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結論8:この街の行く末は、腐敗でした。

 なんだかんだで詰め所に連行されました。


 僕はそんなに暇じゃないのですよ? 帰って昼寝して、だらだら過ごして、睡眠をとらなければならんのです。


「善良な一般市民を解放しろー」


「何が善良な一般市民だ!? お前のせいで俺まで不審者扱いされて迷惑してんだよ!!」


 個室で、爺さんと二人で楽しく談話。どうやら善良な市民である僕とお戯れたいらしい。仕方がないが、付き合うことにしよう。


「ご愁傷様(笑)」


「そういうところだよ!! 善良な一般市民ならもっとマシな反応するんだよ!!」


「ほぉ。例えば?」


 是非、善良な市民の態度とやらを教えてもらいたいところだ。


「そんなの謝罪とか反省の姿勢に決まっているだろ」


「へぇ」


「……」


「……」


「へぇ、じゃねぇよ!! 終わりかよ!? 今の言葉を聞いて少しは謝罪する気を起こせよ!?」


「あーはいはい。謝ればいいんですね。すいませんでしたー反省しておりますー。これでいいですよね?」


「全く反省してねぇだろうが!! 棒読みの謝罪で誰が許すんだよ!!」


 もう爺さんの思考が読めないっすわぁ。付いていけねぇっす。あと一々大声で耳に響くっす。


「そんな大声出して疲れないの?」


「お前が出させているようなもんだろうが!」


「そんなことより早くお家に返してー。もうこんな爺さんと話をするのはこりごりだー」


「張り倒されてぇのか!? 俺も好きでお前と話している訳じゃねぇんだよ!! 今すぐ解放させてやりてぇよ! 早く楽になりてぇよ!!」


 うんうん。そんなに辛かったんだね。


「分かりました。もう少し付き合いましょう」


「拷問かっ! 苦行でしかねぇよ!! そしてお前は鬼かっ!! 」


「見てわかる通り、角は生えてないんで鬼じゃないっす」


 もっとよく見てから言って欲しいものだ。あ、老眼か。


「冷静に切り返してくんな!? そういう意味じゃねぇ事も分かんねえのかよ!!」


「ぼく、こども。むずかしいこと、わかんない」


「誰か助けてくれ!! もう頭が痛くて死んじゃう!!」


「はっはっは。そんな簡単に人は死にませんよ」


 目を笑わせて高笑いしていると、如何にも騎士という風貌の男が入室してきた。


「おやおや。大きな声が聞こえると思ったらあなたでしたか」


 爺さんの友達かな? いや、年齢差ありすぎるし後輩か。


「おぉ……レグスか。俺はもう無理そうだ。後は頼んだ」


「……あぁ、なるほど。あなたが最近疲れた顔なのは、この方のおかげですか」


 お、僕のおかげですね? 誉められても何も出ませんよ?


「あ、あぁまぁ……そうだな。本当に手がつけられねぇ」


「寄ってたかって誉められても何も出ねぇやい」


「……まぁずっとこんな調子の奴なんだわ」


「それはそれは。そういうことでしたら尽力させて頂きますよ」


「すまねぇな。頼んだわ」


 やつれた顔でそう言い残し、パタンと扉を閉めた。


「……」


「……」


 うーん、気まずい。こういうタイプ苦手なんだよなー。レグスと呼ばれていたこの人とは仲良くなれそうにない。困ったぞ?


「キミの事は……何て呼べばいいかな?」


 うっわぁ、なんかこの人ずっと笑っているよ? 優男っぽいけど怖いですわぁ。ここは卑屈に切り抜けて脱走をかますとしましょう。


「あ、ゴミ野郎でも何でも大丈夫っす、はい」


「え、ゴミ……え?」


「ゴミ野郎っす。よろしくっす」


「えっと、それは流石に呼びにくいかな」


 真面目な人だなぁ。爺さんならこうはいかないだろう。


「じゃあそのままキミで問題ないっす」


「あ、あぁ、分かったよ。それで、何でここに呼ばれたか分かるかな?」


 毅然としたような態度からも、この人は真面目なんだなと伝わってくる。ならば! 多少の脚色を加えても、きっと信じてくれるだろう。


「さっきの爺さんがどうしてもお話がしたいと無理矢理連れられて来ました。ホモだから、きっと僕というか、男に欲情したんだと思います」


「え、彼ってそっちなのかい?」


 彼のきりっとした表情が一変。何故か興奮したような……。この世界はこんな人種しかいないのか。よし、ならば期待に応えよう。


「えぇ、それはもうガッツリと」


「なるほど。ガッツリか」


 我ながらナイスアイディアにほくそ笑む。あ、ヤバい口角が下がらない。


「見境ないからレグスさんも気をつけた方がいいですよ?」


「そ、そうだね、へへっ……ちょっと怖いかな。きょ、距離をとっておくことにするよ」


 興奮の色を隠しきれてないですよレグスさん。せっかくの柔和な顔面が崩壊。これは真性ですわ。


「そ、それで、彼とは何の話を?」


「あーなんか、仕事なんか辞めてこれからは遊びまくるぞー、とかって叫んでましたね」


「それは一大事だね!? すまないが彼の所に行って説得してくるから、今日は帰って構わない。情報提供に感謝するよ」


「あ、待って下さい!」


「む? なんだね、私には彼と仲良く……じゃない、更生させるという大事な使命が──」


 これだけは伝えておかなければ気が済まない。気持ちよくサムズアップして、こう言い放った。


「彼は──彼氏募集中ですっ!」


「団長ぉぉぉぉっ!!」


 奇声を上げて部屋を飛び出していった。うむ、彼こそが奇声マイスターだな。あんな寒気のする奇声は初めて聞いた。


「よし、やっと帰れる。というか爺さん騎士団長だったのか……この街の安全性やいかに」


 不安要素、というか不安しか残らないがホモのレグスさんがなんとかしてくれるだろう。イケメン補正掛かってそうだし。


「あれ? もしかしてイケメン補正じゃなくてホモ補正?」


 独り言が室内に反響する。


 しかし、そうなると話が変わってくるぞ? 騎士団が真性だらけで腐りきってるって事になる……やべぇ面白い展開じゃないですかぁ? 今後の騎士団の動向に目が離せませんな。


 そんな腐った思考を張り巡らせながら、騎士団の詰め所を後にした。

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