6話
「こちらです。」そう言った王女の後を、ゾロゾロと生徒たちがついて歩く。
王女の歩く先、洞窟の終わりが見えてきた、ドッドッドッと水が勢いよく落ちる音がする、
近くに滝でもあるのだろうか、
「うわっ」「おおぉ」「ひゃー」
先頭を歩いていた生徒達から声が漏れる、洞窟を抜けた先には、やはり滝が流れていたのだが、
そんなことよりも、怪物がいた。
大きい、全体は象くらいの大きさをしており、顔は鷹のようで、大きな翼を持ち、下半身は獣、
筋肉質でいてしなやかな、ライオンのようだ。
全力で逃げたとしても、刹那にあの鋭い鈎爪で引き裂かれ喰われるだろう。
(あぁ・・・帰りたい、ほんと帰りたい・・・)
生まれて初めて見る魔獣、それも高ランク、王女がいる為か、
殺意は籠っていないが、それでもその重圧は、容赦なく心をへし折る。
(無理だ、この世界は、俺にはほんと無理。)
ガチガチと震えながらタバコを口に運ぶが、ガイラスに止められる。
「刺激しないほうがいい。」
ガイラスの声で少し落ち着く、不思議な感じだ、・・・決してそういった趣味があるわけではない。
野生動物はタバコの煙を嫌うし、火もよくないよな・・・かなり動揺していたようだ。
はぁ・・・今日はもう何度目か判らない溜息を吐く。
「このグリフォンは、この森と洞窟を守護している召喚獣です。
危害を加えなければ襲ってきませんので、安心してください。」
「こんな怪物に睨まれて、安心できるわけないだろう。」そう愚痴を零しそうになるが、ぐっとこらえる。
それにしても、グリフォンか・・・、元の世界じゃ伝説の生物だったんだが。
「この世界では普通なんですか?アレ・・・」
「グリフォンはAランクの魔獣だ、普通とは言わないな。
グリフォンを召喚した召喚士も、すでに亡くなっているが、盟約に従いこの地を守護してくれている。」
なかなか義理堅いんだなと、グリフォンを見る、・・・まぁでもやっぱ、怖いよね。
召喚士の死んでる、召喚獣って、大丈夫なのか・・・?
・・・
・・
・
グリフォンの背に乗るような、イベントもなく、森の中を歩いていく、
元の世界では見たこともないような、植生が目に入る。
それほど詳しいわけではないが、螺旋状に育つ幹や、黄金色のキノコ、
赤、青、黄と3原色で彩られるイボイボの実が垂れ下がっている果樹など見たこともない。
「この森は限られた者しか入ることが許されませんので、森の恵みが豊富ですね。」
王女が生徒達に、色々教えてくれている、森の知識や植物の名前など、意外と博識だ。
教師としても、すでに俺より人気者だ・・・この世界で俺に教えれることなんて、何もないしな。
柄にもなく、嫉妬しているのか、もしくは逃げ出す言い訳ができて、安堵しているのか。
その答えに意味なんてないのだろう、俺が変われるはずなんてないのだから。
お読み頂き有難うございます。
まったり進行ですが、よろしくお願いしますm(__)m
※ガイアス→ガイラス 修正しました。