SS ミレア ①
ミレア視点のダイジェストみたいになってます。
最初と最後だけでもいいかなと思いますが。
全部見て頂ければ幸いです!
私はミレア。親の名も顔も知らない。
父親は冒険者だったそうですが、迷宮で死んでしまったようです。
生まれて間もない私は孤児院に預けられ、5歳になり天職を持っていると分かると、騎士団に引き取られて行きました。
母親?父親が死んだ後、すぐに他の男の所にいったそうです。そうなれば私は邪魔でしかないでしょう。
怨んでいるか、ですか?
騎士団の訓練は厳しく、所属する部署の為か、筆舌しがたい行いもさせられました。
人の暗い部分、人間の闇の深さについて知ってしまった今では、母親が私を手放してくれたことに感謝すらしています。
天職を持っていた私は、訓練と実践を繰り返し、あらゆる任務を遂行してきました。
順調な日々を過ごしているけれど、満たされない心。
どんなに表情を作ろうとも、同年代の女性の様な明るい笑顔を作ることはできません。
私の人生は名も顔も知らない母親より不幸せなのでしょうか?
・・・
・・
・
「ミレアちゃん次は、『コレ』着てねー。」
そう言って飄々とした上司は、私に給仕服に似た何かを渡してきました。
「これは?・・・次は遊郭にでも潜入させるつもりですか?」
少し殺気をだし、私なりの笑顔で質問します。
「いやいやいや!?陛下直々の任務ですよぉー。お願いだから、ねっ?そんな怒らないで〜。」
自分の歳を考えない上司の言動と動作に苛立ちを覚えますが、歳のことは言わないでおきましょう。怒ってしまうので。
面倒な任務なのでしょう。貴族や他国の要人、どれも面倒です。
最後に始末できる任務じゃないと、おっと、失言でしたね。忘れてください。
与えられた衣装に身を包み、羊皮紙の書類に目を通します。
任務としては護衛任務ですか、ただし異世界人の・・・。
勇者と共に呼ばれた異世界人、かつてこの国に稲作と闘技場、賭博場等々と好き勝手に変革をもたらした存在。
大変気難しい上に、天職に祝福、その上、特殊な力を持つこともあるのだそうです。
「なんでも異世界人のおもてなしには、その服が必須らしいよぉ?」
そう言って着こんだ衣服を指さす。
黒と白の給仕服、ただし胸と背中は露出しスカートが膝上までしかない。
「ショーツは、はいちゃいけないみたいなの〜。それにコレもつけてねっ!」
そう言って頭にヘッドドレスのような、白いフリルをあしらった物を装着する上司。
「この丈の短さで穿かないのですか?本当に?」
上司の相変わらずのウザさに苛立ちを覚えるが、本当に穿かないのでしょうか?
