表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/62

4話


タバコを吸おうとカバンを漁っていると、

「申し遅れました、私はリンデン王国第一王女アリーシャ・リンデンと申します。」

スカートの端をつまみ、軽く持ち上げて、挨拶をする。

カーテシーだったか、あまり馴染みがない行為だ。

勿論挨拶されたのは俺ではなく、勇者君が挨拶を返す、他の生徒達も銘々に挨拶を交わしている。


(というか、本当に彼が勇者なのだろうか、・・・顔で決めてないよな?)


などと、僻み根性丸出しで嫌になる・・・、何らかの方法で確認した、もしくは認識できるのだろう。


(定番でいえば、『鑑定』とか、そういえば言葉も普通に通じてるな。)


今更ながら疑問に思うが、まぁいいかとタバコを探す。

移動用で使う防水性のバックパック、大きめの物だが、着替えなどは入ってない、

別のカバン―バスの下部分に入れてしまった―の中だ。

手帳や旅のしおり、筆記用具に折り畳み傘、それとスマホに目当てのタバコが3箱。


「ほわぁあ!なんですかコレ!甘いです!シュワシュワです!!」

生徒達から貰ったお菓子に、小躍りする姿は微笑ましい、残念系なのだろうか、腹黒王女ではないだろう。


 袋を開け銀紙を剥がす、ボッと火を点け、吸い込む・・・。ふぅぅ・・・と紫煙を曇らせる。

よほどいい顔をしていたのか、王女が興味深げにこちらを見ていた、初めてこちらを見た気がする。

というより、タバコ・・・あるよね?

(タバコないと、ダメ、ゼッタイ!)


はぁ・・・、今後の不安が増えた、どこか腰掛けられないかなと、辺りを見渡す。

「うおっ」


思わず声を出してしまった。背後に漆黒の鎧、・・・ではなくガイラスと呼ばれた白髪の老騎士がいた。

カバンを漁っていたから警戒されていたのだろうか、その瞳はタバコを興味深げに見つめていた。


「す、すすす、スイ・マスカ?」

どもり、片言、・・・でもしょうがないと思うんだ、存在感が半端ない・・・。

先ほどまで気付けなかったのが不思議だ。


「おお、済まない、それがタバコという物か?実物は初めて見るな。」

顔付きや雰囲気は怖いが、その言葉は安心感を与える。

タバコを1本渡し、火を点けるが、点かない。

「すいません、軽く吸ってください」


ボッとライターで火を点ける、これには驚かないな、同じような道具があるのかもしれない。

タバコの先端が赤くパチと音を立てて光る、燃焼と共に煙が肺を満たす。

初めてであんな吸い方をしたら絶対咽るのだが、そんなお約束にはならず、ふぅぅと白煙を曇らせる。

「ふむ、いまいちよくわからんな?」

1分も経たずに吸い終わってしまった。本当に人間か!?


期待していたほどの物ではなかったのか、興味は失せたようだ。

「いや、貴重な物を済まなかったな・・・、私はガイラス・ラインハルト、王国騎士団長をやっている。」

そういって差し出された手はあまりに大きい、思わず両手で取ってしまった。

「私は高橋・・・いや、ツトム・タカハシ、教師をしています。」


ニッと笑った老騎士の顔は、やっぱり怖い。

※ガイアス→ガイラス 誤字修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