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アビゲイル

 病気療養としていた貴族に再度確認する。

 今回は家族の言葉だけでなく、患者本人にも直接話を聞く予定。


「申し訳ございません」


 もう一度彼らに「病気療養」について確認し、少しでいいので「直接本人の病状を確認させてほしい」と訴えると突然の家族の謝罪に、アンジェリーナ嬢の予感が当たっていたことを知る。


「今度は正確に話せ」


 何があっても王族に嘘を吐くことは貴族としてあってはならない。

 前回正直に話していれば時間を無駄にすることは無かった。

 威圧的な態度を取ることで相手の情報を得られるとは思っていないが、感情を抑えることができなくなっていた。


「あの日……慌てた様子で使用人が、娘の姿が無いのを報告に来ました。

 突然の事で何が何だか分からず、使用人に兆候は無かったのかを聞き取りしつつ、行先の手掛かりがないか娘の部屋を入念に調べたところ……ある物を発見したのです……」


「……ある物とは? 」


「アヘンです」


 予想通りの答えだ。


「それは今どこに? 」


「既に物は処分いたしました。所持しているだけで罪に問われますので……」


 我が国の法律を知っている者であれば、証拠をいつまでも保管しているのは危険と判断し処分してしまうのも理解できる。


「それで、その後はどう対応した?」


「娘が薬物の常習者ではないかと疑念を抱きながら捜索しましたが、数か月たっても手掛かりさえ掴めなかったので捜索は打ち切り、娘の事は「留学」という事にしました」


「……分かった。今回の件は国王に報告してから処分を決定する。それまでの間は屋敷での謹慎を命ずる」


「……畏まりました」


「それと聞きたいが、アヘンはそのままだったか? それとも何かに混入されていたのか?」


「紙に包まれた粉状のものでした」


 茶葉ではなく粉状……茶葉であれば気が付かぬうちに摂取した可能性が高いが、粉状であれば自らの意思で摂取しなければならない。

 常習性が高いだろう……


「粉状……分かった」


 その後も他の貴族を回ったが、どの貴族も似たような証言をした。朝に失踪を確認し、部屋内を確認すると粉状の物を発見しアヘンと発覚。

 貴族がアヘンに手を染めたとなれば罪に問われ家門にも傷が付く。

 それを恐れ、どの貴族も「留学」「病気療養」「駆け落ち」とした。

 そう、駆け落ちと話した貴族も結局は「アヘン」だと知られるよりかは駆け落ちとして行方が分からないと公表した方が傷が浅いと考えての事だった。


 彼らの話から我が国では数年前からアヘンが学生に蔓延していたことが決定づけられた。

 ドレスト伯爵による、養女を使っての「婚約者の座狙い」の線は薄くなったが、念のため調査は続行させている。隣国が黒幕と考えるより、伯爵が犯人であってほしいと望んでいる部分がどこかにあった。

 

 ドレスト伯爵はカジノや娼館などを経営しており、貴族……特に夫人や令嬢に仕事柄ひどく倦厭されている。だが、男性からは信頼されどちらかは断定しないでおくが、伯爵の「店」にお世話になっている者が多数存在している。それもあり、夫人達はドレスト伯爵を毛嫌いしている。その男性の中には「店」のお世話になっていなくても金銭面でお世話になっている者もいると聞く。

 ドレスト伯爵の理解者・支持者は王族が把握しているよりも多数存在しているのかもしれない。


 私が学園に入学する際、ドレスト伯爵には養女の話があったようだが実際にそんな令嬢は入学せず、ただの噂で終わった。そして最終学年となった今、伯爵は養女を迎えた。

 今年の入学には婚約者のいない第四王子のワイアットがいるので、王族との繋がりが欲しいのであれば婚約者のいる私より、ワイアットの方が障害なく三年という時間もあるので可能性が高くなる。

 なのに、わざわざ最終学年への途中編入……本当に、令嬢の優秀さを見込んで養女にし学園に入れただけなのか……令嬢にあのような過去を知らずに養女にしてしまったという事も考えられなくもないが、伯爵程有能な人物が過去も知らない人間を果たしで養女にするのだろうか? 


 今の令嬢とアンジェリーナ嬢の話す令嬢がどうしても一致せず、申し訳ないが過去の令嬢を知る為にもアンジェリーナ嬢の婚約解消を調べることにした。


 アンジェリーナ嬢の資料が届く間、王族も失踪した貴族達の捜索に着手した。

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