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25話 半径2メートル以内でも処罰

 たっぷりと時間を潰してから、待ち合わせ場所に向かった。


 お、だいぶ集まってるね。

 ひぃ、ふぅ、みぃ…………うん、全員揃ってるみたい。


「お待たせー」

「「「……?」」」

「おーまーたーせー」


 何故か、みんなして後ろを見た。


 ? ……ああ、この姿だと分からないのか。

 銭湯に入ったときのままの姿だった。


「わたしだよ。君たちの副団長だよ」

「あ、もしかして旦那か?」

「正解! みんな集まってるね? いちおう点呼とっとく?」

「いや、必要無いだろ。それより、全然旦那だと分かんなかったぞ」

「ああ、なんかこの感覚久し振りだな。前の日替わり旦那を思い出すぜ」


 日替わり旦那は、一時期僕が毎日違う姿で過ごしていたときに言われていたあだ名だ。

 まあ、アジトでは全員顔を知ってるから最終的に知らない顔=僕となって、団長にやめさせられたけど。


「え!? この可愛い子、旦那なんですか!?」

「みたいだな」

「そんな……おっ可愛い子じゃんって思ってガン見してたのに、旦那だったなんて……」

「新入り君、ボコられたいの?」

「ひいい!? ごめんなさい!」


 すーぐそうやっていやらしい目を向けるんだから。

 今度そんな目で団長を見ていたらお仕置きだね。


「にしても旦那のそれ、ホントよく出来てるよなぁ」

「ストップ!」

「は?」

「それ以上、わたしに近づかないでね。君たちも」

「え、遠くね? なんでまた」

「だって…………ねえ?」


 だって嫌じゃん?

 あれに行ってきた直後の人達だよ?


「ごめん、生理的に無理」

「がーん……!」

「その姿で言われたくなかった……!」


 でもこれはしょうがないと思う。


「あれ? そういや旦那は一緒に行かなかったんで?」

「いや、俺らとは別行動だったな」

「じゃあ旦那とは意見交換できねえのな。結局どこの店が一番だったのかを議論してたん――」

「ストップ!」

「え?」

「わたしの前で、その手の話は禁止! 話したら刑罰ね!」

「ええ!? 良いところで話が止まってたのに! スイーツ班が行った店に居た女がぎゃあああああ!?」

「罰則です」


 罰則に引っ掛かりました。

 処罰を与えました。


「ど、どうしたんだ?」

「急に目の前に、すんげえ美人そうな……顔の無い女が……」

「どこを見て美人そうと判断したんだ……」

「ちくしょうなんてもの見せるんだ……何となく、今日の女と似ていた気がして、ダブって見えぎゃあああああああ!?」

「罰則です」

「今のでもアウトなのか……鬼かよ……」


 今日の女なんて言い方、完全にアウトでしょう。


「可愛い顔してなんてえげつねえ……俺、今日のこと思い返すたびに今のまで出てきそうだわ。せっかくのオカぎゃあああああああああ!?」

「当然罰則に引っ掛かりました」

「お前、今のはバカだろ」

「完っ全に頭に残ったわ。あの貴婦人然とした顔無し女の微笑みがよ……」

「どうやって微笑みが表現されてんだよ……」

「むしろ怖えわ」

「さ、君たちも『顔無し貴婦人』が見たくなかったら言葉に気を付けてね?」

「今の俺たちに、恐怖の女を見せるなんて……」

「あんた鬼かよ……」


 これで彼らも、変なことは口にしないだろう。


 ぞろぞろと連れたって、買い物に向かう。

 今回買うのは鉄の板や釘など、家具を増やしたり扉を補強したりするのに必要なものだ。

 他にも小麦粉や塩、衣類などの重くて嵩張る物を買っていく。


「んー、こんなとこかな?」


 取り敢えず必要な物は買ったかな?

