〈第二話〉 新しい魔女さんたち
「おじゃましまーす。」
意外と大きめな玄関ホールで心のこもってない無機質な声が響いた。
わたし、ライナとレイさん、それにサヨナラの魔女ことならさんは新しくできた寮にやってきたところだ。新しくできたといっても、外はボロボロでところどころ穴が空いている。お化け屋敷って言葉がぴったりな感じ。
「わ〜!意外と中はきれいだね!」
「そーだね。」
そういいながら、レイさんはくるくると玄関ホールの真ん中を周っていた。
いわれてみれば、中は意外と綺麗に片付けられている。上には木製のシャンデリアが飾ってあって、目の前には建て替えたばかりの新しい階段もある。
よかったああ。。てっきり、中もボロボロって思ってたから、ちょっと安心。
「あら、さよさんたちも到着したのね。」
ふと、後ろから聞き慣れた優しくて安心するような声がした。
振り返ると、そこにはやっぱりラベンダーがたれてしまった目の優しそうな贈りの魔女ことくりさんがいた。手には茜色のアタッシュケースを大事そうに持っている。
「ぼくたちも、いま来たとこだよー。」
「わーお団子さんだ!こんちは!」
ならさんがくりさんに答える後ろでレイさんがぴょこぴょこはねていた。
レイさんのほうが背が高いし、飛び跳ねる必要はないと思うけど。。
「げっ。てめえらもいんのかよお。。」
騒ぎを聞いたのか、向かいの部屋からひょこっと出会いの魔女ことあいさんが琥珀色の瞳をギラつかせながら顔を出してきた。
後ろには和解の魔女のかいさんが太陽みたいな赤色の髪をゆらゆらと揺らしながら元気に手をふっている。相変わらずかいさんは元気だなあ。。
「ねね、せっかくだし探検しようよ!!」
「わっ!」
ふと急にレイさんがわたしの背中に飛びついてきた。
び、びっくりしたあ。。。もう急に飛びつかないでくださいよお。。
そんなことを思っているわたしとは裏腹にレイさんは太陽みたいな眩しい瞳をわたしに向けていた。
「いーね。二人で行ってきなよー。」
ならさんもレイさんに加勢するように横から口を出してきた。
一見やさしそうに見えるけど、多分この感じだとならさん適当に言ってる気がする。。。
相手をするのが面倒くさいから適当にあしらってるだけとか。。?
でも、レイさんにそんなことは多分伝わってないと思う。ただ純粋に「賛成された!!」って思ってそう。。
「んじゃ、レッツゴー!!」
「ええ。。」
やっぱりわたしの考えは的中し、レイさんが強引にわたしの手をひっぱりながら階段の方へと足を進めていった。助けを求めるような視線をならさんに送ろうとしても、どうしても視線を逸らされる気がするし。。お家に帰りたいよお。。。
そんなことをおもってると、ふと目の前にあった大きな箱に目が行った。わたしよりも少し大きいぐらいで、木材製のせいかとても寮の雰囲気に合ってる。
あれ、なんだろう。。?誰かの荷物。。?
