結論4:俺は犬に成り上がります。
「……カルラ……泊まらせて……あげちゃ……駄目……?」
「お嬢が言うなら構いませんが……何故でしょうか?」
「……飼い……たい……」
おやぁ? 後ろから聞いた事がある声で不吉な事を言っている口があるなぁ?
「……飼うんですか?」
「……飼う……の…………暇……だか……ら?」
ふむ。俺は犬かな? 餌はドッグフードじゃなくて、わんこそばでお願いします。俺はドッグよりわんこがいい。
「ふっふっふ。良かったなぁ? 飼ってもらえるぞ?」
話を盗み聞きしていた爺さんが、挑発的に笑う。顔面崩壊お疲れ様です。まるで唐揚げみたいな顔ですね?
「いいねぇ」
「……」
爺さん無反応。あれ、耳が遠くなったのかな? 遠い目をしているからきっと聞こえなかったのだろう。そうに違いない。
「いいねぇ」
「わざわざ無視したのに懲りずに連呼するなおい!!」
お、元に戻った。この人はいつも怒っているなぁ? 怒り縛りで表情筋を鍛えているのかな?
「いいねぇ」
「そのボケはお気に入りかよ……もう頼むから俺に関わらないでくれよぉ……」
頭を抱えて苦しむような動き。おやおや挙動不審だヨ? そんな状態の爺さんをよそに、背後の彼女らの不穏な会話は結論に至ったようだ。
「……連れて……帰る……ペット……」
「まぁ……よいのでは?」
カチャリ。
……あっれぇおっかしぃなぁ? なんで僕の首にリード付きの首輪が付いているのかな?
「……行く……の……!」
リード片手に御機嫌な様子の御令嬢は、女傭兵の従者と共に明日へ向かって歩き出します。その姿が遠のくにつれて俺の首が────
「ぐへっ……いき…………息が…………洒落に……なら……な…………」
締め上げられて逝きました。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
お嬢さんの屋敷に連行されてから僕は、従順な犬に格上げされていました。
「…………お手……」
「わん」
「…………お座り……」
「わん」
「…………ふふっ……」
誰か突っ込んでくれ!! 何度ボケてもツッコミをいれてくれない!! 何でこの娘は微笑んでいるだけなんだ……あぁ、爺さんよ。今となっては、あなたの突っ込みが恋しい。僕は今、彼のような突っ込み人を所望しているっ!!
「…………ご飯……だよ……?」
彼女から差し出された物は、皿に載った黄土色の固形物。
「はっ!!」
何故だろう……この固形物……食欲を…………そそられる!! 癖のある匂いが香り高く嗅覚を刺激し、食欲を助長させる様はまでで────────……特に思いつかないね。
その前にどうみても形がドッグフードなんだ。完全にドッグフードなんだ。俺の頭がいくら逝っているとしても、ドッグフードは無理なんだ。
「……食べない……の……?」
ふむ、これはあれだな。本気の顔だ。そんな悲しさが溢れ出しているような顔でこっちを見ないでっ! こんなの食べたら人じゃなくなっちゃう!! あ、キャットフードは可ですが。
「……腐っちゃう……よ……?」
いや、ここはあえて腐らせてみるか? この固形物の放つ独特のドッグフード臭と腐敗臭が合わさって、奇跡的に爽やかリフレッシュな感じになるかもしれないっ!!
「いや、ここは腐らせようっ!」
「………………?」
「腐れば爽やかリフレッシュ気分満喫なのだ!! 腐ればわかるさ何事も!!」
「…………おー……」
※後日、腐りかけていたドッグフードはスタッフが美味しく頂きました。