たまに笑えない揶揄い方をしてくるので、用心しないといけません。
「本当だよぉ〜。はいっ、コレもちゃんとつけてー。」
姿見に映し出された次の任務の衣装。
「可愛いよ!ミレアちゃん!!」
私はひょっとしたら不幸せかもしれない・・・。
・・・
・・
・
勇者様と異世界人の方々が集まる広間の隣の部屋で、給仕服や執事服に身を包んだ使用人が待機していました。
ヒソヒソ・・・・。
ザワザワ・・・。
明らかに他の人達と一線を画す私は浮いていました。
任務でこんな思いをするのはいつ以来でしょう・・・。
部屋の扉が開かれ、中に使用人が入っていっただけだというのに、割れんばかりの歓声が上がりました。
――幼い。
最初に目が行ったのは勇者様、圧倒的な聖の魔力を持つ人物。
ただし、とても幼く見えた。背格好だけでなく、その全てが。
他の異世界人の方々も子供ばかり、伝承とはあてにならない物のようです。
私がお世話するのは、成人の男性のようです。もう一人、成人の男性もいたそうですが投獄されてしまったようです。
黒髪黒目、仕立ての良い不思議な服を着ている線の細い男性。
「本日よりお世話せて頂きます。ミレアと申します。宜しくお願いします、ツトム様。」
恐れ多くも、国王陛下を睨みつけているその男性に挨拶を交わしました。
・・・
・・
・
異世界人は気難しい。
特にそんなことはなく、ただの使用人だというのに逆に気を遣ってくるほどです。
胸をチラチラと、後ろを向けばお尻ばかり。
その辺はこの世界の人間とあまり変わらないようですね。
「さようですか、何かございましたら、なんなりとお申し付けください。」
部屋を案内し二人きりとなってしまいました。
『異世界人の男性って性欲が強いらしいから、お手つきされちゃうかもしれないけど、我慢してねぇ〜。』
上司の軽い口調の発言を思い返し、苛立ちます。
とはいえ、こちらの都合で、無理矢理異世界から呼び出されてしまった人。
その苛立ちをぶつけられるかもしれませんね。
「あのー、出来れば一人にさせて貰いたいのですが・・・」
汗を流しながら頭をブンブン振り、我慢していたのでしょうか。
思わず笑ってしまいそうでした。
「黒くて、硬くて、苦いですか・・・」
悪魔の飲み物をご所望とはなかなか難しいご要望です。
図書室で熱心に本を読んでいらっしゃると思えば、コーヒーを錬金術で作ろうとしたそうです。
そんなに美味しい物なのでしょうか?
・・・
・・
・
「街に行きたいんだけど!」
そんなご要望にお応えし、王都ティヨルの市街地観光が始まりました。
王都の治安は良いとはいえ、少々不安な人員構成です。
ツトム様も綾香様も、まったく争い事には慣れていないそうです。
武器を携帯することを疑問に思うくらいですから。
さすがに街にあの恰好でいくのはマズいので、一般的な服装へと着替えました。
紺色のズボンに灰色のシャツとベストと冒険者の様ないでたちです。
それでもツトム様の視線は相変わらずですが。
人々が行き交う大通り、人族以外が珍しいのか好奇な視線を向けている。
「狼人族の冒険者か傭兵でしょう。あまり刺激しない事をお勧めします。」
理解してくれたのか、青い顔をしながら頷いていました。
市場、雑貨屋、素材屋と錬金術に関して情報を集めていたようです。
錬金術師ギルドに所属せずやっていくのは難しいと思いますが、何か考えがあるのでしょうか?
その後、人々の波につられ闘技場へとやってきました。
次々に賭札を買う、その目はダメな人間の目をしていました。
そして最後の大一番。ニヤニヤ笑いながらボソボソと呟いています。気持ち悪いです。
「・・・クク、やっぱこうだろ・・・」
そう言って、賭札を買うとき係員と分かり合った表情をしていたのが印象的です。
・・・
・・
・
不思議と一度も負けず、大勝したようで上機嫌です。
そして私は少し失敗してしまいました。
「へへ、にーちゃんだいぶ儲かったみたいじゃねぇか、ちょっと分けてくれよ!」
暗い路地からゴロツキが4人姿を現します。
服装、動き、魔力の淀み。どれをとっても素人です。
闘技場などの近くは警備兵なども多く、裏家業の人間が襲ってくることはまずないでしょう。
ですが、ここまで無警戒で接近を許してしまうとは・・・。
お二人の空気に呑まれたか、少し気が緩んでいたようです。
ブツブツ言っていたツトム様は、バットを取りだし不思議な構えを取っていました。
この程度の相手なら一人でまったく問題ありませんが、少しお二人がどの程度動けるのか見ておきたい所です。
一瞬、綾香様がどこにいるのか判らなくなりました。・・・何か特殊なスキルをお持ちのようです。
「HIT!HIT!HIT!」
的確に石でゴロツキの急所を打ち抜きます。素晴らしい腕です。
「くそがああ!」
雄叫びを上げこちらへとやってきます。仕方がないので軽く打ち込んでおきましょう。
顎の先を掌底で打ち抜きました。目覚めた後は最悪の気分ですが、死ぬよりマシでしょう。
「ミレアもありがとう。」
緊張していたのか汗を掻きながらそう言ってきたツトム様。
任務でお礼を言われたことは無いので、不思議な感じですね。
・・・
・・
・
翌日には今度は賭場へ。朝から賭場とは何を考えているのでしょう?