「ばあ!」
「ひゃgjrbぁじぇいd!?」
わたしが箱に近づくと同時に、箱から女性が急に飛び出してきた。慌てて一歩下がると足が引っかかって大きく頭から転んでしまった。目の前にいたレイさんが意外にもすぐに避けてくれたおかげで、被害はわたし一人で済んだ。済んだけど。。
いったいよおお。。。。うう。。血が出たかもお。。。なんなら骨折れたかも。。
ジンジン痛む額を抑えながら、前を向くとそこには黒髪の女性が箱の中からわたしを指さしてきてゲラゲラと笑っていた。まつ毛と紫色の紫陽花みたいなジト目が特徴的で、ならさんと同じような魔法店の制服を着ている。髪は右下の方に一つに結んでいた。左には特徴的なS字のアホ毛もついてる。
「君たちが噂の魔女見習いでしょ。ぷぷー。最近の子はこんなのに引っかかっちゃうんだあ。」
すごい。今までにないほどの屈辱を味わってる気がする。。
レイさんも笑いをかみ殺すようにどこか遠くを見つめながら、口を抑えてる。
今なら、誰かを本気で殴れるかもしれない。
「39番若い子はいじめちゃだめ。。んだよ。。」
ふと、階段の方からいまにでも寝ちゃいそうな声が39番と呼ばれた女性をなだめるように言った。
「いいじゃん。今はへーわなんだからさ。んと、93番は頭が固いんだから。」
眠そうな瞳をこすりながら階段を下りてきたのは、白髪の39番さんに瓜二つの女性だった。髪を左下に結んでいて、アホ毛は39番さんの反対についてる。特徴的な下まつげと蓮のようなピンク色の瞳がわたしたちに追加で視線を向けてきた。
なんでこの人たちは番号呼びかというと、この人たちがまだ「名のある魔女」じゃないかららしい。これはならさんに教えてもらったんだけど、魔法店だとなるべく本名で呼び合わないようにしているらしい。理由はわからないけど、結構重要みたい。わたしも下の名前まではまだ呼ばれたことがないですし。
「二人とも、久しぶりね。」
「ーんですね。お久です。」
「だなだな。まさか同じ寮とはね。」
流石くりさん!上手に話題を変えてくれた!助かったああ。。!!
心の中でほっと自分の胸を撫でた。なんとなくだけど、39番さんはいたずら好きのトラブルメーカーで、93番さんが眠たがりのマイペースな気がする。
「ライナ大丈夫。。?」
こそっとレイさんがわたしの耳もとに聞いてきた。頑張って笑わないようにしてるみたいだけど、それでも声と体がぴくぴく震えている。
流石に気に食わなかったから、まだ痛い額を抑えながらレイさんに小さくパンチを食らわせた。
これぐらいは許してください。。!
本当ならだめかもしれないけど、わたしのちいさな拳がレイさんの腕にポスっと当たった。
それにレイさんが気が付くと、わざと大げさに腕を抱え込むふりをしてきた。
「も~ライナそんなに強く殴ったら痛いよ~!」
「わーそれは大変だ―。」
「なになにー?仲間割れ~?」
うっ。静かにしゃべってるつもりがいつの間にか39番さんもこちらへと視線を向けていた。
あれ?もしかして、め、目立っちゃってる。。!
慌ててお口をチャックすると、ならさんがこほんっと軽く咳払いしてみんなの注目を集めた。あいさんとかいさんもいる。
「早速だけど、部屋割り発表しよーよ。」
うっ、部屋割りかあ。。
仲良くなれそうな人だといいけど。。
「ここには四部屋しかないから、一つの部屋に大体二、三人になるわね。」
横からくりさんもならさんを助けるように口を出した。
二、三人かあ。。あんまり仲良くない人と二人きりとかはやだなあ。。。せめて、レイさんかならさんならいいけど。。
「二階の左から順に行くよー。
部屋1;ラーちゃん・レイちゃん
部屋2;おーさん・わーさん・ぼく、さよさん
部屋3;93番・43番・あいさん
部屋4;39番・96番 って感じだよ。ちゃんと、覚えといてねー。」
よ、よかったあ。。お部屋はレイさんと一緒だああ。。。あいさんとかじゃなくてよかった。。
わたしはほっと自分の胸をなでおろした。
流石に、あいさんと二人きりだといろいろとヤバいことになると思うし、あいさんじしん怒ってそうだから本当に良かったあ。。
「だれか、質問はあるかしら?」
「はいはい!質問です!96番さんと43番さんってだれですかー!」
そういえば、確かにまだ会ったことのない人だあ。。
わたしも不思議そうにくりさんのほうを見つめた。けど、先に答えたのはくりさんじゃなくて、意外にもあいさんだった。
「あの二人はまだ来てねえよ。遅刻だあ。遅刻。」
そっかあ。。まだあと二人も来るんだあ。。
まだ1日もたってないのにどこか体が重くなった気がする。胃も痛いし。。
ここで生きていけるかなあ。。
読んでくれてありがとうございます!!
次も楽しみに待っていてください!




