表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/144

密偵からの報告

 報告書


 <密偵その一>


 ドレスト伯爵の動向調査


 ドレスト伯爵は王都から領地までの道程の整備や、領地の運営。

 その中でも伯爵と言えばカジノと娼館という印象が強い。

 そこで「法に触れている何かある可能性がある為に入念に調査せよ」と指令を受け、調査するもカジノも娼館も疑わしいことは一切なかった。


 カジノは客を騙し金を巻き上げるような詐欺行為はなく、娼館も女性達を丁重に扱っていると聞く。

 カジノの客層は一発逆転を狙う為に一カ月の給料を握りしめる平民、そんな平民を横目に優雅に掛け金を吊り上げる裕福な平民。

 そして、会場内の雰囲気丸ごと楽しむ貴族。貴族と一緒くたにしているが、その中にはスリルを求める者や、大金を夢見る者など様々。

 平民、貴族、王族派、貴族派、など関係なく欲に塗れた人間が集まっていた。


 上の階の娼館はカジノから流れる者もいれば、娼館だけを目当てに訪れる者もいる。

 踊り子のショーも人気だが、やはり貴族にはない妖艶さを振りまく娼婦は別格。

 彼女達は伯爵の指示のもと厳重に保護されているらしい。

 娼館で働く女性なら何をしても許されると勘違いする男から守る為の伯爵の優しさだと語り娼婦達は感謝し、その噂を聞きつけ他領地で特定の場所を持たずに娼婦をしていた女性が伯爵の元に集まり次第に伯爵の店は拡大していった。

 どんな理由があったかは詮索しないが、娼婦をせざるを得ない人間の最後の逃げ場が伯爵の娼館なのだ。


 どんなに調査しても、伯爵に後ろめたいところはなく店も法令に則っており不正な部分は見当たらず。

 唯一調べきれなかったのは、特別客を専門とする従業員の女性に辿り着けなかったこと。

 従業員については調査継続中。


 ドレスト伯爵は、月に一度エーバンキール国に留学中の嫡男の様子を確認しに隣国迄行くほど心配症らしい。

 隣国へ向かう時には大量の品を準備し届け、帰りにはエーバンキール産の茶葉や特産品などを大量購入している。

 国境の検閲も入念に行われ、任命されている王族派のアセッドイン侯爵も侯爵自らドレスト伯爵の荷馬車を確認する程注視しているようだ。嫡男のウィリアルは優秀なようで隣国でも頭角を現している。


 そこで気になるのは、エーバンキール国の第二王子であるレオルド王子と親睦を深めているという点。

 王族と親交を深めるのは貴族として間違った振る舞いではないが、レオルド王子は側室の子であり立場も危ういとされている。

 そんな相手と親交を深めているのをドレスト伯爵は承知しているのか、それとも令息の独断なのか良からぬことを企んでいるのではないか、今後慎重に調査すべき案件と判断。


 ドレスト伯爵、不審な点あり調査継続に値する。


 <密偵その二>


 学園に雇われている者全員の身辺調査


 最も慎重に調査せよと依頼を受けたのが、食堂関係者。料理人・食材を調達する者・食堂内の安全管理の者。

 ほとんどが平民であるので調査は家族構成に、家族の周辺、弱みに繋がるような材料など徹底的に調査するも怪しい人物は浮上せず。

 食堂関係者が問題なしと判断し範囲を広げ、学園に関係している者全ての調査。教職員は勿論、掃除係や教材などの搬入業者、学園に一歩でも踏み入れたことのある人物を調査。


 浮上した犯罪は、教職員の一部の生徒への試験問題流出と教材などの搬入業者の水増し請求だった。

 即刻上司に報告し、処罰が決定。

 長期休暇中の為、生徒に動揺が走ることもなく終焉。


 学園の調査終了。


 <密偵その三>


 エーバンキール国の動き


 エーバンキール国とは長年良好な関係と言える。我が国と比べエーバンキールは領地は三倍、軍事力も財源も桁違い。

 戦争となればひとたまりもない。我が国は多少の理不尽を感じる協定でも頷いてしまった過去を持つ。

 それほどエーバンキールとの戦争は避けている。

 今回密偵を送るというのは余程の事と判断している。


 今、エーバンキールでは王妃の子である第一王子派が勢力を弱めている。

 なんでも第一王子派の貴族に婚約解消が相次ぎ、側室の子である第二王子派が経済を盛り立てているらしい。

 第一王子派の婚約解消については何が原因なのか詳細は公開せず、速やかに慰謝料で済ませている。

 第二王子派の経済効果はカジノと娼館を運営に力を入れている貴族が現れたことが要因だと言える。


 調査を進めると、その貴族とドレスト令息が親交を深めていたことが判明。

 もしかすると、ドレスト令息がカジノと娼館の運営の仕方を伯爵から学びそれを伝授している可能性がある。

 令息同士の情報交換なのかもしれないが、第一王子派と第二王子派が過熱している今、令息の助言は危険な物となる。


 エーバンキール国が我が国に戦争を仕掛けているかどうかは不明だが、第一王子派と第二王子派が白熱しているのでドレスト令息の出方次第で戦争に進展する可能性あり。


 エーバンキール国、内情について今後も調査必要と判断。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