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アビゲイル

 ここまで協力してくれた令嬢を疑うのは心苦しいが、信じる為にもアンジェリーナ嬢の婚約解消までを調査させた。


 アンジェリーナ嬢の婚約解消についてはすぐに調べる事が出来た。

 報告者の内容は、アンジェリーナ嬢が以前話した通り。


 あの令嬢は、令嬢とは言い難い振る舞いで婚約者のいる男性数名と親密となり手作り菓子を振る舞い、パーティーでは贈られた宝石やドレスを身に着けていた。

 令嬢達から忠告を受けるも行動を改めることはせず、貴族令嬢から敬遠されていたがいつしか受け入れられ卒業パーティーでの非常識な「婚約破棄宣言」さえ異議を唱える者はおらず、アンジェリーナ嬢一人が窮地に立たされる異常な光景。


 そこに至るまでアンジェリーナ嬢自身もあの令嬢に対して貴族令嬢として逸脱することなく忠告をするも、婚約者である王子があの令嬢を庇いアンジェリーナ嬢を諫める。その光景が切っ掛けとなり、学園全体がアンジェリーナ嬢ではなくあちらの令嬢を支持する動きに変わった。 そして卒業パーティーで婚約破棄宣言だったが、あの令嬢が陰で行ってきた行動をアンジェリーナ嬢が公表したことで事実が明るみになる。

 婚約者のいる男性達に言い寄り正当化するあの令嬢の行動と、婚約者がいながら別の令嬢と不適切な関係となっていた三人に対して無条件で信頼していた生徒達も漸く目を覚ましたと言える。


 その事実を受け王族が下した判決は、彼ら全員の「追放」だった。複数の高位貴族の男性に言い寄ったあの令嬢は当然ながら「国外追放」、婚約者のいるにも拘らず別の令嬢と懇意にしていた令息達は一時的に噂が落ち着くまで王都から離れるよう指示し実質の「王都追放」をさせ、そして婚約者があの令嬢と懇意にするのを諫めていたアンジェリーナ嬢も、王都にいるといつまでたっても王子の愚行が貴族の記憶から忘れ去られないので「王都追放」を直々に宣言され、記録として残したのだろう。


 令嬢に唆された三人は「輝かしい未来から追放された」とが書かれていた。と言っても、パトリック王子だけは頃合いを見計らって王都に戻すと見て取れる内容だ。


 あの令嬢は過去の失敗を踏まえ、我が国では同じ轍は踏まないように細心の注意を払っているようにみえる。

 より巧妙に王族に近付き周囲の信頼を得て何かを企んでいるようにも見える。

 シュタイン国での最大の失敗は、王子との関係を見せつける為にアンジェリーナ嬢に情事の予告の手紙を送った事だ。

 それ程王子の婚約者であるアンジェリーナ嬢を追い詰めたかったのだろうが、それは愚策と言える。


 報告書を読みアンジェリーナ嬢の行動は確かに正当化されるものではないが、学園中が敵となり一人で真実を抱え戦っていたとすると分からなくもない。

 だが、罰は必要と考える。それでも彼らの「追放」は厳正な処罰とはいえないだろう。

 親の欲目からくる偏った判決といえる。


「王族が決めた事、他国の人間が口出すことではない。それより、ここが気になるな……」


 報告書には王子がアンジェリーナ嬢との婚約解消に至った決定的な事件について書かれていた。

 いくらアンジェリーナ嬢が様々な方法で追い詰められたからと言って「階段から突き落とす」というのが信じられなかった。それに、階段から落ちたにも拘らず運よく「無傷」というの不自然だ。

 不意に突き飛ばされたのであれば多少の怪我を負ってしまうもの。それなのにあの令嬢は無傷……


「ん?」

 

 あの令嬢に対して不審感が募ると、ある一文が目に留まる。


「手作り菓子?」


 もしかして、この菓子にもあれが混入していたのでは?

 冷静になれば、王子やその側近がよく知りもしない令嬢の手作りを口にするのはおかしい。そしてその後の彼らの行動。高位貴族であれば婚約がどれほどの重みなのか理解しているもの。簡単に婚約破棄なんて選べるものではない。さらに言うなら、卒業パーティーに婚約破棄宣言をするのは愚行とも言える。王子だけでなく、側近が止めないのもおかしい。


「もしかしたら、彼らもまたアヘンの被害者?」

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