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53話


 闇の中から現れたローブの女。


僅かに発光する金髪など、血の様に赤い瞳の前では気にならいない。


 その手がミリアへと掛かる。


「なに!?」


その瞬間。


「油断しすぎだよぉ!!」


一閃。暗闇のなかで照らされるその一撃が、女の手を切り落とす。


 繰り出される追撃が女の体に叩き込まれる。


(動く!)


 加勢に入ろうとするが、すでに終わっていた。


「うーん?脆すぎぃ。・・・ホントに魔族ぅ〜?」


 そう言って倒れた死体を仰向けに転がす上司。


ピンク色の長い髪を頭の左右で結びクルリと巻いている。


作ったような仕草で首を傾げる。


「フィズさん、どうしてここに?」


 湾刀についた血を振り払う。


普段の女の子っぽい恰好とは違う。薄緑色の上下、上はベストにベルトには道具が揃っている。


「お仕事中だよぉ。ミレアちゃんが来る前から、監視してたのぉ〜。」


 そう言って指さす廃墟。その中から人が出てくる。


「もう中にはいません。地下から逃げたようです。」


地下道、戦争が絶えない時代の遺物、現在は下水施設として使われている。


「はぁ・・・。ミレアちゃんも今の任務は中止。こっちに加わって。」


 卓越した変装の技術を若作りのために費やす上司は、真剣な表情で任務の変更を告げる。


「やっぱり邪神教だったみたい。どうやって魔族を結界の中に入れたのかなぁ〜?」


 急に変更となった任務。


宿にいるであろう黒髪黒目の男が心配してしまうだろうと、少し申し訳ない気持ちが湧いていた。



・・・

・・


>合成に大成功しました。


「ウホッ!?」


 【異界の錬金術師】のレベルが上がったおかげか、僅かに合成の成功率が上がったような気がする。


魔力を手に集め、素材に向けて『合成』を行っていると、そんなアナウンスが脳に響いた。


 一際強い光を放ち残ったのは、1本の赤い液体の入った瓶。僅かに輝いてる。


―――――――――――――――――――――――――

錬金アイテム:中級生命回復ポーション

ランク:レア

飲む又はかけることで対象の生命力を徐々に回復させる。

回復量が多く、骨折や血液も回復するが。

部位欠損には効果はない。

ランクの上昇により効果増大。

―――――――――――――――――――――――――


 合成に使う素材をアンコモンで揃えればランクはアンコモンができるのだが。


「大成功でランク1UPってとこ?」


アンコモンの次がレアなのか分からないが、恐らくそうだろう。


「ラックポーション・・・ダメだ素材がない。」


 運の値が影響しそうだと考えたが素材がなかった。


外は暗くなっている、ミレアも委員長達もまだ帰ってきていないのか?


「行くなら・・・今しかない。」



 外を一人で歩くのは危険だが、チャンスは今しかない。


現状唯一の武器である棍棒を腰につける。武装してると思わせたほうが安全だろう。


「いざ行かん、歓楽街!」



・・・

・・


 篝火が焚かれる大通り、なるべく人の多い道を通っていく。


夜の独特な匂い。目的地に向かう人々も個性的だ。


楽し気に談笑しながら移動する4人組の後に紛れる。


「しかし、新しいダンジョンか。大丈夫なのかね?」


「騎士団の精鋭と高ランク冒険者。それに勇者様も向ったらしいぜ!」


「勇者様かっ!なら一安心だなぁ!ははっ。」


「まぁどっちみち、結界の中には入ってこれんさ!」


 話題は新しいダンジョン、それと勇者のことで持ち切りだった。


 街並みが少し変わってくる。魔道具の明かりに溢れ、道で立ち止まる人が増えてきた。


(ど、どうしようかな・・・。)


きたのはいいが、どの店に入ればいいか分からない。


時代劇の遊郭のように、薄着の女性が檻に入れられている。とはいっても縛られたりとかはないが。


 それらとは別に客引きをしている人もいる。


「お兄さん!いい子いるよ!どう?どう?どう?」


 なんの獣人だろうか、背が低くタレ目がちの丸い瞳、愛嬌とも言えなくもないが少しうざい。


丸い耳をピコピコしながら、近づいてくる。


「どんな店なんだ?」


「おや!お兄さん初めて?ならうちはお勧めだよ!まずは女の子とお食事して、気に入った子とそのまま休憩出来ちゃう!!」


 道のど真ん中だというのに、大げさな動作でそんなことを宣伝する。


そう言えば飯もまだだなと、他にどこにしてもいいか分からないので、決めてしまおう。



 もっと慎重に行動しよう。この間そんなことを思ったはずなのに・・・。


「高っ・・・。」


 フルーツ盛り1万。ステーキセット 3万。 高級果実酒 5万。


ぼったくりか!?と思ったが安いメニューもあった。


食事の頼んだ金額で女の子のグレードが決まるようだ。


他のテーブルの客に食事を出すこともできるようで。


 見栄をはらせ競争意識を煽る戦略か?


それで綺麗なおねぇちゃんが席につくなら、たしかに効果はありそうだ。


「休憩の値段は女の子と相談してね!」


別途費用が掛かるらしい・・・。



「高級果実酒とフルーツ盛りとステーキセットもってきて。」


次いつこれるか、こんなチャンスがまたあるのか、とりあえず羽目を外すことにした。


 料理と共に女の子もやってくる。


すでに広いテーブルには色とりどりの果物が並び、夜の蝶達も席についている。


「すごーい!お客さんお金持ちだね!!」


 化粧の濃い花魁さんがテンション上げてるが、いまいち・・・ピンとくる子がいない。


タバコを構えても火を点けてくれない・・・。


「失礼します。ライリです。」


 ショートヘアの女性。白雪のように色素の薄い肌、細い腕、首元が露わになる黒のドレス、鎖骨が余計に色っぽい。


耳に髪を掛ける仕草が色香を漂わせる。程よい大きさの胸が近づいてくる。


「どうぞ。」


 そう言ってタバコに火を点けてくれた。


「ふぇ?」


えっ、と思わず呟きが漏れた。


 黒髪の女性は僅かに微笑んでいた。










































お読み頂き有難うございます。

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