花は 其の伍
テストとか知らない(´-ω-)ウム
もうすっかり兵がいなくなった後で、紅が刀をしまった。
彼はたくさんの汗をかいていた。
「紅、大丈夫か?」
「大丈夫」
「頑張ったな」
白が労うと、紅は満面の笑みを浮かべた。
そして元気よく言ったものだった。
「ありがとう」
すると、空が町の方角から駆け寄ってきた。
「おーい、白!紅!遅くなって悪いな!」
そして、二人の近くで立ち止まると
「さっき役人っぽい人たちが逃げるように町を走っていったんだが、何があったか知ってるか?」
と一番に聞いてきた。
「え、兄ちゃん家の前で見てたじゃん」
紅が口を尖らせていう。
「えっ?何だって?」
空は眉根を寄せて聞き返した。
「だーかーらー、家の前で戦い見てたじゃん」
「何言ってるんだ。僕はさっきまで町の八百屋に…」
白は訳が分からなくなって、
「だって、確かに刀を投げて…」
と口走ったが、
「刀なんか重くて投げられるわけないだろう」
という空の返答にやっぱりな、と思った。
「でも、これ」
そう言って二人が刀を差し出すと、空は驚いて言った。
「これは…!!」
「兄ちゃんが投げてよこしたんだ」
「桜ノ宮家に代々伝わる名刀にして妖刀の桜月じゃないか!」
「「桜月?」」
大切な刀だとは知っていたが、そこまで驚かれるとは思っていなかった二人は、声を揃えて聞き返した。なにやら、月花と桜花、二つ合わせて用いられることから、この二本の刀を総称して『桜月』と呼ばれているらしかった。
「桜花で幻想を見せ、月花で断ち切る」
二本の刀は表裏一体だった。
「でもなんでお前らがこんなもの…?まさか」
「盗んだわけじゃない」
「だったら何で持ってる」
「さくら様から」
白の口をついてでた。咄嗟のことで、白自身も驚いた。
しかし、空は落ち着いていた。
「次はお前らなんだな」
そう言った空の顔は、少し悲しげだった。
それから空は大きく深呼吸をして、
「お役目、頑張れよ」
と言った。
「「はい!」」
今は昔、戦乱の世で舞う剣士あり。
空はその時、儚い英雄の影を、弟たちに見た気がした。
完結です。
お付き合いくださり誠にありがとうございました。