16話
ブックマーク有難うございます!
――――――――――――――――――――――――――――
異界アイテム:壊れた異界の眼鏡
ランク:――
壊れてしまった異界の眼鏡、非常に精巧な作りで軽さに優れる。
壊れている。
――――――――――――――――――――――――――――
>異界アイテムの鑑定に成功しました。
>壊れている為レシピの追加は有りません。
何が起こったかと問われれば、眼鏡が戦死したとだけ言っておこう。
コーヒーがないという驚愕の事実の後、果実酒を貰い不貞寝した俺を待っていたのは、地獄の訓練だった。
・・・
・・
・
「オラァ!そんなんじゃゴブリンに殺されるぞ!!」
ガッ、キンと甲高い金属の打ち合う音が響く。
「ゴブリンに殺される奴はゴブリン以下のゴブクソだ!!」
連れてこられた訓練場では、数十名の騎士と赤い鎧を纏った鬼教官がいた。
「オラァ!そんなんじゃゴブリンは倒せてもオークに殺されるぞ!!」
ドガっと壁際まで飛ばされる騎士。
「オークに殺される奴はオーク以下のオークソだ!!」
何でもクソを付ければいい、という物でもないだろうよ。
などと考えていると、俺たちをここまで案内してきた、ガイアスが声を掛ける。
「相変わらず厳しいな、ガリトス」
ガリトス・・・と呼ばれた赤い鎧を纏った騎士、こちらへ振り返りガイアスを見つけると、
先ほどまでと表情を一変させ、笑顔で出迎えた。
「おぉ、待っていたぞ我が友よ!こいつらがあまりに不甲斐ないので少々鍛え取ったわ!」
ガハハと快活に笑うガリトス、黒と赤と色は違うが形はよく似ている気がする。
「それでそっちのが勇者殿たちか・・・」
ちらりとこちらを見やり溜息を吐いた。
「子供に教えるのは、苦手なんじゃが・・・」
「そういうな、お前以上の適任者はいないさ。」
いやそんなことないと思う、探せばきっといるよ!知らんけど。
最初の印象のせいか、生徒達もどこか引き気味で微妙な沈黙が流れる。
「うむ、まずはお前たちの実力を見ないとな、そこにある練習用の武器を選びなさい。」
集められたのは、城をでていくと決めた生徒達だ、多少厳しめの訓練で考え直させるつもりかもしれない。
「よし、全員でかかってきなさい」
女子も合わせれば全員で18名、自分も含めると19名にもなるのだが。
最初に動いたのは風見優斗、剣道部だけあって剣の持ち方も様になっている。
シッと短く息を吐き、一息に踏み込み喉元めがけて突きを放つ。
格闘技の経験もないし、知識もほとんどないが、速度が異常なことだけは解った。
「おっと、いい踏み込みだ。」
だがガリトスにはなんら問題ないのか、片手でもった剣ではじく。
「もっと大きく、速く、体重を乗せろ!」
何合かの打ち込みをこなし、ガッっと後ろへと下がらされる勇者君。
「おぉし!俺らもいくぞ!」
そういって阿久津大地、それに短パンボーイズが突っ込んでいった。
短パンボーイズ:夏でも冬でも短パン、制服も改造短パン。
バスで確認したときは、普通のだったのに持ち込んでやがったな。
「うちらもいこ!」
「しょうがありませんね。」
女子たちも2人につられ混ざっていく。
はぁ・・・と溜息を吐き集団に混ざる。
選んだのは棍棒、スキルに有ったからだ。練習用だからか、木製で先端のほうに重りがついていて重い。
「おわ・・・あぶっ・・・あ」
総勢20名、とてもではないが訓練されていない人間が、まともに動けるわけがない。
ガイアスとしては戦う意思があるかどうか、見たかったのだろうか?
今となってはどうでもいい、だってもう俺の眼鏡は直らないのだから。
・・・
・・
・
「委員長、ちょっと眼鏡貸してくれない?」
「嫌です、セクハラですよ?」
・・・神はどうやら俺を見捨てたらしい。
お読み頂き有難うございます。