな!」

「刀を使うということは前へ出るのだろう? なら特に問題はない。せいぜい頑張れ、肉壁」

「お前ぇ……! 見てろよ! 今回の依頼での俺の活躍!!」


 僕も正直、不死身君のことは盾、囮役だと思っている。だって死なないし。

 本人にはその気が無いのか紙防御だけど、それでも別に死なないし。


「本当、大丈夫なんすかね?」

「……頑張ってね」


 僕は知らない。

 したっぱ君の健闘に期待。

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