54話
黒髪とは言っても日本人ぽくは無い。
印象的なアンバーの瞳、整った顔立ちに少し気後れしてしまう。
「・・・ありがとう。よく知ってたね。」
「昔、少し教えられましたので。」
黒髪はそれほど珍しくない。黒目は珍しいのだが。
白く細い肢体に妖艶な笑み。目線はどうしても、開かれた胸元にいってしまう。
「ど、どこで教えてもらったの?」
こういった女性に過去を聞いていいのかよく分からない。でも勢いで聞いてしまった。
「今はもうない国です。お客様はエルシアの方だったと記憶してます。」
アカンぽいな。過去話は地雷を踏みそうだ・・・。
「そ、そうなんだ。ライリさんは――」
その後も必死に会話つなげようとする、自分の余裕のなさに嫌気がさしつつ、本題に入る。
「そ、そのー、この後一緒に、どうかな?」
「はい。精一杯ご奉仕させて頂きます。」
まぁ当たり前の話だが、お店っぽい言葉にあれだなぁと思いつつ、顔はにやけていた。
別途費用は5万。
意外と少ないと思ったが、王都の一般人の月収入が10万ほどらしいので、かなりいい値段なのだろう。
(まぁ飯代もぼったくられてるしな。)
あのめちゃくちゃ美味いバッファローステーキでも、1000コルトで食べれるくらい食品系は安いんだが・・・。
テーブル席を離れ、奥にある扉を開け暗い通路を歩いていく。
案内された部屋はベッドと小さな棚が一つあるだけだ。
「お風呂があります、入られますか?」
「あー、入ろうかな。」
ここの所、気絶落ちばっかりでまともに体を洗っていない。
「御一緒しますね。」
・・・
・・
・
お風呂は裏庭に設置されていて、石で囲まれた露天風呂だった。
他に利用客はおらず貸し切り状態だ。
「洗いますから、こちらに来てください。」
タオル一枚。しかも下しか隠しておらず、形の良い綺麗な胸が露わになっている。
茶色っぽい、泡立ちの悪い石鹸でゴシゴシと洗われていく。
「あうっ!」
ゴシゴシと洗われていく。
「はぁっ!はうっ!」
思えば異世界に来てから何日が経っただろうか。
ストレスに晒され続けた我が息子は、安息の時を迎えていた。
「はぁ・・・いい星空だなぁ・・・。」
「明日は晴れそうですね。」
満天の星空。
その絶景の下、美女と二人で風呂に入っている。
(まぁプロの方なんだけどさ。)
それでも久しぶりに安らぎを感じている。
「星が落ちてきそうだな・・・。」
ポロリと口走ったその言葉は、何かの童話の言葉だったかもしれないが、今まさに現実になった。
――パキ。パキパキ。パキパキパキャンン!!!
「はぁぁぁ!?」
・・・
・・
・
王都ティヨルの四方。魔法陣を囲む怪しげな集団が存在した。
『邪神様の復活の為。贄を捧げよ!血よ!魂よ!全てを捧げよ!!!』
「「「「オオオオオオオオオ!!!」」」」
――パキ。パキパキ。パキパキパキャンン!!!
「そ、空が割れた!結界が壊れたぞぉお!!」
「合図だっ、捧げろ!そうすれば俺たちも魔族になれるぞぉ!!」
ある者は自ら、ある者達はお互いに刃を向け合った。
「ギャアアア」
「グアアアァ・・・ハハッ・・・コレデ・・・オレモ・・・・」
魔法陣の上に横たわるいくつもの死体。
その血も魂も全て魔法陣に吸収されていく。
『本当に愚かだな。』
人間は。
そう言った人物は、深くかぶっていたフードを取り、歩き出した。
輝きを増す魔法陣。すでに術式は完成し止めることはできない。
歩き去った人物の瞳は赤い。爛々と赤く輝く魔法陣のように。
お読み頂き有難うございます。




