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40話 memory 5 search error

「平気? 手が震えているけど」

「だ、だじょぶっ……」

「歯がかみ合ってないけど……」

「カチカチカチ……」

「ホントに大丈夫なの……?」


 二人で外にやってきた。

 なんて、早まったことをしてしまったんだろう。


 いや、そうじゃない。シェイプルさんと××のご飯のためなんだ。頑張らないと。頑張らないと……!


 調査内容、周辺の食べられる植物。

 ――解析開始。


 幾つかの食べられる植物を採取して、それをシェイプルさんに渡す。


「えと、えと……その、えっと……これ……」

「これと同じのを集めればいいのね?」


 さすが以心伝心。

 コクコクと頷く。


 二人で採集。


 両手いっぱい。

 手が雑草臭い。


「えと……これを、ね……水に、浸して、えと、10日くらい……ぁ、毎日、水は換えて……その、そしたら、茹でて、食べれる」

「……随分手間が掛かるのね」


 食べられるけど、そんなに食用には向いてないからね。

 量はあるんだけど。


「これ、は……一度、凍らせると、えと、えと、美味しく食べれる」

「へえ、そんなことよく知ってるわね。でも、凍らせるのはちょっと無理かしら……」

「ぁ……そぅ……」


 じゃあ食べられないや。これには凍らせないと無くならない毒がある。

 不要になってしまったので、せっかく集めたけど捨てた。キャッチアンドリリース。もしくはただの草むしり。


「……これ、茹でるだけで、えと、食べれる。たくさん、あく、出るからその……3時間くらい、茹でて、あく取って……」

「どれも大変なのね……」

「ぁ、でも、その……これ、そのまま、いける。……ぁぅ……その、食べすぎで、お腹、壊すから……1日、5個くらい、まで……」

「少ないわね……」

「うん……」


 ビー玉サイズの木の実だからね。

 でも、添え物くらいにはなると思う。


「……これ、魔力、込めると……えと、毒、抜ける」

「急に難易度跳ね上がったわね!? ……どうやってやるのよそれ」

「ぇ……できない、の……?」

「私はできないわよ。当然、他の団員も。……ミルピィはできるの?」

「んと……えと、こう……」

「逆になんでできるのよ……」



=====



 野草を食べようの会は失敗だった。

 調理行程に不可能があった。水に浸ける、茹でるだけの草もあったけど、大量の水を駄目にするところがバッドだった。ここでは水も有限だ。


 次の作戦を考えなければ。


 ……でも、今日はもう疲れたからまた今度にね。



=====



 ふふっ。

 完璧だ。マスタリーした。


 シェイプルさん。うん、間違いは無いはず。

 名前覚えた。××歴13年と半年ちょい、××、他人の名前を覚える。歴史的快挙だ。


「シェイプルさんシェイプルさんシェイプルさんシェイプルさんシェイプルシェイプルシェイプル……」

「え、なに、呪い殺す気?」

「ぅひゃああぁぁ……!?」


 いつの間にかシェイプルさんが部屋に来ていた。

 恥ずかしくて枕にダイブ。……枕は結構固くて、ぶつかった鼻がツンとした。



=====



「はい、服脱いで」

「ぁぅ……ついに、このときが……」


 食べ頃と判断されてしまったかぁ。あちゃー。

 諦めのよさが××の特長の一つだ。潔く脱いで、ベッドという名の調理台へ横になった。


 相手は悪党の総締め、盗賊団団長だ。魔物を爆殺する力を持ってる。どうしようもない。××は抵抗すらしないで大人しく投降した。メガホンを持った警部さんもびっくりだろう。


「あなたはまた、下着はどこにやったの」

「…………あれっ?」


 どこやったっけ?

 あまりにも部屋から出ないから、不要なものとしてどこかにやってしまった。

 いや、投げ捨てたわけではない。洗おうとした気がする。そのあとのことはよく覚えていない。


 まあ、今はそんなことどんなことポイッ。

 ××がベッドインしたんだよ? 何かないの? 綺麗だよ。甘い言葉。


「ほら、これに着替えて。探すわよ」

「ぁ……うん……」


 パンツは見つからなかった。



=====



 自己暗示。


 これは思い込みの激しい子と母に言われたことが7回ある××に向いている。

 でも違うのお母さん。××はそんな残念な子じゃないの。心が熱烈なの。一度熱くなると激しいの。

 閑話休題次号へ続く。


 間違いを本当だと思い込む。自己暗示、つまり信じ込む力だ。


 間違い嘘妄想空想虚構はお手のもの。

 【虚像】一つで大満足。一人に一つ偽物メーカー。嘘もホントもあなた次第。いっくよー。


 シェイプルさんは信用してもいい。あの人のことは大切にすら思っている。

 頭では分かってるんだけど、心がそれを否定する。だから未だに触れることさえろくにできない。涙が出るし身体は震えが止まらない。

 そもそも××の信用は一味違う。信じてる。何が何でも信じてる。信じた人なら何をされてもいい。それでもきっと、信用に答えてくれるから。裏切ってもいい。それは裏切りではないから。あなたの全てを信じてるから。どんなことがあってもどんなことをされても信じてる。たとえ殺されてもいい。殺されても信じてる。だって裏切るわけがないから。裏切っても別にいいから。お願いだから信じさせて。


 そこまでしないと心が拒絶する。人間コワイ。涙出る震える。


 まあ、まず無理だよね。

 命の恩人でも未だに心から信用できないんだもの。

 信用できる人のボーダーラインは天井知らずだ。××には勇気が足りない。根性が足りない。胸が足りない。背が足りない。


 そこで【虚像】。

 ちょっと背中を押してくれる。いつも陰ながら支えてくれる頼れる御仁。今、【虚像】がアツい。


 虚像さん虚像さん。××に勇気をください。ちょっとだけの偽物の勇気をください。

 ……ちょっと足りない。もうちょっとだけください。……あとちょっと。


 自分とうとい。とっても大事。すぐ投げ出す。諦めが早い。

 価値を下げる。価値を上げる。同じくらいに合わせる。あの人とは対等だ。ちょっとあっちが上なくらい。上司に切腹と言われたら切腹するのがジャパニーズ。


 ……虚像さん虚像さん。××に信用をください。信じる人をください。特別な人をください。

 ちょっとだけ偽物で補強した心をください。盲目に信じることができる心をください。


 ……ありがとう。

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