50話
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さてこの尾行者は誰に用なのか。俺かミレアか赤髪の女か。
「ちょっと聞いてますの?私の派閥の拠点へ招待していますのよ?」
光栄なことなのよ!と、名乗りもせずに偉そうな奴だ。
この女の扱いに困っていると、前方から怪しげな集団が現れた。
こんな白昼堂々に襲ってくるのか?と、この前のゴロツキを思い出しながら身構える。
「これはこれは、イーナ嬢がいるということは、やはりそちらの男性が『深淵の錬金術師』の後継者のようですね。」
後ろからも人が姿を現し、囲まれてしまう。・・・なんかおかしな事を言ってた気がするが。
「ニコラス・デリコス・・・こちらの方とは私が先約でしてよ?ですから――さっさとその汚い顔を洗いに行ったらどうかしら。」
どうやら知り合いのようだが。
とても仲の良い知り合い同士の挨拶ではなく、赤髪の女からは殺気が漏れている。
ニコラス・デリコスと呼ばれた男は、若そうに見えるが白髪で銀色の瞳、顔は整っておりイケメンだ、汚い顔という表現には合っていない気がするが。
ロングブーツにグレーのズボン、紺色のシャツの上から白衣ではなく、仕立ての良い白のコートを着ている。
襟を立たせ、胸元につけた銀細工のアクセサーが決まっている。
「おやおや、まだ以前のことでご立腹のようですね。ケツの――おっと、女性に使うべき言葉ではありませんね。」
この世界でも、尻の穴の小さい、という慣用句があるのだろうか?
そんなどうでもいい感想をしていると、囲んでいた者達が近づいてくる。
「手荒な真似はしたくないんですがね。少し拠点で話を聞きたいだけなんですよ。」
そう言う彼の顔はニッコリと笑っているが、感情の無い銀の瞳がこちらを貫いている。
「っ・・・」
鳥肌。
冷や汗が流れ、気分も悪くなってきた。
人を話に誘うのに集団で囲むやつに、まともな話合いなど期待できない。
(どうする!どうする!?)
焦り、握る手に力が入るが、自分にできることなど限られている。
もっと慎重に行動すべきだったと思うが、後の祭りである。
周囲に不思議な感覚。魔力の高まりによる魔素の波だ。
熟練の魔術師であれば、漣程度に抑えられるソレも、感情の昂った彼女のソレは目に見えるようだ。
「いい加減にしてくださらないと、その汚い口が聞けなくなくるまで、蹴り上げますよ?」
僅かに発光する真紅の髪を上げながら、鋭い眼光を向けるイーナ。
何処をと聞きたくなるが、変態以外はきっと喜ばない場所だろう。
赤髪の女が本気だと悟ったのか、ミレアのほうを一瞬伺った白髪の男は、囲んでいた男達を下がらせた。
「ふむ。これは少し面倒ですね。・・・今日は引きましょうか。」
意外なほどあっさりと引き下がる白髪の男。また逢いましょう。そう言い残して去っていった。
緊張が解けたのか、溜息を吐き辺りに人がいないことに気付く。
先程の男が人払いでもしていたのだろうか?
「あの男には近づかないほうがよろしいですわ。本当のクズですから・・・。」
発光していた髪も治まり、去って行った男の悪態をつく。
あの男がヤバそうなのは解るが、なんとなくだけど、個人的私怨を感じるね。
「邪魔が入ってしまいましたが・・・、私の拠点へ参りましょうか!」
なんとなくだけど・・・断りずらい雰囲気である。
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