SS バスガイドと少年 ③
エルフの集落へやってきて一週間が経った。
同時に、異世界に来て1週間が経ったということだ。
「ほら!集中を切らすな!シッ!」
「グッ!!」
木剣とはいえ全力―もちろんアーサーは全力ではない―の打ち合いを、防具無しでこなしていく。
大振りになった所を、鋭い突きが腹に決まる。
膝を突き乱れた呼吸を直していると、弓を持ったエルフが近づいてくる。
「・・・次は弓の訓練だ。」
「・・・」
休みなどなく、シークによる弓の訓練が始まった。
インドア派だった僕には、肉体的にも精神的にも厳しい。
アズサはエルフ女性たちと混ざって、昼食の準備をしている。
集落に来てすぐは、かなり警戒されていたのだが。【異世界言語】のおかげで、なんとか信用してもらえた。
それにアズサの性格にも助けられた。僕一人だったらどうなっていただろう・・・。
「・・・集中しろ。」
そう言って空中に投げられた木の実に、僕は短弓を連射する。
パッ!パッ!パッ!と乾いた音が響き、矢は吸い込まれる様に木の実を打ち抜く。
特に弓道をやっていた訳ではない、スキルの影響により体に最適な動きを導いてくれる。
訓練に狩りと日々を忙しく過ごし。【獲得経験値2倍】はスキルにも影響するらしく、順調にレベルと共に上がっている。
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Name: 堀川健人
Race:人族
age:13
job:異界の学生
Lv: 12
MP:475/480
Vit:98→184
Str:95→181
Int:105→171
Agi:102→188
Dex:110→176
Luc:120
Skill:【アイテムボックスLv3】【踊りLv1】【身体強化Lv3】
【弓Lv3】【剣Lv3】【気配察知Lv2】【精霊魔法Lv1】
【魔力感知Lv2】【料理Lv1】【登攀Lv2】【解体Lv1】
【隠密Lv1】
Unique:【ラーニング】【異世界言語】
ステータスも順調に伸びてる。
というより、レベル差は10以上あるが、シークやアーサーと比べても差がない。
それでも訓練では手も足もでないけど。
訓練も一通り終わり、木を背に休んでいると。
「お疲れ様!氷があれば冷えた麦茶でも、出してあげるんだけどね。」
そう言って、水の入った木製のコップを渡してくれるアズサ。
こちらに来た時の服とは違い、エルフ達の服を着ている。
意外と露出が多く、布を巻いただけの上着に、動物の革で作ったベスト。
短めのタイトなスカートをはいて、木に登るので目のやり場に困る。
「ありがと」
アズサもリアに魔法を習おうとしたが、人族では難しいらしい。
勇者召喚を行った国は分かっている。
だけどここからその国へ行くには、非常に困難な道のり。
しかもオールダット帝国と呼ばれる国を経由しなければならず、現在戦争中なのだとか。
何より、森の結界を抜けた先も魔物が出現する森が続くが、もし出ていくなら僕たちだけで行かなければならない。
「遠回りになるけど、魔術大国を通っていく道もあるんだって!」
よほど帰りたいのか、エルフを質問攻めにしたり、書物を調べている。
僕は・・・帰りたい、のかな?
正直に言えばよく解らない。今はこの世界を見て回りたい。その思いが一番強いかもしれない。
「じゃあそっちから行こう。」
魔術大国。なんとも異世界っぽい響きだ。
昼食を食べて昼休み。とはならず、リアに精霊魔法を習っていた。
「・・・精霊にお願いするときは、・・・精霊語を使う必要がある。」
精霊に話かけるように、意識して。・・・と言われるままにやってみる。
『風の精霊よ―』
この時点で魔力を溜める手には、精霊らしき光が集まって来る。
『―刃となりて切り裂け。ウインドエッジ!』
光は風の刃となって岩へと命中する。
分断とまではいかないが、だいぶ深くまで傷をつけている。
「・・・綺麗な、精霊語。」
金髪の少女リア、実際の年齢も同い年だった。エルフは長寿だけど二十歳くらいまでは普通に成長するんだとか。
「スキルのおかげ。」
まぁ実際そうなのだけど。
「うーん。私も精霊語は喋れるはずなんだけどな!」
スキルがないからだろう。僕もスキルを【ラーニング】で手に入れられてなければ、たぶん出来てない。
どこかまったりと、昼過ぎの特訓をしていると。
ピィーー。ピィピィピーーー。と独特のリズムで笛が鳴らされた。
笛自体はよく連絡手段で使っているが、これほど慌ただしいのは初めてだ。
「これは?」
「・・・緊急招集」
・・・
・・
・
エルフの集落、その広間では武装したエルフが50名ほど集まっている。
木の上で作られた広間だが、不思議と揺れることはない。
「何が起きたんだ?」「・・・解らない」
アーサーとシークも居り、辺りは俄かにザワついている。
「皆聞いてほしい。遺跡の見回りに当たっていたが、守護者が破られている。」
ざわっと騒がしくなる。守護者というのはあのゴーレム見たいのだろう。
「村の防衛と森の警戒、それに遺跡への侵入者の排除。いつも以上に警戒してくれ!」
かなりマズイ事態のようだ。最悪、帝国との戦争に巻き込まれるのだろうか?
