空
「空ってキレイだよな」
なんとなくそう思った
別に何か意味がある訳じゃなく、ふと空を扇いでなんとなくそう感じたのだ
「いきなり何言ってんだ、翔」
「いや、特に意味がある訳でもないんだけどね。なんとなくだよ、なんとなく」
そう言ってまた空を見上げてみる
そこにはやっぱり空があって、やはりそれはキレイなんだなと感じるのだ
「ふーん?」
俊也もまた空を見上げてよくわからないような返事をした
「そんなに綺麗かこれ?」
「うーん。綺麗って訳じゃないんだけどなんだろうね。空の深み?静けさ?荒々しさ?まあよくわかんないけどそれらを全部一辺にまとめてキレイだなって思う」
そう確かにこの空は綺麗とは言えないと思う
でも、何もないようで何かあるような深い黒や、動かない様で目まぐるしく移り変わる様子や、その他にどう表現すればいいのかわからないような青や赤
そんなよくわからない空はキレイだと思うのだ
「もし、俺が連れてってやるって言ったらどうする?」
「え?」
突然俊也が話しかけてきた
「だから、俺があの空まで飛べるとしてお前を連れてあそこまで飛んでいけるとしたらどうしたいよ?」
突然で突拍子のない提案
そしてその提案はものすごく輝いていて
とても色褪せて見えた
「やめておこうかな。多分あの空は地面から見上げるからキレイなんだと思う」
「そうか、まー空飛ぶなんて夢のまた夢だかんな。俺を乗せて飛んでくれって言われたらどうしようかと思ってた」
「じゃあなんであんなこと言ったよ」
「さあ?しらね」
「なんだそれ」
そうして僕たちはまた空を見上げた