10話
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王城の中は外見とは違い、壁などに豪華そうな絵画や、壊したらやばそうなな美術品が飾られていた。
「なかなか素晴らしい品々ですね。」
正直価値などまったくわからないのだが、適当に褒めておく。
「はい、貴族の方からの献上品や、他国からの結納品など、非常に高価な品が多いですね。」
その高価な品に落書きしてるバカ共がいるが、委員長と全力で視界を確保する。
しばらく歩き一際大きな、威圧感のある扉の前へとやってきた。
その扉の前で控える騎士二人に、王女が話かけ扉が開かれる。
開かれた扉の先は、広大な広間になっており、赤い絨毯が敷かれている。
絨毯の先は少し階段があり、その頂上には豪華な椅子に座る一人の人物がいた。
よく見れば離れた場所に数人いるのが解る。
王女が扉の先へと進み、玉座に座る人物へと語り掛ける。
「国王陛下にご報告いたします。勇者様並びにお連れの方々30名参られました。」
透き通る様な凛とした声が、広間に響く。
それと同時に椅子に座っていた人物は腰を上げ、階段を下り歩み寄ってきた。
「私はリンデン王国国王、ウィンストン・リンデンだ、召喚に応じて頂き感謝する勇者殿、それに巻き込んでしまった方々には深く謝罪しよう。」
そう言って頭を下げる国王、周りで見ていた人物達から騒めきが聞こえる。
正直いって意外だった、この国王の態度もだが、人物像も。
一言でいえば若い、同じくらいの年齢だろうか、精悍な顔立ちに服越しでも解る鍛えられた体つき。
歩き方や立ち振る舞いも見事で、何らかの武芸に秀でているのだと直感させられる。
「しかし、どうか世界の為に力を貸してほしい。」
そう言って完璧な笑顔を見せる国王、残念系王女とは格が違うらしい。
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校長の話など、大人しく聞いていたことのない生徒達も、国王の話に静かに耳を傾けていた。
これがカリスマの差というやつだろうか、俺の授業でも大人しかった試はない。
国王の話を要約すればこうだ。
かつてこの世界―当時はこの大陸だけが人が住んでいたらしい―を魔族が支配し、
その呪縛から解き放たれるため、その他の全ての種族が立ち上がった。
大陸全土を舞台にした戦争は、強力な力を有するが数で劣る魔族がその数を更に減らしていった。
そして、ローレル大陸北東に位置するアイルノウス、東大陸へと唯一陸続きなその地まで、魔族を追い込むことに成功した。
しかし、その最後の地での決戦で魔族が行った禁呪により、一人の魔神が誕生した。
魔神に対してこの世界の人間は、本能的に、魂の部分から戦うことが出来ず、一方的な蹂躙が始まろうとした。
しかし、光の女神の助力により、異世界召喚を行うことに成功し、召喚された一人の勇者は、己の内から生み出した聖剣により、魔神を打ち倒すことに成功した。
勇者の活躍により、魔族を東大陸へと追いやり、世界は平和でめでたしめでたし、とはならなかった。
アイルノウスは禁呪の影響で不毛の大地とかし、一定の期間ごとに魔神の残滓が生まれてしまうようになったからだ。
魔神の残滓が世界に及ぼす影響は計り知れず、この世界の人間では倒せないため、勇者召喚を行い倒してもらっているということだった。
まぁ長ったらしいが、この世界の人間では倒せないってのがポイントなのだろう。
魔神の残滓自体は攻撃してこず、道中の魔物や魔族の妨害が危険なくらいだとか。
この国の騎士だけでなく、世界中から英雄と呼ばれる人物が集まり勇者を守るので、安全だと強調していた。
(まぁ守られるといっても、安全ではないよなぁ・・・)
国王の話を黙って聞いていた生徒達の一人。
「僕たちは帰ることが可能なのでしょうか?」
勇者と呼ばれた少年、風見優斗は尋ねた。
「魔神の残滓を倒してくれれば可能だ、倒さなくとも返す事も可能だが、数十年は時間を要する。」
国王の表情には一切陰りはない、恐らくそれは事実で、どうしようもない事なのだろう。
「そうですか。では僕で良ければ力を貸しましょう。」
そう言って振り返る彼の目は涙目で、「巻き込んで済まない。」と頭を下げた。
「なんで優斗が謝るし!優斗は全然悪くないよ!」
「そうですわ!優斗様が謝ることなど何一つありませんわ。」
「そうだぜぇ優斗ぉ!水くせぇこといってんじゃねぇぞ!」
風見優斗へと近づき声を掛ける生徒達・・・。
クソガキでもいいところの一つはあるらしい。
そんな友情ムードの中、一人青い顔をしていた委員長が目につく。
「どうした?」と近づいて声を掛けた。
「気になって調べてみたんですが、一人、いえバスの中にいた人物で二人程足りないです・・・。」
委員長のその言葉に、思考が追いつくことはなかった。
お読み頂き有難うございます。
まったり進行ですが、よろしくお願いしますm(__)m