49話
目を覚ませば知らない天井。・・・いや最近はよく見ているな。
「大丈夫ですか?」
ベットで寝ているこちらに目線を合わせ、前屈みになったおかげで胸元が露わになる。
垂れる銀の髪を耳に掛け、青い瞳をこちらに向けるミレアは、女性特有のいい匂いがした。
「っ・・・。加減てものを知らないのかあいつ・・・・・」
今だに痛む腹を押さえ、この元凶をもたらした生徒がいないか確認する。
部屋の中にはミレアと二人きりだ。ベットから起き上がりキョロキョロと不審な動きをする。
やはりまだ美人と二人というのは慣れない。
「綾香様とポチは買い物に出かけました。勇者様方はダンジョンへと向かわれました。」
外を見ればまだ日はそれほど高くない。気絶時間もそれほどではなかったか。
勇者君も来てたらしい。まぁ特に用はないけど。
「・・・」
会話が終わってしまった。狭い部屋の中、二人きり。
「・・・出かけようか。」
「畏まりました。」
無駄に意識する自分が嫌になる。歓楽街にでも行こうかな・・・。
・・・
・・
・
とりあえず錬金術師ギルドに行き、魔力を帯びた樹液に関する情報を集めることにした。
錬金術師ギルドに入ろうとするところで、ミレアが路地のほうを警戒していた。
「どうかした?」
「・・・いえ、気のせいのようです。」
気になるが、オシャレな銀細工の施されたドアを開け中へと入る。
ギルドの中には数人が掲示板に張り出された依頼をメモしている。
ガラスのショーケースやコレクションケースに置かれている品も気になるが今回は情報収集だ。
「こんにちは。今日は素材の情報を見せてほしいんだけど。」
「これは・・・ツトムさん。畏まりました。二階に上がり受付の者にギルド証を見せてください。ランクにより閲覧できる情報が限られますので。」
なんて名前か忘れたが、赤いループタイをつけたこの前の青年に声を掛けた。
ランクによる閲覧制限。・・・考えてなかった。
この間作ったばかりで当然最低ランクのF。
二階へと上がり、受付らしき人物に声を掛ける。
「こちらが、王都周辺の素材の情報ですね。それとパルマダンジョンの素材情報はこちらです。」
そういって渡された厚手の革のカバーが付けられた本が2冊。
「ランク制限とかは平気なのか?」
「はい、基本的な物に関してが多いですから。ダンジョンの深層や危険な素材は載っておりませんので。」
持ち出しは禁止らしいので、備え付けの椅子に座り本を机に開く。
欲していた情報は割とすぐ手に入った、まぁ恐らくだけど。
ダンジョンの中には魔力を多く含んだ石や果実、それに樹液などがある場所が存在する。
それらは、そのダンジョンにおけるモンスターの餌だ。
故に見つけても近寄ってはいけないと、注意書きがあった。
(魔法のインクは魔術師ギルドの生産品なんだよな。単純に知らないだけかな。)
ダンジョンの地図もあったのでメモしておく。
他にも色々興味深い情報もメモし2階を後にする。お腹の空き具合からお昼ぐらいだろうか。
瓶が無くなってしまった事を思い出したので、購入するため青年に声を掛ける。
「すいません。ポーション用の瓶が欲しいんですけど。」
「はい、一瓶200コルトです。現在下級生命回復ポーションと解毒ポーションの買い取り額を上乗せして、依頼として出していますのでよろしくお願いします。」
そういって掲示板を指さす。まぁダンジョン騒ぎのせいだろうな。
「分かりました。ではこれ、お願いします。」
ある程度ランクは上げといてもいいかなと思うので、ここで少し売っておこう。
出した後に思ったが、全部アンコモンだが売って平気なんだろうか。
「え?」
あ、ダメっぽい。
冒険者ギルドの時と同じく、ガラス棒っぽいので調べていたのだが、固まってしまった。
「・・・」
「ちょっと、そこのあなた。お話しよろしいかしら?」
そんな声が後ろから掛けられる。
勝気な声、振り向けば真っ赤な髪の女がそこにいた。
黒のズボンに黒のインナーその上から白衣を着ている。ウェーブがかった髪は白衣に掛かるほど長い。
赤茶色の大きな瞳をさらに大きくし、情熱的というよりは好奇心に満ちた瞳を向けてくる。
「な、なんですか?」
ぶっちゃけ苦手なタイプだ。
「そんなに警戒されなくても大丈夫ですわ。少しお話がしたいだけですから。」
だったらその目をやめて欲しい。肉食動物に見詰められる小動物の気分だ。
「これは・・・イーナ様。ど、どうされたんですか?」
フリーズから復活した青年の顔は青く、赤い女性を見かけると冷や汗を流し始めた。
「先日、ギルドから通達のあった人物に興味があったので、見に来ただけですわ。」
その言葉に青年はさらに顔を青くする。
「通達って?」
「派閥に入れるな。錬金術師にとって絶縁状のようなものですわね。」
ほう?そんなことをしていたのか。まぁ十中八九エロ爺の差し金だろう。
固まる青年を放っておいて、ギルドを後にする。
「それで・・・話ってのは?」
「あなたに興味があるんですの。」
それが勿論男としてではなく、錬金術師としてなのはすぐにわかるが。
「そ、そうですか。なかなか積極的なんですね。ただ今は・・・恋人は募集していません。」
困ったように頭を下げれば、目をパチクリさせ声を荒げる。
「は?そ、そういう意味ではありませんわ!」
髪の色と同じくらい、赤くなっていく顔。
なぜかほとんど人はいないが、路地で大声をだしたことに気付いたのか。
「場所を変えませんか?」
「分かりました。では俺の部屋にいきましょう。」
眉を寄せ睨まれる。少し調子に乗ったか。
「ツトム様。」
ミレアから少し強い口調で声を掛けられる。アレ、ヤキモチですか。
「尾行られています。」
まぁそんな訳もなく、厄介ごとの予感だ。
お読み頂き有難うございます。




