〈第九話〉 馬車でのおしゃべり
注意・最後のほうにグロメの表現が出ます
気を付けて お楽しみください!!
カタンカタンカタン
車輪の音が静かな馬車に響いた。時々、馬の鳴き声も聞こえる。窓からは木々と山がくすんだ空に溶けていた。
はあ。。
新しく貰った制服のマントが静かに揺れた。
わたし、ライナはレイさんと一緒に事件現場の孤児院に向かっているところ。本当はならさんも来るはずだったけど、なにか用事があるみたいで先に行くことになった。
「つきましたかああ。。?」
「まだ、出て数分だよ!」
そんなああ。。
実はわたしは馬車が嫌い。だって、めっちゃ酔うから。本当に酔う。
もうやだあああああ。。。。
そんなわたしとは違い、レイさんは窓からの景色をキラキラとした目で眺めていた。
「れ、レイさんは、初めて乗るんですよね?」
「うん!馬車って、かっこいいね!」
レイさんが興奮気味に言った。レイさんも制服を着ているけど、マントは貰えなかった。理由としては、レイさんは魔女じゃないから。それでもそばに置いとくのは、観察のためや革命派の足跡が見つかるかもしれないかららしい。
「あっ。そういえば、ライナちゃんって私のことさん付けだよね。」
「えっと、そうですね。基本的にみんなさん付けですね。」
ふと、レイさんが不思議そうに尋ねてきた。確かに、ならさんたちもみんなさんだ。あんまり、意識したことないんだけどなあ。。癖かな?
「私たちって、友達でしょ?じゃあ、レイって呼んでよ!」
「むむむ無理無理!」
思いもよらぬ言葉にわたしは頭が取れてしまいそうなぐらいを左右に振った。
「お願い!」
「やだ!です。」
「敬語もだめ!」
レイさんが前のめりにお願いしてきた。
やばい。馬車酔いのせいで辛いのに、こんな状況じゃ尚更頭がちゃんと回んないよお。。
そんなことを思ってもレイさんは全然ひかない。
「わかった!わかった!敬語だけ!敬語だけ!」
「だめ!レイ!レイだよ!」
ハードルが高すぎるよおお!!!
前を見ると、レイさんがキラキラした目で私のことを上目づかいで見ていた。
ま、眩しすぎる!!!!直視できないよおお!!わたしみたいな人なら消えちゃう!!しかも、逃げ場がない!!密室殺人だあ!!
どうにか、諦めさせられないかな。。!?うーんと、えっと。。。あ!
「レイちゃん!」
「だめ!」
即答!!
レイさんの覇気に押されながらもわたしは必死に考えた。
だ、だめだったかあ。。でも、せめて呼び捨てだけは。。
「えっとお。。。あ、じゃあ、いーちゃん!」
考え出した末に出たあだ名にレイさんは心底びっくりしたような顔をした。
「なにそれ。。?」
「だって、ならさんとか、くりさんでしょ?そう来たらレイさんのイを取って、いーちゃん。」
変だったのかな。。?
少しレイさんは考えた後にわたしのことをまじまじと見つめてきた。不服なのかなあ。。
「まあ、でもフツウの友達みたいだしいっか。」
ポスっと、レイさんが椅子に腰を掛けなおした。
よかったあ。。満足してくれたんだあ。
「でも、レイって呼ばれないの悲しいなあ。。いっそ、一人称をレイにしよっかなあ。。」
独り言のようにレイさんはぼそぼそと考えていた。
でも、あだ名って昔のわたしじゃ考えたことなかったなあ。。わたしも変わっちゃったのかな。
「うん。そうしよ!レイはこれから自分のことレイって呼ぶね!」
「えっと、勝手にどうぞ。。。?」
呑気なレイさんを横目にわたしは窓に視線を移した。
さっきまで顔を出していたはずの空が、今は淡い緑のせいでほとんど見えない。
呪い、魔女改革、行方不明者。
なんか、嫌な予感がする。
はあ。小さなため息は耳に届く前に車輪の音によってかき消されていった。
(今回は何事もないといいなあ。。)
ヒヒ―ン!!!!
