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結論1:不審者扱いで牢屋に入ります。

「どうしてこうなった」


 冷え切った鉄格子を握りしめ、外の様子を窺う。自分の使っている檻以外は人気がなく、とうやら使用しているのは自分だけであった。


「興奮し過ぎて奇声発してたのは事実だけどさ……いくらなんでもこの仕打ちは酷くないですかぁ!?」


 言葉は牢獄内に反響するだけで、何の反応も示さない。それなりに大声で言ったつもりだが、反応がないとすると監視もいないらしい。


 致し方なく能力の確認と洒落込む事とする。


 そこである違和感を覚えた。そう言えば転生される際には、神とやらにチート能力を貰うお約束がある筈なのだが、貰った覚えがない。


 問い合わせ先を知らない為に、取り敢えず思いつく限りの方法を試してみるとする。


「《能力開示(ステータスオープン)ッ》!!」


 …………。


「《能力開示(ステータスオープン)ッ》!!」


 …………。


「《能力開示(ステータスオープン)ッ》!!」


 何も起きない。


「くっそ何も出ねぇのかよ!!」


 怒りそのままに鉄格子を殴りつける。


「その前にお前のボキャブラリー少な過ぎかよっ!!」


 何か出てきたかと思えば、ただの厳つい監視員。外れだ。


「さっきからうるせぇよ!? 人が気持ちよく寝てたのに、同じ言葉を何回叫べば気が済むんだよ!!」


「まだ三回しか言ってません」


「そうでしたねまだ三回でしたね!! 何したいのか知らないが一回でも十分だっただろ!?」


 凄い剣幕で怒鳴られた。それほど睡眠を妨げられた事が不満だったのだろう。朝が弱い同志としてその言葉には全く同意だ。


「監視員が寝てちゃ駄目じゃないですか。ちゃんと働いて下さい」


「そこでその話かよ……話聞いてたのか?」


「僕は無実です。たーすーけーてー」


「話聞く気なしかよ!? 後、その棒読みやめろ!」


「おや、どうやらお疲れのご様子。どうかなされましたかな」


「主にお前の取り扱いについて目下模索中だよ!!」


 叫ぶ毎にやつれていく監視員。檻に入れられている僕には、言葉をかけて励ます事しか出来ません。


「頑張って下さい」


「ふざけんなよ!?」


 何だか仲良くなれた気がする。


「ねぇねぇ」


「なんだまだ用があるのか?」


 非常に面倒くさそうに、如何にも嫌だという顔で振り向く監視員。面倒くさくてごめんなさいね?


「何でも無いです」


「いい加減にしろよ!? 俺に何の恨みがあるんだよ!!」


 面倒くさそうにしていたから止めたのに怒られた。そういうなら言っておこうじゃないの。


「早くここから出たいです出してください」


「もう誰か助けてくれ……心が折れそうだ」


 ふむ。僕のチートは心を壊せるのかな? 何とも素晴らしい能力ではないだろうか。


「監視員の心よ、粉々に砕けるがいい!」


「何でこんな頭のおかしい奴の面倒を見なきゃならねぇんだよ……」


「ありがとうございます」


「一切褒めてもねぇからな?」


 どうやら心を壊す能力ではないらしい。


「ねぇねぇ」


「…………」


「ねぇねぇ」


「…………」


「ねぇねぇ」


「うっせぇんだよ! わざわざ無視してんだから察しろよ!!」


「トマト」


「だから何だってんだよ!! せっかく反応してやったのにトマトって何なんだよ!! そんな下らねぇ事に付き合う為に、俺はここに居るんじゃねぇんだよぉ!!」


 どうやら彼は、いよいよ壊れてしまったらしい。それならば己の善意を以てして、そんな彼を正常に戻すべく、こんな提案をしてみる事とする。


「しりとり、しようか?」


「脈絡が無さ過ぎなんだよ! 少しは考えて物を言え!!」


「しりとりの「と」からね。トマト」


「出たよトマト! またお前かトマト! 何でしりとりの「と」から始めてんだよ!!」


「え? しりとりは普通、「と」から始まるでしょ?」


「「り」だよ! しりとりのルール分かってるんなら、当然「り」からだよ!!」


「あーはいはい。どうでもいいですね。早くここから出して下さいよ」


「もうこいつは、俺の手に負えねぇよ!!」

 

 順応性の足りない監視員の悲痛な叫びが、人気の少ない牢獄に木霊する。

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