25話
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喧噪の止まない闘技場を後にし、宿屋に向かいながら食事処を探す。
篝火が焚かれる石畳の路地を歩いていると、魔道具の明かりが漏れる店並みが見えてきた。
「どうしようか?お勧めの店とかってある?」
警戒のため少し前を歩くミレアは立ち止まり、顎に手をやり考える。
「・・・確かあちらのお店が、ルクスバッファローのステーキを出していたかと。」
ルクスバッファローっていうと王城で食べたやつか。
「いいね。そこにしようか。」
二人も笑顔で頷いてくれたので、その店へと向かった。
「ルクスバッファローって魔物だよね?」
ちょっと気になったので聞いてみる。
「王都から北西に行ったところにある、ルクス平原に生息する魔物です。大型で群れで行動するため、専門のPTでないと狩るのが厳しいですね。」
着いたお店は大きな両開きのドアが付いており、石造りのお店でかなりデカイ。
「結構すごいですね」
「だなぁ。」
もっと大きなお店も見慣れているはずだが、それとは違う趣がある。
お店の中に入れば、丸い木製のテーブルが置かれ、食事をする人で賑やかだった。
木の階段を昇れば2階へと進め、落ち着いて話もできそうだ。
店の客層も豊かで、見ているだけでも飽きないが、肉を焼くいい匂いにもう我慢ができない。
「いらっしゃいませ!お好きな席にどうぞ!」
忙しなく働く給仕姿の女性に声を掛けられる。
白のブラウスにワイン色のサロンエプロン、忙しく動いていたせいか乱れたミディアムツインテール、それにふんわりしたスカートが、なかなかどうして煽情的である。
「なに考えてるんです?高橋先生。」
そんなに解りやすいだろうか・・・私の顔は。
適当な席に座り、メニューを覗く。
「王城で食べた奴は、すごく柔らかくておいしかったけど、ステーキってどうなんだ?」
バッファローのステーキ、イメージ的には硬そうである。
「毒のない魔物肉は、美味で柔らかいものが多いです。」
ということで、ステーキ定食を3人分頼んだ。
「錬金術の道具は、買わなくてよろしいのですか?」
料理を待つ間のたわいもない会話、だが答えに困る。
「・・・そうだね、明日は錬金術師ギルドにもいこうか。」
そんな、適当な会話をしながら5分も待てば、肉の塊がやってきた。
「ステーキ定食3つおまちどー!」
木製のワゴンに載せれられた、肉の塊が運ばれてくる。
「これは・・・」
「・・・」
腹が減っているとはいえ、それほど大食いではない俺には、喜びよりも悲しみが・・・。
ステーキはこんがりと焼かれ、グリルで焼いたのか、斜めのコゲ線がうまそうだ。
コーン以外はなんだか解らないサラダと、ゴハンにスープ、これだけついて1000コルト。
食糧事情に明るいこの国では、かなり豪華な値段の食事だ。
最初はソースをかけずに肉の味を確かめる。
分厚いステーキだというのに、ナイフを入れればすんなりと切れる。
溢れる肉汁をみれば口に唾液がたまり、鼻孔をくすぐる香ばしい匂いを嗅げばもう止まらない。
「んっ・・ん!」
肉を頬張りゴハンを掻き込む、マナーが悪いがしょうがない。
『食事なんて何食べてもいっしょ』、『焼き肉屋の昼ランチでよくね!』
過去の自分よ、グッバイ。タバコにやられたダメな舌でも、一口食べればエンドルフィンが大量に発生する。
「はふ・・・はふ・・・」
スープを口に運び、流そうとするが熱い、それでも食べることをやめない。
気付けば目の前にあった肉の塊は、半分ほどになっていた。
「ソースも・・・」
小鉢に入れられた真っ赤なソース。
辛いのはあまり好きじゃないが、喉がごくりとなったのが解る。
唐辛子のような痛い辛さではなく、ピリリとした刺激、肉汁とゴハンに併せれば最高のオカズに変身する。
辛さを紛らわすため、サラダを頬張り、更に肉を喰らう。
気付けば、目の前に置かれた肉の塊を含め、すべて平らげていた。
「意外と健啖家なんですね。」
委員長が珍しく驚いたように見てきた。
(もう帰れなくてもいいな。これはヤバイ・・・)
タバコを探しつつそんなことを思う、・・・どうやら俺は異世界に胃袋を掴まれたらしい。
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