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12話 その瞬間、ギルドに来たこと後悔したね

「おい聞いたか? バランドーゴの奴が盗賊に返り討ちにあったってよ」

「なに? 死んだのか」

「いや、身ぐるみを剥がされたらしい。パンイチだったところを他の冒険者に保護されたんだとよ」

「ブッ、そりゃダセえな! ん? でも返り討ちって、そもそも盗賊討伐の依頼なんてあったか?」

「それがよ、依頼が出る前に抜け駆けしようとしたらしいぜ」

「抜け駆け? 依頼が出てなきゃただ働きだろ」

「どうやら盗賊の宝を狙ってたみたいだぜ。あいつ、少し前にそれで儲けたことがあったろ。それで味を占めたようだな」

「ハッ! それで今度は身ぐるみ剥がされたんだろ? そんなん宝クジに当たった金で宝クジ買うようなもんじゃねえか。いや、それよりもひでえ」

「確かに、そう考えると笑い話だよな!」


 どうやら、どこかの馬鹿が盗賊の被害にあったらしい。

 自業自得とはいえ、冒険者が被害にあったのだからギルドも黙ってないだろう。これは近いうちに討伐依頼が出るかな。


「兄貴、売却終わりました」

「ん、ごくろう」


 お金が入った袋を受け取る。

 僕が情報収集中に、したっぱ君には昨日倒した魔物の素材を売るように頼んでいたのだ。


「君も何か頼んでいいよ。それがお昼ね」

「分かりました」


 もう少し情報を集めたかったから、したっぱ君にも座るように促した。


 だけど、勢いよく開け放たれた扉の音と、ギルドの中に入ってきた人物のせいで会話は途切れ、それ以上の情報収集はできなかった。


「誰か、医者を呼んでくれ……」


 入ってきた男は傷だらけだった。

 ここまで来るのがやっとだったみたいで、それだけ告げると床に倒れた。


「お前、コルキキじゃねえか! 誰か! 手当できるやつ連れてこい! それと医者を呼べ!」


 男の近くに居た冒険者が声を張り上げ、途端にギルドが騒がしくなる。


 何人かの人が医者を呼びにギルドを出て、受付のおばちゃんがやってきて応急手当を始める。同じ町の冒険者同士、知り合いが多い分連携ができている。


「呼ばれて来ました聖女です!」


 うげっ。

 バーンと扉を開けて入ってきたのは、僕の天敵。今会いたくない人堂々の第一位だった。


「この人【治癒】のスキルが使えるらしい! たまたま騒ぎを聞きつけて来てくれた!」

「聞いたことがある。どんな傷や病気も癒すことができる、リーベナゼル教会の聖女様か!」

「私が来たからには安心してください。この人ですね……」


 あの人、聖女なんて偉そうな人だったのか……。

 【解析】でスキルを調べたから、【治癒】と【真眼】のダブルホルダーだったのは知ってたけど。


 聖女はテキパキと怪我人の様子を確認すると、傷口に手をかざして【治癒】を発動した。


 おお、みるみるうちに傷が塞がっていく。

 結構深い傷みたいだったけど、数分で完治したようだった。


「ありがとうございます聖女様! お陰でこいつも助かりました」

「これもリーベナゼル様のお導きです。リーベナゼル様への感謝を忘れないようにしましょう」

「うっ……あれ、俺どうして」

「コルキキ、目が覚めたか。こちらの聖女様がお前のことを治してくれたんだ」

「え? 聖女様?」

「はい、私です。治療後は体力を消耗している筈ですので、暫くは安静にしてくださいね」

「うおっ、聖女様!? あああの、ありがとうございます!」

「あの、安静に……」

「へぶっ」(ズサー)

「「「コルキキー!!」」」


 怪我から復活した男が、目の前の有名人にテンパって跳ね起きて倒れた。

 まあ、怪我は治ってるわけだし大丈夫だろう。


「あの人、聖女様だったんすね。兄貴は知ってました?」

「いや、知らなかった。聖女自体を」

「ええ? リーベナゼル教会の聖女は有名ですよ。なんたってどんな病気や怪我も治すんすから。千切れた腕をくっつけてみせたのは有名な話じゃないですか」

「知らないものは知らないし。それより早くそれ食べてよ。あの人に見つかる前にギルドを出よう」

「――あ! ミールちゃん!」

「げ……」


 ばれたー。


 逃げようとしたけどもう遅い。

 あっという間に近づいてきて、ニコニコ笑顔で隣に座ってきた。


「ミールちゃん、ここの冒険者だったんですか?」

「ん……」

「そうなんですか! まだ小さいのにご立派ですね!」

「ん」

「あ、その袋を見るにもしかして仕事終わりですか? じゃあまだ時間大丈夫? マスター、おすすめの飲み物ください。三人分」


 こいつ……僕のコミュ阻害バリアーを物ともしない!

 しかも居座る気だ!!


「そちらの方はお仲間さんですよね。依頼も一緒にやってるんですか?」

「ん」

「ああ、この間は名前を聞いていませんでしたね。お伺いしても?」

「え、俺ですか?」


 話を振られたしたっぱ君が僕の方を見てくるけど、僕にはどうすることもできない。

 むしろこの聖女様をどうにかしてほしい。


「ええと、ターオズと言います」

「ターオズさんですね。改めましてハルクルファ・リークルです。よろしくお願いしますね」

「うす。こちらこそ」


 こらこら、よろしくやるんじゃない。

 やるなら追い払うくらいの気持ちでよろしくやってくれ。


 コトン、とマスターが出したのは桃ソーダだった。既に僕の好みを把握しているようだ。

 この店主、できる……!


「でも冒険者は危険がいっぱいですよね。尊敬しちゃいます」

「んー」

「あ、ミールちゃんが怪我したときは遠慮なく私に言ってくださいね! もちろんお代は要りません! 私とミールちゃんの仲ですからね」


 なんてったって天敵だもんね。


「そういえば、さっきの人のお代はいいんすか? 聖女様の治癒にはお布施が必要だとか聞いたことありますけど」

「今はオフなのでいいんですよ」

「え、そういうものなんすか?」


 お、したっぱ君が話を繋いでくれている。

 いいぞいいぞ、そのままその人の相手をしてくれ。僕に話を振られないようにね。


「普段は仕事なのでお金を貰ってますけど、オフの日に私が自由に自分のスキルを使っただけですから。仕事以外で自分のスキルをどう使おうと私の勝手ですよ。それでも軽く布教はしますけど、これはもう癖みたいなものです」

「でもそれだと、高い金を払った人が文句を言いませんか?」

「そうなんですよねぇ。でもですよ、私だって全ての人を治癒できるわけじゃありません。そんな中、彼らは高いお布施を払うことで優先的に治癒を得ているわけです。対してついさっき治療した彼は、偶然私が近くに居たので治療しました。要は、運が良かったのです。運も実力の内って言うじゃないですか。それでいて、財力もその人の実力の一つ。ほら、両方とも実力で手にしたってことですよ。手段が違うだけです」

「はあ……」

「だからですよ、違う手段について文句を言うのではなくて、その手段を持っていた自分を誇ればいいと思うのですよ。世の中私の治癒を欲していて、それでいて治療を受けられない人の方が多いんですから」

「そう言われると、確かにその通りかも」


 なんかこのままだと、したっぱ君が聖女の思想に染まってしまいそうだ。


 ……それ理屈こねてるだけで、自分の好きにさせろ、それに文句言うなって言ってるだけだから!

 でも僕までちょっと納得しちゃいそうになったからムカつく!

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