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其ノ壱
桜ノ宮家は代々、花守の仕事をしていた。
花守とは、桜を守る番人のことで、彼らは桜の木がたくさん生えている山一帯を守っていた。
その山を、霞が山と云った。
春になると山が一面萌え、桃色に染まる。
一斉に桜が咲き乱れるその景色はまさしく絶景で、遠くからも人が訪ねてくるほどであった。
そんな霞が山には伝説があった。
『木を切ると祟られる』
霞が山には魔物が住んでいて、霞が山の木を切るとその魔物に祟られるとの噂だった。
魔物は山を守る主で、滅多なことでは姿を見せない。
よって、姿かたちを知る者はいなかった。
桜ノ宮家はその魔物を、さくらと呼んでいた。
“さくら”を守る番人
それが桜ノ宮家だった。