本編に戻ります
朝食を済ませた後、馬車に乗りアンドリューがお世話になっている領地へ向かうために宿を出発。
シュタイン国から最も近いサーチベール国の領地は、辺境の割にかなり栄えている印象。
町に到着した時には陽も暮れていたため周囲の状況が読めなかったが、人々は穏やかで平民特有の日々の生活の不安や恐れ、貴族に対する偏見も無さそうという印象を受ける。
「貧困層も他の場所とは雰囲気が違うのね」
国境付近では盗賊が居てもよさそうなものなのに、そんな心配も必要ない程。
状況を見る限り、国外追放となったマーベルも安全にサーチベール国に到着した事だろう。
そんな判断を下してしまうのは、平和ボケしていてまだ見えていない何かがあるのかもしれない。
「それとも辺境とはこんなものなのだろうか?」
残念なことにカストレータ家の領地とは違う。
貧困具合は変わらないのかもしれないが、町の雰囲気は違う。
この光景を目の当たりにしたからアンドリューはサーチベール国に学びに来たのかもしれない。
カストレータ家の領地は農業産業に重きをおき、サーチベール国は娯楽施設を中心に繁栄しているよう。
今回宿泊した向かいには、巨大遊戯施設カジノが有る。
カジノというものに行ったことがないので、こんなに大きいものなのかと見上げてしまう。
『一度娯楽施設というものを経験してみたい』
アンドリューにお強請りしてみたものの、アンジェリーナの教育に悪いと考えたのかお許しは得られなかった。
外見だけでなく、あの施設がどんなものなのか実際に見てみたかったのに……
「カジノって何があるんだろう……」
カードゲームにルーレット、サイコロ、スロット……は無いか。
アンドリューによると、一階のカジノには平民や観光客が利用し、二階は貴族専用の個室に三階が宿泊施設。
主に裕福な平民や限られた貴族しか利用できないのだと。
「もしかして……映画やドラマのように地下があって奴隷同士に殺し合させて、どちらが生き残るかを賭ける競技場が有ったりするのかな? 」
この世界のカジノという場所に期待し体験してみたかったのだが、アンドリューによりカジノへは一歩も足を踏み入れることは出来ず。
私達は観光も碌にせず、次の領地へ向かうことに。
馬車から見える景色だけでカジノの内部を想像し堪能するしかなく、諦め悪く馬車の窓からいつまでも覗いていた。




