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43話 memory 8 no data found

 風邪が悪化した。

 ××は疲労がすぐに体調に出るけど、精神的なことも体調に出やすい。つまり、すぐ体調を崩す。


 解析結果は休めば治るだった。常に休んでるんだけどね。


「……シェイプルさん、お仕事はいいの?」

「今はミルピィ優先ね。放っておいてさらに悪化したら大変じゃない」

「いつものことだから気にしないでいいよ?」

「むしろ気になったのだけど……。あなた、持病でも持ってるの?」

「別に……」

「あなた、最初も道端に倒れていたけど、本当に大丈夫なの?」

「ちょっと、身体が弱いだけだよ」


 ただ免疫力が低いだけ。あと体力もない。

 シェイプルさんはかなり頻繁に××の様子を見に来てくれている。看病。優しい。


 ――この生活も、いつまで続けられるのか。


 見えないところで、タイムリミットは近づいてきている。


「シェイプルさんはどうして盗賊になったの? あ、やっぱり欲の限りを尽くすため? 貪りたかった?」

「違うわよ……! 本当、あなたは私のことどう思っているのかしら……」

「それなら、どうして」


 シェイプルさんは××の盗賊の印象から大きく外れている。

 なんで、盗賊なのか。


「……この盗賊団のほとんどは、前は同じ開拓村の村民だったのよ。でも、村が魔物に襲われて無くなってしまったの」

「シェイプルさんでも勝てなかったの?」

「私は戦闘系のスキルじゃないからね。多少は戦えるけど、群れの相手は難しいのよ」


 あれで多少なんだ……。魔物の頭をドパァンッしてたのに。


「それで、生き残りのなかで他の町や村で受け入れられなかった人たちが集まって盗賊になったの。まあ、よくある話ね」

「受け入れ……」


 そういえばまだ町とか行ったことがない。

 この世界では、難民が盗賊になるのはよくあることなのか……。


「特に親の居ない子供なんかは難しくてね。あとは、団のなかには子供や私たちを放っておけなくて一緒に居る人もいるわ」

「ん? それで、どうしてシェイプルさんが団長になってるの?」

「私がスキル持ちっていうのもあるけど、元々村長の娘だったのが大きいわね。一番は、盗賊になっても子供たちを見捨てないって言った言い出しっぺだからだけど」

「ああ、それで……」


 この人は優しい盗賊だ。××の心を癒してくれる人。大切な人。××の特別。


「けほっ……んっ……」

「少し長話だったわね。今日はもう寝なさい」

「うん……おやすみ」

「おやすみなさい」



=====



「熱は下がったみたいね」

「シェイプルさんの看病のおかげ。お陰様で本日もミルピィは生きております」


 パンのお粥まで作ってくれたし、普段の倍は部屋に居てくれた。


「そこまで私のお陰にするのは大袈裟よ」

「シェイプルさん、冷静に考えてみて。もしも今、シェイプルさんがわたしの世話を放棄したら、どうなると思う?」

「……ミルピィが死ぬわね」

「生殺与奪を握られている……」


 ついでに貞操も。


「奪わないから、心配しないでよね」

「まあ、奪いたいならそれでもいいよ。でも、殺すのはいいけど、見捨てないでね。外来種って分かる? 余所の環境から連れてきた生き物なんだけど、そういうのを勝手に外へ放すとそこの生態系が乱れてしまうの」

「話の脈絡が分からないわね……」

「だからね、外来種をペットとして飼うときは最後まで責任を持って飼わないといけないの。もしも飼い続けることができなくなっても、可哀想だからって外へ逃がさずにきちんと殺さないと駄目」

「……それで?」

「わたしを野に放つと恐いよ? この世界の人々は、外来種の恐ろしさの片鱗を味わうことになるでしょう。シェイプルさんは責任を持ってミルピィのことを飼うか、もし飼えなくなったら辛くても処分しましょう」

「なんとなく言いたいことは分かったけど、なんでそのたとえ話をしたのよ……」

「ペットっていうのはね、殺されることよりも捨てられることの方が怖いの。少なくともわたしはそう」

「あなた、別にペットじゃないでしょ」

「え? 愛玩動物だよ? シェイプルさんが拾って飼っている」

「もの凄く初耳よ!?」


 ぴよぴよと衣食住の世話をしてもらって対価も無し。しいて言えば存在が対価。居るだけで癒やしな××は、もう既に立派なペットだろう。


「そっか、自覚なかったのか。今後は気を付けてね? ちゃんと殺すこと」

「なんでそこだけ注意するのよ。殺さないし、見捨てないわよ」

「そう? でも一応遺言でも言っておこうかな。……殺すのはシェイプルさんでお願いします。遺髪は御守りにして常に持ち歩いてください。殺した際、血液を飲むのを忘れないでください。死姦はやめてください」


 これくらい言っておけば大丈夫かな?


「最後とんでもないこと言ったわね……全体的にサイケすぎるでしょ。特に血液」

「え……!?」

「え、なんで今驚いたの」

「血液は美味しいんだよ。わたしの血は特に美味しいよ。よく味わってね?」


 情報がいっぱいで美味しい。機会があればシェイプルさんの血も……じゅるり。


「言ってる意味が分からない……!」



=====



 この生活も、そろそろ限界。


 シェイプルさんの力になってあげたい。この生活を守るためにも。


 でも、××には力が足りない。努力する時間もない。

 今頼れるのは自分の持つスキルだけ。


 自己暗示。


 前回が前回だったから、覚悟のいる手段だ。

 正直どうなるか分からない。


 それでも、こうでもしないと部屋から出るのも難しい。


 じゃあ、そろそろ始めようか。


 ……虚像さん虚像さん、××に力をください。人と接する勇気をください。敵をやっつける心をください。


 参照、認証、印象不足。

 想像の産物。現実に虚実を混ぜる力。発動には足りない。想いの数が。現実に魅せるほどの空想が必要。


 虚像さん、少しでいいんです。不完全でもいい。××の想いだけでは足りないかもしれないけど、それでも、力をください。

 ××の偶像を本物にしてください。自分すら騙せるなら、偽物でもいい。虚像のわたしを××にください。あなたの力を××にください。


 ――ありがとう。


 ……さようなら。また、明日。



=====



 妨害を察知。

 対象の精神へのスキル行使を検知。

 抽出不能。

 ――エラー。

 読み込み失敗。

 追跡データ破損。

 ――エラー。

 ――エラー。

 ――エラー。

 抽出終了。

 伝記ものがたりを構成。

 念写開始。



出演

ミルピィ

シェイプル

ドウゴ

わんちゃんズ(故):友情出演

制作

いつかどこかの念写書



近日、この作品のタイトルあらすじを変える予定です。(4月11日現在)

タイトルが分からなくなって行方不明になったらごめんなさい。あと、予告は活動報告の方にも載せときましたので。



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