貸し借り
次の日、エレンが朝からオレの教室にやってきた。
「おはよう、シュン♡」
「おはよう」
…
「ねぇ、廊下いこ?」
「うん」
エレンに誘導されて廊下でくだらない話をしていたら、エレンが
「早くやってよ」
って言ってきた。
「え?まさかここで?てか、放課後とかにしようよ」
「ヤダ。今ここでしてよ?じゃないと意味がない。しないならわたし…」
エレンがオレの教室に入ろうとするからオレはエレンの腕を掴んで、
「待て…行くなよ」
と言いながら壁ドンして、封鎖した。
するとエレンは、
「え〜、じゃあいかないよ♡」
と、オレを至近距離でみつめた。
「はい、もうおしまいね」
オレはエレンから、パッと離れた。
このままじゃエレンは、キスも迫りかねない。
「えー、もっとしてよー」
「ほら、チャイムなるぞ?教室戻りなって」
エレンは、渋々戻っていった。
ふぅ
ミッションクリア
とりあえず席につくと、リナが
「お湯が沸騰した」
って冷やかしてきた。
「あー、みてたんだ…」
「うん」
…
そうだよな…
そりゃ、みられるよね…
…
そこに、気まずい空気を一気にかき消すようにリナの彼氏がやってきた。
「おはよう、リナ♡チューする?」
「しないから」
朝から元気な彼氏くん…
てか、ここでキスとかされるとさすがに…
でも、オレもさっき…彼女に壁ドンとか、かましてるからな…
人のこといえないんだよね…
てか、リナって…彼氏に塩対応がすぎるんだけど…気のせいかな?
さすがに学校だから?
みんながいるから、照れ隠しってやつなのかな?
二人になると、やっぱり彼氏に猫みたいになるのかな?
…
想像したくねー…
でも、付き合ってるんだから…それなりに…ね。
…
「シュン!」
⁉︎
さっき戻ったはずのエレンがいつのまにかオレの横にいた。
「どうした?」
「あのさ、ジャージ忘れちゃったんだ。シュンの貸してくれない?」
…
「あー、オレ今日持ってないかも」
「え〜…どうしよう。ならリナでいいよ。かーして」
…
エレンがリナにそういうと、リナは…
「ごめん。わたしも持ってないんだ」
って返していた。
エレンが困っていたら、リナの彼氏が
「オレ持ってるよ。貸す?」
と、言ってきた。
「えっ?嬉しい!貸して」
「おう、じゃあオレの教室こい」
「おけ」
と、二人は嵐のように過ぎ去った。
…
あの二人…なんか似てるわ。
てか、リナとエレンが話してるの久しぶりにみたな…。
昔は、もっと仲良かったんだよね…。
でも、たぶん…オレのせいで二人は…
…
「ジャージ…」
「え?」
リナがボソッと呟いた。
「ジャージってさ、彼女が他の男の人の着るとかって…いやじゃないの?」
「あー、オレは平気かもしれないな」
…
「そう…なんだ。」
「うん。あ、逆にリナがイヤだったり?彼氏のジャージを他の女子が着るって」
「あー…、私も平気かも」
「ふーん」
…
なんだか知らないが、変な空気が流れた。
たぶん双方思っていることは、同じっぽい。
じゃあ、なんで付き合ってるの?
ほんとに好きなの?ってさ…
でも、言えない。
好きじゃなきゃ、普通付き合わないもんね?
そしてまた、お互い思っていることは…同じなはず。
倦怠期なのかな?って。
…
言わないけどね。
お互いに。
付き合い方は、それぞれだもんね。
そもそもオレたちは、幼馴染って仲だから、きっと恋人との接し方とは、違うのだろう。
幼馴染同士は、一緒に遊ぶけど…
キスは、しないもんな。
まぁ、ハグは…バグでしてしまいましたが…。
…
あれは…ほんとに反省しなきゃな案件です。
もはや、事件ですからな…
…
ジャージの貸し借りをしたエレンとリナの彼氏は、あの時以来距離が縮んだように思う…のは、オレだけだろうか?
…
「タクトぉ〜」
「エレン〜」
と、呼び合うようになったリナの彼氏とオレの彼女。
…てか、リナの彼氏ってタクトっていうんだ?
今まで、知らんかったわ。
で…
なぜかオレたちは、四人で休み時間過ごすことが多くなった。
リナ彼がリナのところにきて、エレンもオレのところにくるから、そうなるっちゃなるんだよなぁ…。
オレがエレンのクラスにいっときゃ…よかったかも。
正直…リナとエレンが近くにいるのが、オレはイヤだ。
というか…不安だ。
続く。