42話
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素材屋を後にし、人々の行き交う大通りを歩く。
人種は人族が多いが、多種な獣人や稀にエルフやドワーフなども見かける。
「先ほどの方は小人族です。」
「あぁ、やっぱりそうなんだ。」
素材屋の店主、アーロンのことだろう。
冒険者ギルドには夕方行ったほうがいいので、それまでどうするか。
歓楽街へ行くわけにも行かず、今まで通ったことのない方へと向かっていく。
しばらく歩けば、石造りの煙突のある建物から、カンカンと鉄を打ち付ける音が聞こえてくる。
鍛冶屋の前を通りつつ、特に今は用がないので素通りだ。
その他にも防具屋だったり武器を売ってる店が並んでいる。
その中に一見すると鍛冶屋に見える建物だが、道から見える店内の作業風景はガラス工房のソレである。
(瓶も何か特別な物にしてもらいたいが・・・)
何と説明すればいいのか。性能をUPさせる特殊効果を付けてくれと言ってみるか?
そうではなく、特殊な素材で作ってもらうって感じか。
(まぁ、素材を何にするか決めて持ってこないと、話にならないな。)
ガラス工房も今回は見送ることにする。
「この先は・・・居住区かな?」
「はい、居住区を抜ければ田畑が見えてきます。大体その辺りまでが結界の範囲内です。」
市民の居住区は木造が建てが多く、あまり区画整理などもされていないのか。迷路のようになっている。
「なるほど、後王都で見てない所って何があるかな?」
「貴族街の近くに、オークション会場や劇場などがあります。それと逆側の郊外近くに騎士団の訓練場などがありますね。」
オークション以外はどうでもいいな。
「前に言ってた、森林型のダンジョンはどのくらいでつくの?」
「こちらから抜けて馬車で3時間ほどです。簡易的な砦があります。」
「興味がございますか?」と意外そうに青い瞳が見詰める。
興味がというより、切実にタバコの葉が欲しい、もしくはそれに代わる物。
煙草も一箱切っている。・・・ダンジョンデビューも近いか。
迷路のような居住区を抜ければ、風に揺られながら稲穂が頭を垂らしていた。
見慣れた光景に、ここが異世界だということを忘れそうになるが、荒々しくこちらへやって来る馬に戻される。
「何かあったようですね。」
遠くからやってくる馬には、必死の形相をした青年が乗っており、軽装備は所々壊れ怪我をしているようだ。
道の端に避ける、こちらに構うことなく馬は通り過ぎて行った。
(嫌な予感・・・)
黄金の草原が風に揺れるなか、はぁと吐いた溜息は、馬を見送る人々の騒めきに消えていった。
・・・
・・
・
王城で勇者達の訓練に時間を費やしていた、ガイラス・ラインハルトは慌ただしく動いていた。
一人の伝令によりもたらされた情報は緊急を有する。
「恐れていた事態が起きているな。」
魔神の残滓の復活、それに伴う世界の異変。
騎士達に指示を飛ばし、未だ訓練中の勇者はどうするか考える。
「迷宮の氾濫、それに・・・新たな迷宮の出現か。」
この国は豊饒の大地と呼ばれる、作物はよく育ち自然の恵みも豊か、その反面で魔物も多い。
勇者召喚で必要なエネルギーも土地から得ている。
そして魔神の残滓の影響も特に受ける。
「大変な事態の様ですね。我々からも使徒を送りましょう。」
アイルノウスに隣接する国、クラメイア皇国、光の女神を信仰し神官や独自の封印騎士団を所有する。
その大司教である人物、トリアード大司教、若く端正な顔立ちの優男、どこか腹黒さが滲み出て好きになれない。
「・・・有り難い申し出ですな。」
こんな事態では、神官の派遣は大変助かる、断るための理由にはならないだろう。
ふぅと一息吐き、事態の収拾に向け動き出す。
・・・
・・
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時は同じころ、王都で活動する錬金術師門派の一派である『生命と星の調和』、主にポーションの製造、開発で有名である。
その門派の本部では主要幹部が集まり、テーブルの上に置かれ、魔道具の明かりで照らされる一本の瓶を睨んでいた。
「どうやら本当に、通常よりも効果が高いな。」
「あり得ない・・・。」
下級生命回復ポーションの研究は、それこそ何百年も続けられてきている。
それは主にどれだけ成功率を高め、時間を節約し、最低減の魔力で作るための道具作りが基本だった。
作るための最低限の魔力が存在するのと同時に、一つのポーションに籠められる最大値の魔力も決まっている。
だがその最大値を、この目の前にあるポーションは軽く超えていた。
「だが実際あるんだ、何らかの方法で作られたか、もしくは迷宮産かもしれないが・・・」
冒険者ギルドで売られたポーションは10本と聞いている。
迷宮の宝箱からポーションが10本もでてきた、という話は聞いたことがない。
会議が行われている部屋に一人、あまり錬金術師らしくない恰好―まるで暗殺者のような―の男が一人入ってきて、一人の女性に羊皮紙の書類を渡した。
「冒険者ギルドで売った人物が解りましたわ。名前はツトム、先日錬金術師ギルドから、門派には入れないようにと通達が有った人物ですわね。」
血の様に赤い前髪を耳に掛けながら、手渡された書類に目を通し報告していく。
キリッとした勝気な赤茶色の瞳、その全体的な雰囲気からは貴族のような、お嬢様といったほうがしっくりくる。
白衣に掛かるウェーブの赤毛、黒のシャツに黒のズボンとオシャレとは言いづらい。
なんともアンバランスだが、この場での影響力はかなりありそうだ。
「それは・・・まさか!」
「えぇ、ギルド側がこの情報を先に持っていた、と仮定するほうが無難でしょう。」
実際はそんなことはなく、ただの私怨なのだが。
「それにこの人物の連れていた子供が、ギルドマスターの帽子を被っていたそうです。」
「なんと!あのいつも自慢していた、アーティファクトをですか・・・!」
アーティファクト、ダンジョンで手に入るアイテムの中でも特に優れた品。
「それだけギルドも必死、ということでしょう。」
実際はセクハラの示談金として、ぶん獲られただけなのだが。
「早急にこの人物と会う必要がありますわ。」
書類を置き、テーブルに置かれる瓶を見詰めるその瞳は、炎のように燃えていた。
お読み頂き有難うございます。
※エルフヤドワーフ→エルフやドワーフ 修正しました。




