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2枚目 女神様(他称)に会いました。

 私は今、ものすごーーーーく、悩んでいる。と、いうのも怖くて動けないでいるのだ。

 知らない家のなかを彷徨い、何とか台所を見つけて使えそうな材料で簡単な朝食を作った。メニューはオムライスとインスタントのコーンスープそれから野菜を切って添えただけのサラダ。私にしては上手にご飯を卵に包めたと思う。それ以外の部分の文句は受け付けない。簡単でもこれは料理だと私は主張し続けるぞ!

 さて、食べよう。そう思ってから、私は雷に当たったかのようにビビビっとあることに気づいてしまったのだ。


 これ、『二次元』なんだけど――――と。


 この料理を作るまでにドアも触ったし、材料にも水にも触れた。びびりつつも触って朝食を作ったさ。だけど、その『二次元』の物体を自分の体内に入れるとなると、……話は別だ。

 だって怖くない!? なんかよく分からない『二次元』の物体を自分の体の中に入れるんだよ!? どうなるのか、という恐怖しかないでしょ!

 というわけで、私は動けないのである。

 これは『二次元』だけど私自身も『二次元』で。共通の世界のもので。私が生活していた『三次元』と『三次元』のときと状況的には同じでありまして。

 つまり何が言いたいかと言うと、状況が同じだとしても怖いものは怖いんだ! と言うことです!! はいっ!!

 三次元と一緒、三次元と一緒三次元と一緒三次元と一緒。怖くない怖くない怖くない。自己暗示をかけつつ、スプーンにオムライスを掬い、目を閉じて口に運ぶ。

 目を閉じているため正確な距離は分からないが、手を動かしている感覚的にはもうそろそろで口に到着するだろう。

 私なら出来る私なら出来る私なら出来る。私は出来る子!


「うわぁぁぁああああ!! やっぱり出来ないーーーー!! 私は出来ない子ぉぉぉぉおおおお!!」

「おーい、ちゃんと起きてるー? て、あれ? 何してるの?」


 イスから崩れるかのように転げ落ち、床をグーでばしばし殴りながら悲しみに打ちひがれていると、急に女の子が入ってきたようだ。声からして、先ほど電話をかけてきた女の子だろう。電話口でも家にくるって言ってたし。て、現実逃避をしている場合ではない。今までの黒歴史の最上位に筆頭するほど恥ずかしいところを見られたのだ。新しい黒歴史の誕生だ。おめでとう、私。……嬉しくないけど。


「……なんでもない」


 私はいそいそと立ち上がると、イスに座る。恥ずかしい……。

 声の聞こえる方に視線を向けると、かわいらしい制服に身を包んだ『二次元』の女の子がいた。肩口より少し長めに切られた茶色い髪はウェーブが掛かっており、ふんわりとした雰囲気をかもし出している。それに対し、こちらも茶色の目は切れ長で気が強そうに見える。ちぐはぐしているような気がするが、この子なら綺麗に見えるから不思議だ。


「ふーん。あれ? 朝食、自分で作ったの? あんた、料理できたんだ。知らなかったー。今度私にも何か作ってよね。日頃のお礼として」


 私の失態は流してくれるのね! あなたは私にとって女神様に等しい存在です! これから一生ついていきます、女神様!


「了解しましたっ! 女神様!!」

「は? 女神様?」

「いえ、なんでもないです。気にしないでください」

「分かったけど……。何で敬語?」

「すみま――、ごめん。えっと、ノリ?」

「何で疑問系なのよ。ほら、さっさと食べなさいよ。時間がなくなるわよ」

「はーい」


 女神様(他称)の女の子から視線をはずし、私が作った『二次元』の朝食を見る。

 …………。

 ……どうしよう。私、まだ問題解決してなかった。あああああああああっ!!


「ちょっと!? 何急に頭抱え込んでるの!?」

「うわーん、女神様ー。私、今、最大の問題にぶち当たっているんだけど、どうしたらいいですかー!」

「いや、意味が分からないんだって」

「だってだってだってー! 怖いんだもん! 仕方ないじゃないかぁぁあああ!!」

「ああもう! よく分からないけど、さっさとしてよ!」


 そういうと、女神様(他称)の女の子は私からスプーンを奪い取り、先ほど私が取ったが食べられなかったオムライス一口分を掬い取ると私の口の中にぶち込んだ。


「ぐほっ!?」


 スプーンが喉の奥に当たって痛い。口の中に入ってしまったため、涙目になりながらも咀嚼する。あ、割とおいしい。テンションが上がり前を見ると、女神様(他称)の女の子が第二陣を構えていた。

 自分でもこんなに早く動けたんだ、と驚くほど俊敏に、かつ勢いよく首を横に振ると、スプーンを奪い取り掬われていたオムライスを口に含む。女神様(他称)の女の子にスプーンを取られないように、ばんばん次から次へと口に詰め込んでいく私の姿に、女神様(他称)の女の子は目を見開く。


「え、なに? そんな一気に詰め込むほどおいしいの? もう、絶対今度作ってもらうからね! じゃあ、私は洗濯物干してくるから。制服に着替えて、身なりも整えておいてね」


 私が急いで食べだした理由を取り違えた女神様(他称)の女の子は、宣言どおり洗濯機の置いてあった場所に通じるドアを開け出て行った。

 確かにおいしいけど、そんな急いで詰め込むほどではないよ。というよりも、そんなにおいしいなら味わって食べたいからゆっくり食べるかな。ふふっ……はぁ。

 さっきのぶち込みは涙が出るほど痛かったよ。だから、第二陣とか、いらない……。

 私は遠い目になりながら、今度はゆっくりと朝食を食べ始めた。

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