入学先は女子校。
ここから物語が始まります(●´□`)ノ
「私がこの二組の担任を務めることになりました、櫻井知世といいます。これから一年間よろしくね、みなさんっ」
と、肩まで伸びた茶色の髪を片方だけ編み込んでいる、美人というより可愛らしい感じが目立つ女性櫻井知世は、俺たち二組の生徒に向かってそう言った。
さっきからニコニコしっぱなしの知世は、おそらく普段からそう笑っているのだろうと初見の俺でも感じられる程、おっとりというかぽわぽわした人だ。
今日はこの杉並高等学校の入学式。先ほど盛大なお出迎えを大きなホールで行ってもらい、そのままそれぞれの教室に移動され現在に至る。
さすがは三大DMD専門学校の一つと言われる杉並だ。入学式一つとっても細部に至るまで手抜き感が一切感じられなかった。デモンストレーションで飛行パフォーマンスを行っていたDもとっても綺麗だった。
D。Dの略称で、現在最も注目を集めている人間の為の機械装甲。今から17年前、奇跡の科学者五月女皐月によって生み出された魔法の金属《無》で構成された、最強の防具。
Dの当初の目的は軍事利用だったが、その見た目のかっこよさ、美しさ、機能性、芸術性、ありとあらゆる観点で人々の目を虜にして行き、現在では軍事利用されてはいるものの、D同士の戦いをスポーツ化した《ドラゴニク・コロシアム》が最も利用されているのが現状だ。
その需要率はたった17年とは思えない程で、現在日本だけでもDを専門とする学校は100近いと言われている。その中でも最も強い学校と呼ばれる三強又は三大と呼ばれている一つが、この杉並なのだ。
そして、この杉並はその三大の中でTOPな人気度を出している。その最大の理由は、ここが海の上にある学園ということで間違いないだろう。
日本国土から三百キロ離れた太平洋に浮かぶ大都市で、その広さは二百平方キロメートルでほぼ東京と同じ大きさなのだ。その広さと海に囲まれている条件から、国土内では規制されているD活動圏外という概念が生じず、自由なDでの活動訓練を行うことができるのだ。
勿論ながら、ここに入学するのはとっても至難なことだ。筆記試験だけではなくDMDテストも行わなければならない。そのため、募集人数が人学年二千人という馬鹿げた数字を出しているにもかかわらず、毎回受かっているのはその十分の一程度の二百人とされている。
「じゃあ、まずは自己紹介から始めましょうかっ。雨宮さん、よろしくお願いますねっ」
「え?あぁ、はい」
などと考えていると、入学初めに必ずやるとされている自己紹介タイムを担任の知世に言い渡された。みなも知っての通り、最初の席順は基本的に名前の順であり『あまみや』が苗字な俺は結構高い確率で一番になりうる。さっき確認して見たところ、残念なことにこのクラスには『あ』から始まる苗字の人は俺以外には存在せず、次に早い人は『う』から始まる薄井さんだったのだ。
座ったまま自己紹介はどうかと思い、とりあえず立ち上がる。立ち上がることで視線は高くなり、部屋全体とクラスメイトを見渡すことができる。それは同時に、自分に対して注目しているかどうかもはっきりわかるわけで、クラスの視線が誰も一寸の狂いもなく俺に向けられているのがはっきりと肌で感じられた。
だが、それだけ注目するのも無理はない。それは、自己紹介だからとか急に立ち上がったからとかが原因ではない。いや、それも少なからず含まれてはいるものの、多数の人間から発せられている不信感な視線の説明はつかない。
俺はその視線に長時間耐えれる程の経験値は積んでいないため、早めに切り上げてしまおうと出来るだけ短い文で説明しようと決心した。
「えーっと、雨宮優斗です。この学園には特別DM推薦枠で入りました。よろしくお願います………」
そう言って話を切り上げ、直ぐに席につく。未だに背中越しに感じられる不信感な女子達視線は俺のお腹をキリキリ鳴らす。
「ありがとごさいます、雨宮さんっ。みなさん、仲良くしてあげてくださいねっ」
担任の知世のフォローも今の俺には無意味とかしている。いや、あれはおそらく天然でやっているのだろうけど………。
はっきり言おう。今このクラスに男という存在は俺だけしかいない。入試の難しい事で有名なDMDの専門学校では、そのとしによって性別の偏りが激しく、たまに極端に男子が少なかったり、又はその逆も良く起きたりするが、男子一人だけというケースは聞いた事がない。いや、そもそもクラスではなく学園内で男子が一人というのはまずあり得ない。
その理由を説明するには、この学園の名前を言えば一発で事足りてしまう。
この学園の名は『杉並学園ー女子部ー』である。
「はぁ………」
未だに消える事ない視線の嵐を背中に感じながら、大きなため息をこぼす。何故、こうなってしまったのだろうか………。






