44話
エルフを見かけたことは何度かあるが、この女性は特に容姿に優れている。
僅かに光っていた髪は落ち着き、金糸のような長い金髪がサラサラと揺れて。
神秘的なエメラルドの瞳に、整いすぎた顔立ちがエルフっぽい。
「すまないね、ジーノは美人に目がないんだ。」
こちらに歩みよると、意外とおしゃべりでジーノのことを語りだす。
「そうさ、私と会った時も――」
「だぁあ!なにを喋ってんだお前はっ!!」
どんな恥ずかしい過去話が出てくるのか楽しみだったが、巨漢の大剣使いに遮られた。
・・
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「申し遅れたね、私はハルメリア。ただのハルメリアさ。」
「俺はジカルノ・スタンクラーク、ジーノって呼んでくれ。」
二人にともなってこちらも挨拶を交わす。
人々が街へ逃げ帰ってきたので、急いでこちらにやってきたらしい。
「『大炎剣のジーノ』。なかなか有名人がでてきたニャ。」
ポチが目を丸くさせ、ジーノを見詰めながら中二臭い二つ名を暴露する。
「AランクPT『エルフと野獣』の方でしたか。」
なんか嫌なチーム名だな。
「しかし、こんなところにアンデットとは一体?」
そう言いながら死体を検分し始めるハルメリア。
しかし魔物は煙を上げ消えてしまった。その場には赤い石が残った。
「ダンジョンの魔物かっ!」
ダンジョンの魔物は死体が残らず、煙となってダンジョンに消えていく、その場には魔石が残るらしい。
「しかし、この辺りにあるパルマダンジョンは森林型だろう?」
アゴに手をやり考える仕草をするハルメリア、エメラルドの双眸を閉じ小首を傾げる。
その姿は女神のように美しい、・・・女神に会ったことはないが。
「エルフはやはり貧乳なのですね。」
委員長からは謎の感想がでてきた。
「とりあえず、ギルドへ行こうぜ。なんか情報入ってきてるだろ。」
ジーノの提案に反対意見はなく、魔石を回収してギルドへと向かう。
街へと戻ってくると、大通りはいつも通り喧噪に包まれている。
ただその中には動揺の声もあった。逃げ帰ってきたのか、身振り手振りで状況を説明している者もいる。
情報を聞きつけたのか、冒険者ギルドの中には多くの冒険者が来ていた。
「先程、国から緊急依頼が発生しました。パルマダンジョンの氾濫、新規ダンジョンの発生。それに伴う鎮圧任務です。」
ざわっとギルド内が騒がしくなる。ギルド職員の男性は構わず続ける。
「パルマダンジョンの外にある砦は壊滅、新規ダンジョンから出てきたアンデットの魔物と、挟まれる形になってしまったようです。」
騒めきが強まる。砦の壊滅、馬で逃げてきた人物はそこの生き残りだろうか。
入口の所で話を聞いていると。
「新規ダンジョンはアンデット系らしいな。」
腕を組みながらジーノが呟く、どこか嫌そうな顔をしている。
「そうなると、チャールズが抜けたのは痛いね。」
ハルメリアが呟きに答える。その表情はヤレヤレといった感じだ。
「おい。あれ、『大炎剣のジーノ』だろ?」
「ほんとだ!それに『語り精霊』もいるじゃねぇか。」
こちらに気付いた冒険者が二人の噂話を始める。にしても・・・。
「『語り精霊』って?」
「こいつ見た目と違っておしゃべりだろ?それに酒が入ると口が軽く、ペラペラ一人で喋ってるんだよ。人の恥ずかしい過去とか・・・。」
どこか遠い目をしながら諦めた表情をする。
「ふふ、なんなら今日は一緒に飲みにいくかい?」
僅かに微笑み、揶揄うように誘ってくる。思わずドキッっとする、そんなこと言われると期待しちゃうよね。
「報酬は高額を用意します。まずは斥候として、調査任務の為の人員を募集しています。」
声を張り上げながら、ギルド職員が募集するが、なかなか集まらない。
砦が崩壊するようなところに、行きたくないということかな?
「それもあるがなぁ・・・。アンデット系なんて旨味がないしな。」
毒とか臭いとか最悪だし。と付け加えるジーノ。
「うちのPTも今二人しかいなくてな。斥候も神官もポーターもいねぇ・・・。」
顔に手を当てながら、はぁと溜息を吐く。なんでそんなことになったのか聞けば。
「勇者召喚が行われたらしく、神官はクラメイアから呼び出し。獣人の斥候は故郷が心配で帰郷したし、ポーターは居なくなってしまってね・・・。」
「お前があんなことするから、夜逃げしたんだろうが・・・。」
なんでもポーターの男性の、クサイ口説き文句を一言一句歌にしたらしい。
「ふふ、『俺のアレは、エルフ男とは比べ物にならないぜ、ハニー。』なかなか情熱的な歌詞だったね。」
下品な言葉を口にしながら妖艶な笑み向ける。
肌の色は白く、細身のブーツにズボン、しなやかな肢体が強調される。上着はジャケットのような、白を基調とした軽装で控えめな胸を隠している。
輝く銀は恐らくミスリルなのだろうか、身長程ある杖の先端中央には宝石が付けられている。
なんというか、見た目と性格のギャップがかなりあるのに、全然萌えない・・・。
「はぁ・・・最悪、解毒ポーション使うしかねーな。俺らには強制依頼がくるだろうしな。」
解毒ポーションか、ぜひ鑑定しておきたいな。
「すみません、ツトム様。お時間よろしいですか?ご依頼の品が届いております。」
そう言って近づいてきたのは、この間の受付嬢のローザだった。
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