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パーティーは行かなきゃダメですか?

 何故かわからないまま公爵家のパーティーに参加することになった。

 あのお茶会を仕切っていた夫人の同行者として、パーティーに参加することになってしまいアンドリューはフォーゲル伯爵とルースティンの連名で呼ばれている。

 

「アンドリューは分かるのよ。だけど、私は……どうして?」


 アンドリューは既に三年近く滞在し、貧困改革でフォーゲル伯爵の右腕として働いていたので名前は知れ渡っているのだろう。

 あの時訪問していた夫人達もアンドリューを娘の婚約者候補にという視線を向けていた。

 それに対して私に注目していたのはあの夫人だけ。

 つい最近、王子との婚約を解消され王都追放となりきっと周囲からは逃げるように隣国にやって来たと思われてるに違いない。

 そんな『傷物令嬢』『名ばかりの公爵令嬢』と噂されるような対象をだ、パーティに誘うというのはなにか裏があるようで疑ってしまう。


「婚約解消された令嬢をパーティーの同行者になんて、あの夫人は一体何を企んでいるのだろうか? 」


 もしかして私をパーティーで笑いものにするつもりなのだろうか? 

 そんなことをすれば外交問題に発展する可能性もある。

 喩え王族との婚約を解消された女でも、公爵令嬢である事には変わりない。

 なので、そんな愚かな事をするとは考えられない。

 しかも夫人が主催するパーティではない。


「夫人が何を考えているのか想像がつかなすぎて怖い」


 しかも聞いたところによると今回私が参加を求められているパーティーの主催者は公爵家。

 ただの公爵家ではなく、第二王子が婿入りしたところ。

 この国で王族の次にお偉いさんのパーティーだといっても過言ではない。

 誰もが行きたいであろうパーティーだからと言って、呼ばれてもいないのに隣国の公爵令嬢が無理矢理参加しては問題でしかないだろう……

 いや、この得体の知れない夫人が許可を取ったのだろうが、決して私が『行きたい』と駄々をこねたわけではない。

 むしろ『行きたい』って、私言いましたっけ?

 

「怖い」


 どうして私が参加を求められているのか分からなすぎる。

 パーティーまで後二日……

 

「どうにかして断れない? 」


 毎日考えあぐねいていた。そして思い浮かんだお断りのセリフがこちらだ。


「二日ではドレスは間に合いませんし、宝石等有りません。全てを用意するのに今からでは間に合いませんわね~」


 遠回しにお断りの言葉を口にする。


「では、妻のはどうだい?」


 気を効かせたフォーゲル伯爵が夫人のをと勧めてくれた。


「そんな……」


「それが良いわね。では王都に戻ったら……」


 私は何とかお断りの言葉を~と考えている間に王都までの日程が組まれていく。 


「あぁ……風景が変わっていく……」


 王都にある伯爵邸に向かっている。


「妻は、今回のパーティーは欠席する。なので、ドレスも宝石も遠慮する事は無いよ」


 伯爵夫人は出産したばかりと言うことで体調面を考慮し今回のパーティーは欠席するとのこと。

 その為ドレスも宝石も使い放題だと。

 半ば強制的にパーティーに参加することが決まっていた。


「それは……ありがとうございます」


 伯爵はきっと善意で勧めてくれたのだろう。

 社交パーティーなんて初めての私には恐ろしすぎて、笑顔に力が入る。

 公爵令嬢に転生して目覚めた時には断罪中。

 その後牢屋に入り屋敷に戻れば引きこもりをしていた私が隣国のパーティーに急遽参加だなんてハードルが高すぎるのではありませんか?

 誰にも会わず引きこもりでのんびり金持ちを満喫したかったのに、お金持ちは屋敷に滞在することで味わっているけど全然のんびりしてません。


「到着しました。ここが王都にある、我が家です」


 現実逃避するも馬車は順調に目的地に向かい、滞りなくサーチベール国の王都に到着しまう。

 領地の屋敷より一回り大きい、伯爵邸。

 今日はパーティーで着るドレスを決め試着が済めば休むだけだが、数日後にはパーティーの為朝から身支度をするそう。

 正直な感想を言っていいだろうか? 