 そろそろ帰ろう。


 姿を来たときの商人男性に戻して、門から出る。

 出るときは入るとき以上に検査が杜撰なものだ。あっさりと町から出られた。


 神輿を回収したけど、帰りは乗らなかった。

 彼らに近寄りたくなかったからだ。


 同じ理由で自分の荷物は自分で持って、森を進んで行く。


 帰りが遅くなったのはきっと、みんな重い荷物を持っていたからだと思う。

 けっして僕が、足を引っ張ったわけでは無いはずだ。



=====



 コン、コン、コン、コン。


 部屋の扉をノックする音が聞こえて、扉を開ける。


「ミルピィさま~」


 入ってきたのは子供の一人だった。

 最年少少女だ。


 正面に居た僕に、ハシッと抱きついてくる。

 団員には僕に許可なく触るなって言ってあるけど、この子は特別だ。


「ん? どうかした?」

「今日はみんないなくて、つまんなかったの」

「ああ。でも今は帰ってきてるじゃん」

「みんなへやに入って出てこないの」

「あー、さっきできなかった話をしてるんだろうねぇ」


 それならこの子をそこに行かせるわけにもいかないなぁ。

 教育上よろしくない。


「まあちょうどいいや。中に入って」

「うん」


 部屋の中に入れて、ベッドに座らせる。


「じっとしててね」


 そして、ブラシで髪を梳いていった。

 この子は少し癖っ毛だから、しっかりブラシしたほうが綺麗になる。


 髪を梳いている間大人しくしてるけど、やっぱり少し暇なのか足をぷらぷらさせている。

 こういうものはやる側は楽しいけど、やられる側はそういうものだ。もうちょっとだけ我慢してほしい。


「これでよし」

「おわり~?」

「ブラシはね。今日買ってきたものに君の服もあるから、これから試着するよ」

「はーい」


 今日買ってきたのはこれ!

 白のワンピース。僕の服のついでに同じ店で買ったから、ちょっと高めでフリル増量だ。


 服を脱ぐのが遅いから、手伝って着替えをさせる。

 ばんざーい。すぽーん。


「どーお?」

「おー、似合ってるよ。可愛い可愛い」

「えへへ~」

「アクセサリー欲しいね。もっかいここに座って」


 再びベッドの上に座らせて、髪にリボンを付ける。

 ついでに手首にシュシュを付けた。ワンピースと同色で、同じ質感のフリル。


 うん、なかなか。


「あ、靴だけなんか違うね。そういえば靴は買わなかったなぁ」

「これ、動きやすいよ?」


 機能美には優れているかもだけど、おしゃれ的にはバッテンだね。

 見るからに耐久性第一って感じ。あと安っぽい。


「まあ、今日のところは【虚像】でいっか」


 幻術で靴を変える。


「よし、完成」

「ミルピィさまどう?」


 ひらひらくるりと回って見せる。


「うん、ばっちし。団長にも見せに行こっか」

「うん」


 二人で部屋を出て、団長の部屋を訪ねた。

 団長はちゃんと部屋に居たようで、ノックをしたらすぐに出てきた。


「あら?」

「じゃーん!」

「じゃじゃ~ん」


 子供がおめかしした姿をお披露目。


「あらティール、とっても可愛いわね。どうしたのそれ?」

「ミルピィさまがくれたの~」

「今日買ってきた~。あ、靴は忘れたから幻術だけど」


 団長が褒めて、愛でてくれる。

 この子も喜んでくれたようで、僕としても嬉しい。


「可愛らしいけど、それ、高かったんじゃない?」


 ある程度可愛がったあと、団長がポツリとそんなことを言った。


 目を逸らす。

 はい、高かったんです。


「まあ、ミルピィ様のお小遣いから出したから」

「いや、別に構わないんだけどね? ただ、それ普段着じゃないわよね。こういった服を着る機会、ないんじゃないの?」

「機会? 部屋でいつでも着れるじゃん。ね~」

「ねー」

「部屋でしか着ないって、おしゃれする意味ないじゃない……」

「え、ミルピィ様はいつもそんな感じなんだけど」

「え、あなた部屋ではおしゃれしてるの?」

「してるけど?」


 今日も自分用の、買ってきたけど?


「そういうこと出来るなら部屋の外でしなさいよ……」

「それは無理だね」

「というか、それだけなら幻術でいいんじゃ?」


 目を逸らした。

 違うの。それ一人でやってると、ただ妄想してるのと大差ないの。


「まあ、この子ももしかしたら着る機会があるかもしれないし、女の子がおしゃれすることは良いことだから」

「そうね。それに関しては否定しないわ」


 団長は僕の意見に同意すると、おめかしした子の頭を優しく撫でた。

 笑顔のこの子が見れただけでも、服を買った価値はあったと思う。

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