アーサー達と共に遺跡へと警戒しながら向かっている。
アズサには集落で待っていてもらってる。
「しかし、守護者の咆哮も聞こえなかったが・・・。」
「・・・精霊が騒がしい。」
僕には精霊は常時見えるわけではないが、遺跡に近づくにつれて空気が変わってくる。
「くるぞ」
先行するシークから警戒の声が掛けられる。
夕暮れが近い森の中で、僕たちの前に姿を現したのは人ではなかった。
いや、元があるなら人かもしれないが、カタカタとアゴを鳴らし、揺れ動く骸骨だった。
その数は多く20体以上はいるだろう。遅い足取りでこちらへやってくる。
「スケルトンだと?」
エルフの誰かが呟く。手前にいる骸骨へと向け鑑定をする。
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Name:スケルトンソルジャー
Race:アンデット
Lv: 10
MP:10
Vit:121
Str:152
Int:44
Agi:112
Dex:103
Luc:―
Skill:【剣Lv2】【闇属性耐性Lv1】【自動修復Lv1】
錆び付いた鉄の剣を握り、こちらへ向かってくる。
エルフの一人が放った矢が当たるが。1発では倒せず、僅かに負った傷も修復していく。
空洞のように暗い眼窩が僅かに赤く光る。
それが合図だったかのようにスケルトンが一斉に襲い掛かってきた
ゲームじゃスケルトンはただの雑魚だったけど、この世界ではどうやら違うらしい。
ヒュン!と弓がとんでくる。剣持ちだけでなく弓を持っている奴もいるようだ。
「気をつけろ!心臓部分を狙え!」
アーサーが叫び、スケルトンの胸を剣で貫く。
カカカカ、と断末魔の様にアゴを鳴らし、煙のように消えていった。
その後には赤黒い石が残っている。
激しく開戦するエルフと骸骨の戦いに、僕は無理に入らない。
連携の拙い見方は敵より危険だ。補助的に動くほうがいいはず。
エルフの戦士達から離れ、後方にいる弓使いを狙うため側面に回りこむ。
ガサっと僅かに藪が揺れ、気配察知に反応するより早く刺突が襲い掛かる。
「っ!!」
カッカッカッ!と嘲笑うかのようにアゴを鳴らす、他のスケルトンよりも僅かにでかくマントに盾と兜を装備している。
――――――――――――――――――――
Name:スケルトンリーダー
Race:アンデット
Lv: 15
MP:100
Vit:130
Str:182
Int:89
Agi:150
Dex:133
Luc:―
Skill:【剣Lv3】【盾Lv2】【統率Lv1】【闇属性耐性Lv1】
【自動修復Lv2】【身体強化Lv1】【隠密Lv1】
突きを躱し、木を蹴り距離を稼ぐ。表示される鑑定結果に緊張が走る。
(ヤバイ!一度下がろう。)
そう思ったが、ここで下がると、エルフ達が横から強襲される形になる。
「やるしかないか・・・」
眼窩の奥を赤く光らせ、アゴを鳴らすリーダーへと対峙する。
『風の精霊よ、刃となりて切り裂け。ウインドエッジ!』
精霊魔法の中で、一番相性がいいのは風だ。というより他の精霊魔法はまだうまく使えない。
風の刃がリーダーを襲うが、パシッ!と丸い盾に阻まれる。
普通の盾ではないのか、傷はつくもののすぐに修復していく。
(・・・僕の魔法じゃ威力が足りない。)
Intの数値ではリアとそれほど変わらないのだが。
盾を前に構え、その横から鋭い突きが襲い掛かる。
アーサーよりは速くないが、殺気の籠ったその突きを防ぐたび、冷や汗が流れる。
「っ・・・」
全ては回避しきれず、徐々に傷が増える。
今の僕の装備はレザー装備一式。とはいっても剣戟を防いでくれるような効果は無く、ボロボロだ。
弱点である心臓部分はガッチリ盾でガードされ、それ以外は傷をつけても回復していく。
「クソ!」
苛立ちから大振りになった一撃、弾かず盾で滑らせるようにいなされる。
体勢を崩し、動くことのできない僕に、スケルトンリーダーの剣が振り下ろされる。
「あぁ――」
死を覚悟した瞬間、ゴゥゥ!と岩の塊が通り過ぎ、巻き起こされた風にふらつく。
致命的な一撃は決まることなく、スケルトンリーダーは岩の塊ごと吹っ飛んだ。
「ケント!無事か!?」
光の粒子となって消えていく岩の塊、リアの精霊魔法だろうか。なんにせよ直撃を受けたスケルトンリーダーは木に打ち付けられている。
「・・・なんとか。」
服はボロボロで傷らだらけだが、致命傷はない。訓練のおかげだ。
ピィーーーー。
僕には微かにしか聞こえなかったが、笛が鳴っている。
「マズイな・・・。村にも敵がでたようだ。」
村の方を見つめ、心配そうな表情をするアーサー。
カチャカチャと、いつの間にか起き上がったスケルトンリーダーがアーサーへと迫っていた。
『地の精霊よ、穴を掘れ!』
普通に詠唱しては間に合わない。ただただ、お願いする。
魔力を対価に願いは聞き届けられ。スケルトンリーダーは足を取られ前のめりに転倒する。
「・・・集中。」
「あぁ・・・、そうだな。」
アズサのことも気になるが、今は目の前のこいつに集中すべきだ。
体勢を立て直し襲い掛かって来るが、他のエルフ達も合流し数の暴力で圧倒する。
【自動修復Lv2】の回復を上回ったのか、盾は崩れ、鉄壁を誇った胸への攻撃はいとも簡単に決まり。
カカカカ!とアゴを鳴らしながら煙となって消えていった。
「ふぅ・・・」
「よくやったな!ケント、おかげで助かったぞ。」
アーサーから褒められ、シークやリア、それに他のエルフも笑顔を向けてくれる。
「村が心配だから急ごう。」
照れくさ隠しに早口で捲し立て集落へと急ぐ。
日が落ち辺りは暗くなっている。だから余計に分かる。
「燃えてる・・・」
集落のある方には、炎が上がっていた。
お読み頂き有難うございます。