ふと、急に馬車が大きな音を立てながら止まった。外からは、馬の鳴き声が聞こえる。
言ったそばから、なんか嫌な予感がするんだけどお。。
「大丈夫ですかー!?」
すかさず、レイさんが小さなのぞき窓から運転手の様子を伺った。
でも、まず最初に聞こえたのは運転手の怒号だった。
「おい、君!急に道から飛び出るなんて危ないだろう!!!」
慌てて、レイさんと一緒に外に行くと見知らぬ男の子が馬車の前で立ちふさがっていた。どうやら、この男の子が急に道に飛び出してきたみたい。
「ご、ごめんなさい!!でも、わざとじゃなくて。。!!」
「じゃあ、なんで飛び出してきたんだい!?危ないだろう!!」
男の子が運転手を見上げながら必死に弁明していた。それでも、運転手は構わず男の子に向かって叫び続けた。うう。。耳がキーンとする。。
「あ、あの!」
あ、やばい。。
気が付くと、わたしは二人の間を割るように叫んでしまった。
ど、どうしよう。。めっちゃ注目されている。。
「えっと、その、ま、まずは、その子の話を、えっと聞きませんか。。?」
しどろもどろになりながらも、どうにかわたしは言い切った。一生分の勇気を使ったかもしてない。。
ちらりと見ると、男の子はわたしをまじまじと見つめていた。見つめている瞳は本物の翡翠のようでぼーっとしていると吸い込まれてしまいそう。
「レイも賛成かな。まずは、落ち着こうよ。」
レイさんが援護するように運転手に言った。そんなわたしたちの圧に押されてか、運転手は仕方なさそうに黙り込んだ。
ご、ごめんなさい。。運転手さんも大変ですよねええ。。。
心の中で謝りながら、わたしは男の子のほうを見た。瞳以外にとくに変なとこはなかった。ほんとに、ただ普通の人だった。
なんでこんな森の中に普通の男の子がいるんだろう?
ふと、頭によぎった疑問を飛ばすように突風が木々の間を走り抜けていった。
なんか、とても悪いことが起きそうだなあ。。
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「そろそろ、ラーちゃんたち孤児院に着いたかころかなー。」
屋敷の中、一人ポツリと呟いた。
今はあの金髪の女の子、レイちゃんの屋敷にお邪魔している。虐待とかいろいろとヤバそうな屋敷だったけど、思ってたよりもきれいだったね。
「って、それよりも今は仕事しなきゃか―。」
クルっと振り向くと、目の前には何人かの青白い使用人と男の体が無気力に倒れていた。たしか、こーゆーげーじゅつもあるよね。ぼくったら、きれいにするなんてやさしー。それに加えて、壁や床には赤色の模様や絨毯で暗い感じの屋敷を飾ってあげた。匂いはあれだけどげーじゅつてきでしょ?
一歩、二歩、三歩。
真っすぐひたすらに屋敷を歩き回った。
どこを歩いても、すべてが同じようなつくりの屋敷では仕事の量が増えるから嫌いなんだよね。
ガサッ。
ふと、右の扉から物音がした。
まだ、赤色の装飾が付いていない。いったことのない部屋だね。
「みーつけた。」
ドアノブをひねるとすぐに女性と目が合った。このひとで今日の仕事は終わり。さっさと終わらせて帰りたいなー。
そんなことを考えながらぼくは一歩ずつ近づいて行った。ぼくは握っていた長くて丈夫な刃物をもう一度確認してみた。切れ味が悪かったら辛いからね。
「やめて!!なんでも、するから!!!殺さないで!!」
めんどくさいなー。
女性が頭を地面にこすりつけながら必死に頼んできた。髪は乱れ、化粧もほとんど落ちている。人間ってやっぱり醜いね。
「残念だけど、ぼくも王さまの命令でさー。キミたち、どうやら革命側なんでしょー??」
「なんで、それが!?」
女性が慌てて口をふさいだ。これは、クロだなー。まあ、もう分かっていたけど。
レイちゃんの呪いの影響は長期的なものだった。屋敷にこもっていたあの子なら犯人はこの人たちだけだからね。そんなこともわからないんだ。
「な、ないがそんなに可笑しいのよ!?」
いつの間にか上がっていた口角を女性が憎しみと恐怖で見つめてきたよ。
あ、なるべくむひょーじょうでいようとしたのに。きをつけなきゃだね。
ぼくはゆっくりと笑顔を消して、女性の愚民から搾り取って買ったであろう、派手なドレスを目がげて手を振り下ろした。
ぐしゃあ。
その瞬間、床に新しい赤色の絨毯が引かれた。鮮やかな絨毯はどんどん広がっていく。女性の断末魔と一緒に。
これで完璧な舞台準備の完成。
「サヨナラ 裏切者さん」
読んでくれてありがとうございます!!
今週も水曜か木曜に更新できるように頑張りますので 楽しみに待っていてください!!




