3話
凛とした声は容姿よりも大人っぽく、洞窟内に響いた。
少女の瞳は一人の男子生徒を見つめている、彼が勇者なのだろうか、少女の頬はほんのり赤い。
見つめられた生徒、風見優斗はじっと見つめ返す、流石に困ったような顔を少しみせたが、口を開く。
「勇者・・・ですか?申し訳ありませんが、そういった宗教はお断りさせていただきたいのですが。」
さすが完璧王子、天然ぶりも完璧である。
「「「さすが優斗君パネェ」」」
どこか憎めない、勇者の素質だろうか、男子生徒からの人気も高い。
もし自分があの立場だったら、どもりキョドリ醜態を晒していただろうなと、感心するばかりだ。
「いえ!宗教などではありません!!あ、いえ宗教は大変すばらしいのですが・・・
どうかお願いします!世界を救ってくださいませ!」
先ほどまでの神秘さなど微塵も残ってない、もはやただの美少女だ。
おかげで、少し緊張も解けてきたのだが。
「おい!なにふざたことをやってる!ここはどこだ?さっさと元の場所に帰せ!」
といきなり隣に立っていたバスの運転手が怒声上げて少女に詰め寄った。
猛烈に嫌な予感がする、俺は全力で生徒たちの後ろに避難する、委員長の冷めた視線が突き刺さる。
それまで何故か気づかなかったが、美少女の後ろに二人、男が控えていた。
2人のうちの一人、赤髪の長髪が印象的な優男、手には美少女が持っていた杖とは違い
、取り回ししやすいステッキを持っている。
蛇の頭を象った先端が詰め寄った運転手に向けられた瞬間――閃光が走った。
遅れて聞こえてきた空気を切り裂く音と共に、崩れ落ちる。
「アガァ・・・」死んでしまったのか解らないが、うめき声を上げた後はピクリとも動かない。
これにはさすがの生徒達も静まり返ってしまった。
「やりすぎだぞ、アスティル・・・」2人のうちのもう一人、2メートルは有ろう巨漢、
漆黒の鎧に赤い意匠の入ったマントをつけた白髪の老騎士、鋭い目つきで赤髪の男を睨むが、
アスティルと呼ばれた男は気にした様子もなく述べる。
「勇者様方とはいえ、姫様に無礼を働くことは許されませんよ、ガイラス」
さも当然と表情を、崩すことなく言い放った。
ふぅと一つ溜息を漏らし、部下であろう騎士たちに倒れた運転手を運ばせた。
「驚かせてすまなかったな、・・・姫様ここで話すよりも王城へお連れしましょう、
国王様への謁見もありますので。」姫様と呼ばれた美少女は頷く。
それを見て一礼した黒騎士は指示を出し始めた。
辺りが動き出すなか、
「ヤベェヨ!ヤベェヨ!」「さっきの魔法・・・!?」「あの目つき絶対人ヤッとる」
騒がしさを取り戻す生徒達、うん、たぶんきっとヤッたことあるから挑発してはいけませんよ!?
「どうするんですか?高橋先生?」
なんの期待も籠っていない眼差しで委員長に問いかけられた。
「とりあえず・・・、タバコ吸ってくるわ・・・」
委員長の眼差しは冷たい。
お読み頂き有難うございます!
別作品も投稿してます、よろしくお願いしますm(__)m