「行きたくないなぁ」


 伯爵の領地から王都までは数日。

 かなり近く、馬であれば休憩なく急げば一日の距離だそうだ。

 その間の宿も貴族御用達が多く、移動としては比較的楽。

 なので、夫人達もフォーゲル伯爵の領地まで訪問に来ることに反対は無かったのだろう。

 夫人達が認識しているのか、目を背けているのかは分からないが、整備がされているのはドレスト伯爵のカジノにいく最短距離にファーゲル伯爵の領地があるからに過ぎない。

 道路や宿が整備されているのはドレスト伯爵の手腕によるもの。


「ドレスト伯爵っていい人なのね。道路整備に多額のお金を出すなんて……」


 そのおかげもあり、今回は快適ともいえる馬車移動ではあった。


「あら、お待ちしておりましたわ」


 屋敷に到着すると直ぐ様夫人が挨拶に訪れる。

 出産したばかりと聞くので、そんなに慌てなくていいのだが家族って似るのかと思うほど夫人も笑顔が素敵で癒される人だった。


「これからお世話になります。アンジェリーナ・カストレータと申します」


「まぁご丁寧に。私は……」


 このまま穏やかに過ぎ去りたいのに、きっと無理なんだろうな……


「挨拶も終ったら、こっちよ」


「はい」


「これからは女同士で楽しむわよ」


「……え」


 夫人は着せかえ人形が出来る人形を手に入れ、意気揚々と部屋に案内され既にドレスが何着も用意されていた。

 現代人の私には何処をどう見て判断すればいいのかわからず、大人しく夫人の着せかえ人形になるしかない。

 夫人は使用人と共に『あぁでもない』『こうでもない』と真剣に私の為に選んでくれているので、私も文句を言わずに着替え続ける。

 ドレス一着試着するのにこんなにも体力を使うとは知らず、用意されたドレスを全部試着するのかと理解すると笑顔も次第に引き攣っていく。


「あの……これ全部……」


 試着するんですか? と聞きたかったが、真剣な眼差しを向けられ受け入れるしかなかった。

 映画などでドレスを綺麗に見せる為に、コルセットを限界まで絞める場面があるが実際は想像以上にキツイ。

 『皆さん呼吸しないの? 』と言った役者の台詞を思い出す。

 当日またこの苦しみを体験しなければならないのかと思うと憂鬱でしかない。


「これも、あれも似合うから困っちゃうわねぇ。あっちも良さそう。次はあれとこれを試しましょう」


 伯爵夫人が楽しそうにする姿を見て『楽しそうだなぁ』と自分の苦しみを切り離して現実逃避。

 されるがまま抵抗は諦めた。


「よしっ、当日はこれにしましょう」


 ドレスが決まった頃には、既に夕食の時間になっていた。

 あれから何時間たっていたのだろうかなんて考えたくない。

 コルセットを脱いだのだが、まだ着用している感覚が残り夕食も満足に食べられなかった。


 その後はフォ-ゲル伯爵のもう一人の家族である、産まれたばかりの赤ちゃんにご挨拶に向かう。

 私が伯爵家に到着した時はお昼寝の時間だったので会うことが叶わず、夕食を済ませた今がチャンスだそうだ。


「私が断罪中に産まれた、可愛い女の子」


 なんの穢れもない純粋で清らかな者。

 赤ちゃんの小さな手に触れようとするも、偶然なのか払い除けられてしまった。

 私の穢れを払ってくれたのだろうか……

 それとも、悪役令嬢なんかに触れたくないと本能で察知した?


「ん?」


 よく見ると赤ちゃんは一緒に来た、アンドリューをじっと見ている。

 赤ちゃんでありながら既に女。良い男に夢中になるのは仕方がない。

 私が頷いていると、アンドリューに手を伸ばし始める。

 冗談ではなく本当にアンドリューが気になるようだった。

 アンドリューがどんな反応するのか興味があり事態を見守る。

 基本表情を変えないアンドリューが、少し驚いたような顔をし伸ばされた手に触れる。


「お兄様は、以前会った事があるの?」


「……いや……初めて……」


 すると赤ちゃんの方もちっちゃい手でアンドリューの手を握り笑る。

 二人の邪魔をしないように、ずっと見ていた。

 なんだか二人は以前から互いを知っていたのではないかと不思議な感覚に襲われた。


「そろそろお休みの時間です」


 赤ちゃんが眠る時間と言うことで部屋を出ようとするも、アンドリューが離れた瞬間赤ちゃんが泣き出す。

 もしかして、この赤ちゃんは言葉が分かる?

 前世の記憶があったりして? 

 私のように……なんてね。


「私はもう行きますが……」


「俺は、もう少しここにいる」


「そうですか、では先に戻ります」


 私は部屋を直ぐに後にしたが、アンドリューは赤ちゃんが寝付くまで側にいるらしい。

 アンドリューからの提案に驚くも、赤ちゃんがアンドリューに本当に懐いていたので私は先に部屋を出た。

 私は伯爵が用意してくれた客間で月を眺める。


「パーティーでは何事もなく無事に過ごせますように」


 巻き込まれてしまう運命らしいので、今後平穏無事に過ごせるよう祈った。

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