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甘夏  作者: 長門葵
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4~日陰での自己紹介~

真夏の刺客のような紫外線を避けるため、屋上の入口の上にある貯水庫の影に座る悠斗。日陰といってもやはり真夏の気温は高く、ここに上ってくる前にかった紙パックジュースを飲み、喉を潤す。

そんな悠斗の姿をまるで動物園であまり興味ないないが話題になっていたので一応新しく来た動物を見にきた男性(独り身)のような視線を向けるノア。

その視線に気づいた悠斗は少しなにかを閃いたように手を軽く叩き、ビニール袋をあさる。


「よ、良かったら。今日は暑いですもんね」


どうやらノアが飲み物を欲しがっていたと思ったのだろう。紙パックのジュースをとりだし、ノアに差し出す。ありがとうと一声かけ、ノアはそのジュースを受けとるが、視線は悠斗にターゲットを合わせたままだった。


「な、なんですか」


「あんた・・・今朝の人だよな」


「あ、その件はどうも」


気まずそうに頭をかく悠斗。そんな悠斗の顔をノアはしゃがみこんでのぞきこむ。


「なんのつもりだ?」


敵意や疑心なんてものではなく、単純な疑問。悠斗はその疑問に対して疑問で返した。


「なんのつもりだとは?」


「自慢じゃないが、(あたし)は悪い意味で有名だ。しかも、あんたはあの風紀のやつとよく一緒にいる人だろ。なんでそんなあんたが私に手を貸す」


「ん?そんな不思議なことかな?そもそも、手を貸したつもりもないし」


「あぁ?なめてんのか」


悠斗の態度が少し琴線に触れてしまったらしい。急に胸ぐらを捕まれ地面から浮かされた悠斗はあわてて細く説明をつけたした。


「もともと俺もここにくるつもりだったし、目的が一緒だったから手を貸したつもりはないって意味です!」


「・・・」


納得したのかどうか定かではないが悠斗はゆっくりと下ろされ、解放された。

ただいま、地面。

おかえり、悠斗。

そんなくだらない脳内劇場をしつつ、精神を落ち着かせる悠斗から興味をなくしたのか、日陰にあぐらをかいて座る。

あぐらをかきながら、パンをパクパクと食べる姿はなんだか偶像(アイドル)はかけ離れている諸行な気がするが、悠斗はそこいらにあまりこだわっていないらしい。今度は悠斗がちらちらとノアの方を見る。


「・・・(パクパク)」


「・・・(ちらちら)」


「・・・(パクパク)」


「・・・(ちらちら)」


「・・・(ギロッ!)」


「っ!?」


にらめつけられた悠斗は急におどかされた猫のごとく、びくんと一回跳ねた。


「さっきからしゃらくさい。なんなんだよあんた」


「いや、あの・・・」


「ふん!」


女の子の憧れ壁ドンを女の子にしてもらうことになった。しかし、想像異常にときめきなんてものはなく、かわりにあるのは彼女の拳で粉砕したコンクリートとじぶんに向けられた殺意による恐怖だった。

すごく・・・ドキドキするっ!(悪い意味で)


「やっぱりあんたは私の敵か?」


「て、敵なんかじゃない!」


食いぎみに否定をする悠斗。その迫力にすこし驚くノア。悠斗はとまらなくなった想いをマシンガンがごとく連射する。


「今朝あってから一度でもお話ししたくて、でも機会ないなーとか思っててそしたら、こんなすぐにチャンスきて、やった神さまありがとうむしろ神さまはこの娘ではないのかとか思うタイミングでマジやべぇとか思ってて、てか近くで見るとすごいきれいですねその髪。それ以外も本当にきれいで、女神さまやんっ!って感じで!プロポーションもよくて、今朝の水から出てきたとき是非ともじっくり話を・・・してみたい・・・そういう気持ちを」


途中で弾ぎれになってきたのか勢いは少しづつなくなっていき、かわりに恥ずかしさで顔を真っ赤にする悠斗の視線の先には苦笑いするノアの顔が。


「なんか、ありがとう」


「こ、こちらこそ、申し訳ありません」


少しの無言。

気まずさがクライマックスを越えた瞬間だった。


「・・・名前」


「名前?」


「名前。あんたの。聞いてない」


そっぽをむきながら、そんな呟きをくれるノアに悠斗は嬉しそうにはにかむ。


「鷺宮悠斗。2年です。よろしくお願いします」


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