〈第九話〉 また紅茶のみたいね。
※注意※
今回の話ではとてもグロイ表現があります!
苦手な人がいましたら、今すぐ回れ右するのをおすすめします!!
ガチャっ
「く、くりさん!い、いまぁ、いますか。。。???」
わたしはキッチンの扉から見て左から二番目の棚の扉を開けて、中を見渡した。
だめだあ。やっぱり、いない。まあ、さすがに棚の中には隠れてないよね。。
わたしたちは今、突然姿を消したくりさんを探しているところだ。
93番さんのいうことが正しければ、くりさんは。。。くりさんはもしかして。。
はあはあ。
だめだあ。無理して走りすぎたせいで、息も上がってる。これじゃあ、助けになれないや。。
「ライナ、そっちにはいた!?」
どこからやってきたのか、急に現れたレイさんが聞いてきた。
わたしはそんな問いにただ頭を無気力そうに横に振った。
「そっちはあ。。?」
「ううん。いなかった。」
そっか。。わたしは肩をすくめてキッチンのカウンターを見る。
そこにはみんなが使っていた小さな紅茶用のカップが9個綺麗に並べてあった。
魔法店にやってきたときに、初めてくりさんが紅茶を注いでくれた時の情景が綺麗に浮かぶ。
あの、紅茶。。。世界で一番おいしかったなあ。。
「ねえ、だれかあそこの扉開けたっけ。」
ふと、レイさんが扉に指を指した。その震えた指の先には物置、だれにも使われてないはずの古びた部屋があった。
よく見ると、扉と壁をつないでた苔が何個も切れている。
「クソっ。あかねえぞ。」
あいさんがドアノブをなんどもかちゃかちゃ動かしながら、こちらへ振り向いてきた。
「おかしーね。そこ、来た時にはふつーに開けられたよ。」
ならさんの一言で空気が凍る。
「ま、まさか。まさか本当に。。いや、そんなことないよ!!」
「。。。」
あははっと狂気的に笑い始めるレイさんを横に、かいさんは何かを決心したように扉の前へと足を進めた。
「。。てめえ、なにするきだ?」
あいさんが驚いた目でかいさんを見つめる。わたしも、彼女の意外な行動に驚きを隠せなかった。そんな、注目の的のかいさんの額から汗が一粒落ちるのが見えた。
「。。。開けるぞ。」
そう呟くと、かいさんは軽めの助走を着けて、
ドンっ ドンっ ドンっ
っと扉へ何度も体当たりをした。かいさんの体が扉にぶつかるたびに音が響く。なんどもなんども、まるでずっとそこだけ時間が巻き戻り続けてるみたいに。
「おい!まってろよ!!!」
痛々しい音と声が交わるキッチンで、みんなが物置の先にあるものに釘付けだった。
すると、はっと正気に戻ったようにあいさんがかいさんの大きな背中をもって必死に止めようとした。
「もうやめろよ!!てめえもっ。。。てめえまで傷ついちまうだろうがっ。。!!」
それでも、彼女の声は届かずかいさんはやめずに、なんどもなんども体を打ち続ける。
綺麗に見えるはずの正義感がまるで狂気にも見え始めた時、
ドーン!!!
