12話
ブックマーク有難うございます!
元の世界に未練が有るか?・・・そう問われると難しい。
教師になるのが夢だったというわけでもなく、ただ普通のサラリーマンとして自分がやっていけるとは思えなかった。
対人スキルが最悪なのだ。
それでも塾講師のバイトや、家庭教師など子供相手ならばそれなりにやって行けてたので、選んだにすぎない。
まぁ実際にやってみれば、そんな甘いものではなかったが・・・。
だから仕事には未練なんてない。
恋愛皆無私生活ネトゲ廃人、行きつく先は・・・孤独死。
動画サイトの婚活サイトの広告にイラっとする毎日。
自分と生徒達が急にいなくなって、世間的に両親には迷惑かけるかもしれないな。
それに元の世界に戻れても、元の時間に戻れるのだろうか?
どちらにせよ、行方不明の生徒を見つけなきゃ終わりだ。
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俺が話た後、生徒達も探しに行くと言ったり、風見優斗に付いて行くと言ったり、中々収拾がつかない。
「国王陛下そろそろ・・・」といって口髭の似合う、少し痩せ気味な軍服の男性が、トレーに布を乗せた物を持ってきた。
国王はトレーの上の物を一つ取り、説明を始めた。
「そうだな、これは・・・」
一度騒がしくなった奴らを止める方法は・・・。
「うむ、まずその前に勇者殿達も腹が減っているだろう、食事にしようではないか!」
先ほどまでの喧噪が嘘のように止み、皆が国王に集中する。
「ではアリー、案内して差し上げなさい。」
なんとも子供のあしらいのうまい国王である。
食事はビュッフェスタイルで、様々な料理が用意されていた。
皆よほどお腹が空いていたのか、どんどん皿に取って食べていく。
自分もサラダと果実酒、それになんだかよく解らない肉料理を手に取った。
「鑑定・・・」
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食料:ルクスバッファローの骨付きカルビ
満腹度上昇、精力増強、疲労回復。
上品な味付けの一品。
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>鑑定に成功しました。
(・・・レシピの追加はないのか?)
骨付きカルビを口に運び頬張る、ジューシーな肉汁と甘辛いタレがマッチして非常にうまい。
ご飯があればよかったのだが、パンしか見当たらない。
「お米ですか?ありますよ。こういった立食形式のパーティではパンがメインになりますが。」
生徒も気になったのか、王女に尋ねていた。
米があるというのは、朗報である。
むしろ国としては米が主食で、パンは嗜好品のようだ。
食事は進み、満足したのか、皆疲れがどっとでたようで静かに休んでいる。
「どうやら食事は気に入ってもらえたようだな、さてそのままでよいので、聞いてもらいたいのだが。」
そう言って先ほど持っていた四角いプレートを掲げる。
「これは鑑定板という物で、皆の能力を調べてくれるものだ。今から一人に一つずつ渡すので試してみて欲しい。」
お願いしているが強制だろう、危険な能力を持っていないかの確認かな?
渡された白い板、10x5cmほどの大きさで特に模様などはない。
「板の真ん中を持ち、魔力を流してみてくれ。」
「「「・・・」」」
まるで息を吹きかけてくれ、と言わんばかりである。
「あのー、どうやって魔力を流せば?」
「ああ、済まない、まずは己の中にある魔力の確認からだな。」
魔力・・・か、鑑定をしたときに僅かに抜けていく、あれがそうなのだろうか。
「魔力って・・・」「気じゃね!?」「オォォォ!燃エロォ!」
生徒達の反応もあまりよくなさそうだが。
「出来ました。」そういって鑑定板を、国王に見せたのはやはり、というか勇者君だ。
「本来は鑑定板を人に見せるのは、あまり良くないのだが、今回は確認の為だと理解してほしい。」
そう言いながら確認する国王、当の本人や他の生徒達はあまり理解してない様子。
(スキル構成を他人に知らせるなんて、メタられたらやばいってことかな。)
ネトゲでも対人戦の駆け引きで、相手のスキル構成を知っているかどうかは重要だ。
まぁゲームのように簡単に対応できる、とは思えないけど。
鑑定した時に抜けていくのが魔力だと仮定して、自身の中にある魔力を探す。
心臓の辺り、僅かに感じるそれを意識する。
>【魔力感知Lv1】を獲得しました。
唐突に流れる音声、それと同時に全身を流れる魔力を感知することに成功する。
(よし!思ったより簡単にできたな?)
出来るのが当たり前のような感じだったので、あまり調子に乗らないほうがいいかなと戒める。
さっそく鑑定板に向け、魔力を流してみる。
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Name: 高橋 勉
age: 29
job:錬金術師
Lv:1
skill:【アイテムボックスLv1】【棍棒Lv1】
【投擲Lv1】【隠蔽Lv1】【魔力感知Lv1】
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現れた情報に安堵する、最悪【隠蔽】でどうにかしようと思っていたが、これなら平気そうだ。
お読み頂き有難うございます。
鑑定板:冒険者ギルドが作ったもの。
各ギルドに登録する際に使われ情報収集される(秘密裏)
ご、ご都合主義じゃないんだからねっ