議題1:彼は異世界に転生しました。
「よっしゃぁぁぁぁ異世界転生キタァァァァァァ」
とある辺鄙な街で、一人の男の声が鳴り響いた。雑多とした街の中でも異質な雰囲気を纏っている。他の者とは異なる服装、髪色、瞳の色までも。それに加え奇声を発しているのだから、周囲の注意を引かない訳はない。
「異世界転生を願って幾百億年……ついに夢が現実にッ!!」
そんな中だというのに男の叫喚は止まらない。
「さぁどんなチートな能力が待っている!? 圧倒的な異常ステータスか? 唯一無二の最強スキルか? 何にせよ、俺はこの世界の勇者だぁぁぁぁぁぁ!!」
「なによ、あれ。とち狂っているわね」
「あいつ……やべぇ、やべぇよ」
「勇者って言ってなかったか? あんなのが勇者ならこの世も末期だな」
尚も叫ぶ彼は、奇異の目に晒されているこの状態に臆する事も無く。ただ興奮したように声を荒げ、小躍りを続けるばかりだ。
あまりにも長い時間、叫んでいたものだから何時しか、「祟りじゃー祟りじゃー」と頭を抱える老婆や、騎士団が完全武装で集結し始め、彼は包囲される始末。
「ふははは! 俺がこの世界の……って、おい何を────」
「大人しくしろっ!!」
「うっごッ……イタいイタい、ちょっ────」
かくしてこの街の平和は保たれた……もとい、男は騎士団に連行されるのであった。