っと、固まってしまったはずの扉が勢いよく開いた。
腕を抑えながらも突っ走ったかいさんを先頭に、みんな部屋へと足を進める。
「っ。。!!アマリリス、大丈夫か!?!?」
慌ててかいさんが寄ったのは地面に横たわっていた肉の塊だった。
そう。部屋に入って、最初に見えたのがその肉の塊だった。
何度みてもただの肉の塊。ぐしゃぐしゃの肉の塊。
なんども、なんども叩きつけられたみたいな肉の塊。
地面にはリビングに飾ってたおおきな花瓶が落ちている。
きっとだれかがそれでなんども、叩いて殺したんだろう。
とっても生々しい。一度よったことのある家畜場よりも生々しく、吐き気を一気にこみ上げさせる気持ち悪さがある。
「わー。ひどいじょーたいだね。」
ならさんはそういって、手に持っていた白い布を肉の塊へと被せた。
彼女だけが唯一表情を一切変えずに動いていた。汗一つかかずに。
「さよさん、なんで被せるんだ。。?」
「だって、人間は人が死んだらそーするんでしょ?」
ならさんはただまっすぐにかいさんを見つめた。
「わからないだろう!!!まだ、生きてるかもしれないから。。!そうだ脈!脈を測ろう!!」
布を追い払って、かいさんが手を肉の塊の手らしい場所に指を置いた。
。。。あれ、くりさんってこんなに小さかったっけ。
「ほんと、人間ってよくわからないなー。」
「サヨちゃん。。。」
あいさんがなにか言いかける前に、ならさんはそのまんま扉へと回れ右をした。
一歩ずつ、ならさんが歩くと同時になる足音は、まるで心拍音みたいに感じる。
「もう遅いんだよ。キミはいーっつも現実を見ないね。」
部屋から完璧に出る前にならさんは吐き捨てて、光のほうへと向かっていった。
少しの間、沈黙が流れた。
かいさんは肉の塊の一部分を握ったまま手を動かさず、あいさんとレイさんはただその光景を見つめるだけだった。
わたしはなにをすればいいのかわからず、雰囲気に合わせてただ黙っていた。
何分経ったんだろう。少しすると、かいさんが震えた口先を動かして、重苦しい空気を打ち破った。
「少し、ほっといて。。くれないか。少し「二人」でいさせてくれ。」
その言葉を聞いた瞬間に、あいさんは何も言わずにくるりと扉へと向かった。
わたしも慌てて後ろを追ったが、れいさんは反対に地面にかがんで花瓶のそばを漁り始めた。
「ちょっ、早く出ないとだよ。。!っというかなにしてるの?」
「んー?ちょっとね。。」
花瓶の近くにはくりさんのものと思わしき魔女の制服がひどく散乱してる。
レイさんはその中のスカートに目星をつけたようだ。
「てめえら、さっさと出ろよ。殺すぞ。」
「は、はひぃ。。。!」
あいさんに促されて、わたしたちは急いで扉へと足を進めた。
「あれは、本当にお団子さんなの?」
キッチンへと戻った瞬間に、レイさんがぴしゃりといった。
「急になにいってるの。。?ちょっと疲れてるんじゃない。ゆっくり休もうよ。」
「ツンツンもライナも、もう一度よく思い出してみて。おかしくない?」
レイさん、ついに頭がおかしくなっちゃったんだあ。。。
まあ、それもしょうがない。だって、この数日でたくさん人が死んじゃったもん。
きっと、これをきっかけにみんな変わっちゃうんだ。
レイさんも、ならさんも、あいさんも、かいさんも、それにわたしも。
もう戻れないんだ。
。。。やっぱり、魔女に救済なんて最初からなかったんだ。
「ハンカチがなかったんだ。」
「え?」
思ってもなかった言葉が急に頭に響く。
レイさんのほうに顔を向けると、いつものかわいらしい笑顔なんてなく、まっすぐとあいさんを見つめていた。
「。。それがなんだっていうんだよ。」
あいさんは顔をそむけ、レイさんからの視線を避けた。
人魚姫のハンカチは、くりさんが大切に持っていたものだ。確か、贈り物とか。。
「だってくりさんの大事なハンカチがなかったんだよ?」
「きっとなくしたんだよ。あいつはぁ意外と抜けてるとこあったし。」
肩をすくめて、あいさんが扉をゆっくりと閉めた。
くりさんはずっと、あの暗闇でわたしたちが探しに来るのを待っていたんだ。
そう考えると、とても胸が苦しくなる気がする。
「レイはね、あれはお団子さんの死体じゃないと思うんだ。多分、あれはきっと。。」
「。。なんだよ!!それはただの妄想だろ!?勝手に決めつけんじゃねえよ!!」
ばんっとあいさんの手が壁に強く当たる。
「あれは違うものだっていうのか!?!?他の動物の肉か!?ありえねえだろ!!!」
「落ち着いてよ!レイはね、ただ疑問をいっただけで、それで、その。。。」
「言い訳か?鬱陶しいなあ!!!」
あいさんがキッチンに置いてあったコップを掲げて、レイさんに向けて振り下ろそうとした。
でもその手は動かず、あいさんの手は少しだが、震えていた。
「なんで、そんなに可能性を見たくないの?なんで、そんなにお団子さんを「いい人」って決めつけるの?」
「っそ、それは。。だって、うちは。。。」
少し、不思議な時間が流れた。
唇をかみしめて、あいさんは俯く。それを、レイさんはただ見つめる。
「うちはただ。ただ。。」
「もう、誰も疑いたくねえんだよ。。。」
いつも読んでくれてありがとうございます!!
第二章も残すとこあと一話です!ぜひ、楽しみに待っていてください!!




