結論7:爺さんの渾名は無限です。
「こんなところに居やがったか!」
やることが無くなったので、帰ろうと路地裏を抜けたところに、見覚えのある一人の男が────
「あ……誰だっけ?」
「爺さんだよ!! いや違う俺は騎士団所属──」
「あぁ、思い出した。鶏の唐揚げ君だ」
「誰が鶏の唐揚げ君だ!? 頭の中に若鶏は詰まってねぇよ!!」
「いや、詰まっているのは若鶏じゃなくて死にかけの老鶏だよ」
「俺はまだ二十代だっつってんだろ!!」
爺さんは頭の老化が始まって、思考回路が衰えているようだ。
「おやおや、年金暮らしに飽きて趣味探しに没頭中の爺さんや。いくら見つからないからって、我が物顔で街を闊歩されては困るのぉ」
「そんな年食ってねぇし、別に我が物顔で趣味を探しているんじゃねぇよ!! お前を探してたんだよ!!」
俺探していた……? やっぱり?
「え? 告白?」
「しつこいな……一緒に逃げた奴の事だよ」
「あぁ、鶏の唐揚げちゃんか」
「誰だよ!!」
「鶏の唐揚げ君の嫁、鶏の唐揚げちゃんだよ!! 何で知らないんだよ!!」
「知らねぇよ!? そもそも鶏の唐揚げ君は誰だよ!!」
鶏の唐揚げ君や、嫁の鶏唐揚げちゃんを知らないとは。こいつは人じゃねぇ。
「さて、ここで問題です。鶏の唐揚げ君とは、誰のことでしょーか?」
「俺が聞いてんだろうが!!」
「ぶぶー。時間切れです。正解は、実在しない人物です」
「ふざけんな!? 俺じゃなかったのかよ!! どんだけ時間無駄にしているんだよ!!」
「そんなかりかりすんなって。あ、かりかり……カリカリ? そうか! 君はカリッカリの唐揚げ君だ!!」
「俺は衣はカリッと、中はジューシーな唐揚げ君じゃねぇよ!!」
「いや、それで正解だ!」
「何が正解だよ! お前と話している事全てが不正解だよ!!」
「中はジューシー。これが……全てだ!!」
「少しは話しを聞けよ!!」
「はいはい。で、何の用かね?」
「だから一緒にいた奴はどこに行ったか聞いてんだよ」
「うーん。ちょっと待って考える……そうだ! 僕が食べました」
「考えている時点でおかしいが、考えた末に結論がそれかよ!! 嘘をつくならもっとマシな嘘つけ!?」
「じゃあ欲を張ったカリカリの唐揚げ君が、摘まみ食いして食べちゃいました」
「食ってねぇよ!! 身に覚えがねぇよ!! 嘘がマシになってねぇよ!! 爺さんの次は唐揚げかよ!!」
「おぉ、ツッコミの連撃……ツッコミ百烈拳と名付けよう」
「そんな名前いらねぇよ! それに安易だなおい!」
「じゃあツッコミ…………交響曲」
「思いつかないんならやめとけ!!」
「クソっ、唐揚げ君に一本取られた。完敗だ……」
「何も嬉しくねぇなおい!!」
「ところでこんな所で油売っているじゃないよ!!」
「お前がさっさと居場所話せば、こんな所に居る理由もないんだがな!!」
「なんでやねーん」
「ふっざけんなよ!? お前は何がしたいんだよ!!」
「唐揚げ君と言葉の二重奏を」
「意味が分からねぇし、願い下げだよ!!」
全く、この人は本当にわがままが過ぎるよ?