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三人目の攻略対象者とヒロインの関係

「トラウデン・シャガール様とマーベル様の初めての口づけの場所は鍛練場……でしたよね? 」


 彼に直球で伝えてしまったのは、焦らすのがめんどくさくなってきたから。

 それに自分の番が恐ろしく、普段マーベル以外には表情を崩さないトラウデンが険しい表情になっている。

 この緊張に耐えられないという感情がひしひしと伝わって来ていた。

 だけど前置きなく口づけ現場を告げたことで、意外にもトラウデンの許容範囲を超えてしまったよう。


「いっ……い加減にして、ぅ嘘ばっかり言わないでっ。皆さん、こんな悪役令嬢のアンジェリーナの言うことなんて信じないで。パトリック、早くこの女を国外追放してっ。イーリアスもこの女の悪事を暴露してよ、トラウデンっ早くこの女をここから連れ出して」


 王子もイーリアスも暴露内容が事実なのかを互いを確認する。

 その姿で私の言葉が事実であるのを受け入れたように見える。

 

「お二人の出逢いは確か……王子との逢い引き場に向かう途中のマーベル様がご令嬢方に「婚約者のいる殿方と親しくし過ぎなのではありませんか? 」と、ご指摘をされているところを庇いだてしたのが切っ掛けでしたよね? 」


 ゲームではそうだった。

 婚約者のいる殿方と親しくするのは誤解を生む行為だと令嬢達から忠告を受けていたヒロインは……


「そんなのおかしいです。学園は平等であり婚約者がいるいない関係なく、全ての人に対して誠実な行動をするべきです」


 などと言い返していた。

 詳細を知らなければ、多くの令嬢から責め立てられている女の子を助けた騎士様なのだが……

 今までの話を聞いた上でトラウデンがした行動は、己の愚かさを露呈したに過ぎない。

 令嬢達の忠告はもっともな事。

 取り囲まれ涙を見せるマーベルの姿を観て状況を確認もせず判断し、彼女の都合の良いように語った言葉だけを鵜呑みにしていたことになる。


「漸く皆さん過去に自身がマーベルに対して抱いていた感情を思い出したかしら? 」


 会場内の誰もがこの男の見当違いの行動に不信の目を抱き始める。

 マーベルとの出会いは、トラウデンの勘違いから始まっていたのを理解しているのだろうか? 

 面倒だからと先に口づけ場所の話をした所為か、その後の私の言葉や辺りの状況を理解できずにいるように見える。

 

「これで王宮騎士が務まるのかしら? 」


 護衛などは敵が分かりやすく剣で相手を打ち負かせばいいが、事件の調査も騎士の仕事だと聞く。

 被害者を装う人間の言葉だけを鵜呑みにして判断されたり、相手が亡くなっていた場合真実に辿りつけないのではないかと心配になる。

 今回のような突発的対応に弱いことも何かと不安が残り、私なら大切な事件は彼に担当してほしくない。


「話を戻しますが、私に届いた手紙によりますと『どんなことがあっても、俺はマーベルを命に代えても護る』と宣言していたとありました。実際はどうなのですか? 王子の側近であり婚約者のいるトラウデン様は騎士の忠誠をマーベル様に誓ったのでしょうか? 」


 噴水付近にあるガゼボを背景にトラウデンは令嬢からの様々な仕打ちにより涙するマーベルに騎士の誓いを交わす。

 ガゼボで夕陽を背景にヒロインに宣誓するあのシーンがトラウデンルートの見所。

 あのシーンを観たら六割成功と言われ、バッドエンドになることはないと断言されていた。

 現に、私もその後おかしな選択肢を選んでも多少好感度は下がるがバッドエンドにはならなかった。

 プレイヤーの間ではトラウデンルートは一番簡単なルートと言われ、寧ろバッドエンドの方が難しいと言われる攻略対象。

 ゲームに不慣れな初心者の為の攻略者、それが目の前にいる彼。


「お……俺は……」


 百九十センチを越える体格に精悍な顔つきで威圧感があるはずの男は、目に見えて動揺し狼狽え後退り額には冷や汗も見える。

 王子の側近であり第二騎士団長の息子が、王子でも自身の婚約者でもない平民から貴族になったばかりの男爵令嬢に騎士の忠誠を誓うなんて脳内花畑と囁かれても反論は出来ない。

 そもそもこの男は既に、反論する気力は残ってないようにみえる。


「トラウデン様? 」


 いくら待っても無言のまま時が流れるのでに次行こうと思う。

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