それでもまた勝ってしまったようです。少し負けた方がいいと思いますよ?
「なぁ奴隷商店?ってある?」
賭場から出てくればそんなことを聞かれました。
この国での奴隷の種類は、借金奴隷か犯罪奴隷しかありません。
他国の戦争奴隷が借金奴隷として、この国で売られることはありますが。
まぁこの話はあまりしたくありませんね。
ツトム様の話を聞く限り、あまり会わせたくありません。とても酷い状態でしょうから。
綾香様の機嫌もよくありませんし。
それでも奴隷商館に行くことになってしまいました。
「買います。」
何を考えているのでしょうか? 一度頭を割って覗いてみる必要がありそうです。
ボロ雑巾のような獣人の奴隷、しかも2本しかない腕が2本無く、貴族がらみのいわく持ちです。
頭がおかしいとしか思えません。
しかも、どうしてそんな辛そうな顔をするのでしょう?
・・・
・・
・
錬金術師ギルドへとやってきました。
またも問題発生です。まぁこの老人は悪い噂しかないので懲らしめてあげましょう。
「なんじゃと・・・!?」
印の効果は絶大で、私の笑顔を向けてあげれば完璧です。
機嫌の悪かった綾香様も、帽子を被りご機嫌なようです。
風呂へとよった帰り道。覗いてる者がいます。
前回のような素人ではなく、本業の者のようです。
夜の帳が落ち、完全な暗闇が辺りを覆いつくす中。
監視者に気付かれないように背後を取ります。
「なにが、帽子盗ってくるだけの簡単な任務ニャ・・・、あんなのがいるなんて聞いてないニャア。」
どこの犬のものかなと思えば。
『ネコ』
紛らわしい。ポチで十分です。
「ギニャ・・・」
・・・
・・
・
怪しい獣人を連れて帰れば何か言われるかなと思いましたが。
「うわ!フサフサっ!もふもふーーー!!」
「にゃあ!やめるにゃああ!!」
綾香様の機嫌も絶好調のようで問題ありませんね。
ツトム様はまぁ大丈夫でしょう。
「ワンでしょう?」
ポチには言い聞かせてあります。
『悪戯猫には死を、忠実な犬には生を』
問題ないでしょう。
「ワン!ワワン!!」
・・・
・・
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その後も色々ありましたが、ついに王都を出てダンジョンへと行くようです。
なのですが・・・・・。
「死ね!変態!!」
「ぐはっ」
テーブルを吹き飛ばしながら、壁に激突するツトム様。
拳に纏う輝く魔力、よく練られています。
魔闘術と呼ばれる、使い手の少ない危険な技です。
レベル1の錬金術師が耐えられるでしょか?
「ツトム様!?」
勇者様御一行、知り合いに近況を報告していたのですが。
どうやら、初めての任務失敗かもしれませんね・・・。
・・・
・・
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「ウググ・・・まだまだ・・・死ねんよ・・・」
意外としぶとい。ベットで横になり寝言を言っている黒髪黒目の男。
戦いなどとは程遠い、傷一つない顔。鍛えられていない線の細い体。
「・・・ミレア・・・」
胸やお尻ばかり見ている、本人はバレていないと思っているかもしれないけれど。
「はい?なんでしょうか、ツトム様?」
赤い眼鏡を取ると、意外と可愛げのある顔をしている。普段は何か考えすぎなのか眉間に皺が寄っていますが。
「・・・おっぱい・・・」
寝言ですよね、ツトム様?
お読み頂き有難うございます。




