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1枚目 ここは二次元でした。

 ぷるるるるる、ぷるるるるる。心地よいまどろみの中、電話の呼び出し音が遠くから聞こえる。まだここから抜けたくない私は、この電話の相手はお母さんに任せ無視をすることに決め、もう一度眠りの世界へ赴こうとした。しかし、その電話はなかなか取られることはなく、また切られることもなく、私の意識を少しずつ上昇させる。


「うぅー、お母さーん! お母さーん? 電話ー!! いないのー?」


 叫んでみても電話の呼び出し音は消えない。仕方ない、私が取るか。このまま放置していたら近所迷惑だ。そう思い立ち、まだ眠い目をこすりつつ布団の中から這い出る。


「んーっ」


 背伸びをして、光になれていない目がしょぼしょぼしないように、ゆっくりと光に馴染ませるように目を開けた。

 そして、やっと開けた視界に飛び込んできたものは、知らない部屋の『絵』だった。


「は?」


 あれ? 知らない部屋はまだいいとしよう。いや、本当はダメだが。誘拐とかだとしたらまだ現実的だから、まだ気にすることではない、として。まだ知らない部屋の『絵』? 『絵』、だと? picture? 二次元?


「うそっ!?」


 一気に眠かった目が覚めた。周りを見回してみても、すべて『絵』だ。意味が分からない。とりあえず、今まで寝ていたベッドにそっと手を伸ばしかけ、そこでまた気づいてしまった。

 私の体も、『二次元』だった。


「のぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「うそうそうそ! 何で何で何で!? 意味が分からないっ!!」


 興奮状態のまま、私は自分の体をべたべた触ってみたが、実体はある。触った感触はしっかりとある。だが、どこからどう見ても『絵』なのだ。

 近くに姿見を発見し、自分の状態を確認する。

 真っ黒な艶のある髪は腰近くまであり、割と整った顔立ちで、目の色も色素の薄い茶色交じりの黒、ぷっくりとした唇は綺麗なピンク色、のように見える。

 体もすらっとしていて、まぁ、そこそこスタイルはいいと思う。できるなら、もう少し胸が欲しかった。そんな、中の上くらいの少女がそこの姿見に映っていたのだ。『二次元』だけど。

 何なんだろうね。もう、わからないや。でも、元の私の姿よりも綺麗な気がするのは、唯一の救いかな。たぶん。そもそも『絵』だから普通に綺麗だ。私、綺麗!! やったね!

 そんな感じで現実逃避を始めた瞬間、いつの間にか切れて聞こえていなかった電話が再び鳴り始めた。


 あ、もしかして、これって『転生』とか言うものかな。そして、この電話に出ると「やっほぉー。僕、神様だよー。よろぴくっ!」とか言う、うっざそうな自称神様から何か説明を受けるのだろうか。

 とりあえず、ここは電話に出ることが得策な気がする。てか、ぶっちゃけ、電話に出ることしかすることないし。

 私は恐る恐る、音の聞こえるほうに向かった。

 うわぁっ、進む先々全部『二次元』だよ。何これこわっ!!

 なんとか電話を見つけた私は、恐々と受話器を取り、耳に当てる。


「も、もしもし」


 電話の向こうから息を飲む音がする。どもってしまったのがそんなに変だったのだろうか。びくびくしながら相手の動向を待つ。


「おはよう! 今日は早いね! いつもは五回も鳴らしても出ないのに、二回で出るなんてめっずらしいっ!! 今日は雨が降るかも。いや、槍か……? まぁ、と・に・か・くっ! いつものように今からあんたの家に向かうから! 二度寝とかしないでよねっ! あんたを起こすの大変なんだから!! じゃっ、またね!」


 勢いよく女の子の声が聞こえたかと思うと、私が何かを言う暇もなく電話が切れた。プープープー。虚しい電子音が耳に響く。私は受話器を手に、槍が降るかもしれないほど私が起きるのは珍しいことなんだ、とどうでもいいことにツッコミを入れながら、ただ呆然と突っ立っておくことしか出来なかった。


 私を現実に引き戻すかのように、ぐぅーとお腹の音がなる。お腹、空いたな……。漠然としたままふとそう思い、私は活動を始めた。未だに心ここに在らずの状態だが、ふらふらと台所を探す。

 とりあえず、何か食べよう……。



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